第17話 嫉妬と再会

~釣畑美羽 side~


1人で帰り道を歩く。

私は結局、あの後大塚くんに

本当のことを聞くことが出来なかった。


新田さんが大塚くんに告白したというのは

勝手な私の予想であって、真実は分からない。

でも、もし、告白していたら…と思うと

気になって仕方ない。


その事が頭の中でぐるぐるして

他のことを考えられなかった。


電車に乗って、駅に着く。

あとはバスに乗って帰るだけ…。

早く帰って、ベッドに行きたい…。


そう思った時、見覚えのある後ろ姿があった。

制服が違うので、違う高校であることが分かった。

誰だろう…

その人がこちらを向く。

私は言葉を失った。


「あ…美羽…?」


私の名前を呼んだ彼は、

昔より少し大人っぽく見えた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


~大塚蒼太 side~


よかった…。

みんな信じてくれたようだ。

しかし、1人、納得いってない顔をしていた。


釣畑に1番、バレて欲しくないんだけど…。

そう言えば百花は、釣畑のプリントを真似して

書いたと言っていた。


そのあとはどうしたんだろう…。

百花のことだから、

捨てたということは無いと思う。

本人に返すというのが普通だ。

…ということは百花と釣畑は会っている。


少なからず、釣畑は今回の俺の件と百花が

関係していると考えているだろう。

…そう考えると、さっきの納得いってない顔を

していたのと、つじつまが合う。


多分、釣畑は百花のやった事だと、分かっている。

…明日、本人に聞いてみよう。

もしかしたら、良くない方向に勘違いしているかもしれない。

それが一番、怖かった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


~富田洋介 side~


俺は県立宮瀬高校(みやせこうこう)に通っている。

中学校の時と同じ、テニス部に入っていて、

今日は部活は休み。

だからいつもより早い時間の電車に乗っていた。


駅に降りると、後ろから物を落とす音が聞こえた。

俺はその人の落としたものを拾おうと後ろを向いた。

すると、見たことある制服に身を包んだ女子がいた。

あぁ、桜丘南高校の子か…

そう思って物を拾い、顔を上げると

知っている顔だった。


俺が名前を呼ぶと、彼女は驚いたような、

怖がっているような表情をした。

でもすぐ、ありがとうと表情を緩めた。

そういう所は中学校の時と変わっていない。

でも、高校の制服を着ているからか、

大人っぽく見える。


…さらに可愛くなってないか…?

俺はそんな感情を頭の隅に追いやった。

高校生になって結構、時間が経ったし、

彼女はモテるから、既に彼氏がいるかもしれない。

…俺はいないけど。


彼女は「久しぶりだね、なんか大人っぽく見える」

と、俺が彼女に対して思ったことと同じことを

俺に言った。

「そうかな、美羽こそ、大人っぽくなったよ」

と言うと、照れているのか彼女は赤くなった。

…そういう所も変わってない。

変わったのは周りの環境と俺らの心境だけなのかも

しれないな、と思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る