第15話 放課後の小さな期待と不安。
~大塚蒼太 side~
次の日。
俺はいつもと同じように8時に学校に着いた。
そう言えば今日は課題出さなきゃ
いけなかったよな…。
そう思いながら、教室の扉を開けて
自分の席につく。
教科書をリュックから取り出し、机の中に入れる。
すると、クシャッと紙が潰される音がした。
これは……
ドキドキしながら手を突っ込んでみる。
するとくしゃくしゃになってしまった、ノートの
端切れが出てきた。
表を向けてみる。
すると、文字が書いてあった。
「大塚くんへ
この前の手紙は受け取ってくれたでしょうか。
あれは私の気持ちです。
直接、伝えたいので今日の放課後、掃除が終わったら4組の教室で待っていてください。」
そう書かれていた。
この前とは違う長い文章。
しかし、やっぱり釣畑に似ている丸文字だ。
昨日の教室は誰でも入れるようになっていたから
誰が書いたのか分からない。
しかし、完全に俺宛だということはわかった。
どうしよう。これは行くべきなのか…。
普通に考えたらまぁ、行くべきだろう。
でも、今回は誰が書いたのかわからない。
だから少し怖い。
誰かのいたずらで、男子が来るのかもしれないし、
本気で女子が来るかもしれない。
少し悩んだあと、俺は決めた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
放課後、俺は4組の教室にいた。
誰か分からないが、待つことにしてみたのだ。
いたずらだったら笑って終わりだが、
本気だった場合、相手に失礼だ。
あと、誰がこれを書いたのかということが
気になっていた。
俺は暇つぶしのため、課題をやっていた。
…緊張を忘れるためでもあるけど。
これのせいで俺は今日、1日の授業に集中
出来なかった。
少しの物音や、足音でも敏感になってびっくり
してしまう。
ずっと心臓がどくどくとはやく動いている。
トントントントン…
また、足音が近づいてくる。
しかし、いつもとは違って確実に
こっちに近づいてる。
来たのか…?
そう思うとまた心臓がうるさくなる。
しかし、俺は平然を装って課題をする。
でもその手はすごく震えている。
ガラッ。
教室の後ろの扉が開いた。
俺は後ろを見た。
そこには男子でもなく、4組でもなく、
知らない人がいるわけでもなかった。
幼なじみの新田百花(にったももか)だった。
今は違うクラスだが、幼稚園の時からずっと同じ。
ずっと一緒にいたから俺には分からないが
結構モテるらしい。
俺はよく一緒にいるからほかの男に
羨ましがられたり、告白されているのをみていた。
でも…なんで…?
「百花…?なんでここに?」
「蒼太…私ね、前から好きだった」
「…え?」
「でも蒼太は気づいてくれなかった。
幼なじみの私のことなんて眼中に入ってなかったよね。」
「待って…これ、百花が書いたのか…?」
「そうだよ。私が書いた。」
「ほんとに?この字、百花の字じゃないよな?」
「そうだよ。私が書いたけど私の字じゃない。
蒼太は気づいてなかったかもしれないけど、私は
蒼太のこと見てたんだよ。
見ててわかった、蒼太は今、後ろの席の釣畑美羽
が好きなんだろうなって。
だから私は4組の友達に頼んで、釣畑美羽の字が
書いてあるものを頼んだ。
そして私は釣畑美羽の字が書いてあるプリントを
手に入れて、その字を真似して、ノートをちぎった
紙に『好きです。』とだけ書いて蒼太の机の中に
入れた。
今日のその紙も釣畑美羽の字を真似して書いた。
そうすれば蒼太は来てくれるかと思った。
幼なじみの私じゃ、きっと本気にしてくれないから。」
俺は何も言えなかった。
確かに、俺は字だけだと釣畑にしか思えなかった。
確実に釣畑であるとは思わなかったけど、
ここに来てくれるのはもしかしたら
釣畑ではないかというほんの少しの期待もあった。
百花とは思ってもいなかった。
「蒼太、私は本気で好きだから。
釣畑美羽が蒼太のことをどう思っているか
分からない。
でも、私はずっと蒼太と一緒にいて、ずっと蒼太のことを好きだった。
蒼太のことを1番分かってるのは私…。
だから…付き合って欲しい…。」
緊張した面持ちで俺を見る百花。
不安、恐怖、期待…色々な感情が百花の中で
動いているんだろう。
俺は…
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