第13話 悲しいすぎる結末。

~釣畑美羽 side~


ひっそりと誰なのかを突き止めようと心に決めて、私はすぐに考え始めた。


まず、本当に女子なのかということ。

私のような丸文字なんてたくさんいる。

しかし、その中にも人によって色々な特徴がある。


しかし、かなり、私の字に似ていた。

まず、このクラスに私の字に似てる人を探す。

私はある程度、同じクラスの人の字を見ているが、私と似ている文字を書く人なんて見たことない。


という事は2つの可能性がある。

ひとつは、本当はこのクラスの人ではないこと。

ふたつめは、誰かが私の字に似せて、この手紙を書いたこと。


ひとつめであれば、このクラス以外の人。

ふたつめであれば、このクラス以外の人でも、このクラスの人でも出来る。


次に考えたのは、本気かどうかということ。

いたずらであれば、こんなにクラス全体に広まっているので、他のクラスにまで広まったらいけないと、すぐネタばらしするだろう。

他のクラスの人がいたずらしたとすれば、

休み時間、毎回このクラスに来て、笑うだろうし、

このクラスの人だとしても、手紙を送る計画をしたグループが笑ってみているだろう。


結果、私はこの手紙は本気で好きで

送ったものだと考えた。


問題は誰なのか…。

もう少し、手がかりがないと分からない。

第1に、どうやって大塚くんの机の中に入れたのか。

それが謎だった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


5限目。


誰もが大塚くんの手紙の謎の話に興味深々ななか、

LHRだった。

文化祭に何をするか、誰が何をするのか、などなど

文化祭に関することを、5限目6限目を使って決めるらしい。

司会は室長である大塚くんと、副室長の中山柚月ちゃん。


まずは文化祭で何をするかを決める。

候補は3つ。

脱出ゲーム、迷路、お化け屋敷。

多数決をすると、お化け屋敷に決まった。


担当を決めていく。

前半、後半で20人ずつ別れる。

その中で13人が幽霊役。

7人が受付や、小道具を扱う。


私は前半チームで幽霊役となった。

前からすこしやってみたかったので嬉しい。

大塚くんも前半チームで幽霊役。


そして、ただのお化け屋敷とは違い、

私のお化け屋敷は実際にあった事件をコンセプト

にして作ることになった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


その話は私たちが産まれる前。

約25年前の話。


高校二年生の男子生徒がいた。

その男子生徒はみんなから人気があり、先生の信用もあった。

さらに成績優秀、スポーツ万能という、絵に書いたような生徒だった。


しかしある日、彼は変わってしまったのだ。


彼が学校から帰ると、なぜか血の匂いがする。

不思議に思い、彼はリビングに向かう。


すると、彼の父親が母親を大きな刃物で刺しているところだった。

彼はそれを見てしまった。


父親は息子に気づかなかった。


彼は静かに家を出た。

涙さえ出なかった。


翌日、彼は大きいニュースとなっていた。

彼は自分の父親を殺してしまったのだ。


彼は家を出た後、ある決意をした。


彼はまた家に戻り、酒に酔いつぶれている

父親を後ろから刺した。


彼はそのあと母親宛に手紙を書いた。

今までの感謝や謝罪などを書いた。

その中には父親を自分が殺してしまったことも

書いてあった。


彼は父親を殺してしまったあと、

公園にいた。

食べるものもほとんどない、お風呂にも入れないので、髪の毛はぼさぼさ。

服も血がついたままになっていた。


次の日、彼は2人の警察官を殺してしまった。


その日も彼は公園にいた。

しかし、2人の警察官に見つかってしまった。

彼は父親が使ったであろう大きな刃物を

持っていた。

そして…やってしまった。


男子生徒のニュースはどんどんと大きくなる。

彼はその事を知らない。

でも、なんとなくは分かっていたのだろう。


そのニュースを見て、若者が夜中に、

その男子生徒が出るという場所に行っては

動画を撮るという遊びのようなものになっていた。

彼がどれだけ危険かということを知らずに。


何日か経って夜中に、

大学生位の3人の男性が来た。

彼は彼らを影から見ていた。

彼は、ニヤリと笑う。

大学生達は気づいていない。


次の日、彼がまた、殺人事件を起こしたと

ニュースでやっていた。

被害者は男子大学生3人組。

夜中の2時くらいに、○○公園を歩いていた時、

後ろから刺されたという。


こんなニュースがやっていても

彼を探す若者が後を絶たない。

彼はそれまでで12人を殺してしまっていた。


彼の学校ではほとんどが彼の話をしていた。

しかし、たった一人だけその事に黙っている子が

いた。

その女子生徒は彼のことが好きだった。


その夜、彼女は親にも言わず、

彼がよく出るという公園にいった。

彼女は彼を探した。2時間ちょっとが経った。

彼女はようやく彼を見つけた。

彼女はもう、こんなことをやめて欲しいと頼んだ。

彼は断った。

彼女は何度も何度も説得しようとした。

しかし彼は何度も何度も断った。


彼女はこう言った

「どうして?あなたは変わってしまった。

あの日から。もうやめてほしい。

私の大好きなあなたに戻ってほしい。

そうしなきゃ、私は学校の屋上から飛び降りる。」


彼はこう言った

「本当に僕のことを好きでいてくれるのなら

僕は一緒に自殺するよ。

君の大好きな僕に戻れるかは分からないけれど。

でも僕は君のことを気になっていたんだ。」


そして彼らは学校の屋上にいった。


また、大きなニュースが流れた。

あの殺人事件の男子生徒と同じクラスの女子生徒が

一緒に飛び降り自殺をしたという内容だった。


彼らは飛び降りる前にある置き手紙を学校の

屋上に置いていった。


[僕達の魂は一生、この学校をさまよっている。]


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


そんな悲しい事件が昔あった。

その学校というのはもう取り壊されている。

ほんとに彼らの魂がさまよっているかは

もう分からない。


でもその学校というのは、私たちの学校が改名される前の話。

私たちの学校は今は県立桜丘南高等学校だが、

事件の時は、私立桜ヶ丘倫聖院学園

(しりつさくらがおかりんせいいんがくえん)

という名前だった。

今の校舎は3年前に建て替えられたもので、

旧校舎は近くにあったがもう無くなっている。


11人が男子生徒に殺されてしまった人の幽霊役。

大塚くんは男子生徒の幽霊役。

そして私が女子生徒の幽霊役。


どんな構造にするかと言うと、

最初、この事件を音声だけで再現したものを

来場者に聞かせる。

聴き終わったところでようやくお化け屋敷の中に

入る。

そこから殺されてしまった11人の霊が来場者を

怖がらせる。

止まったかと思いきや、最強の怖さで男子生徒が

驚かせる。

そして、女子生徒も登場し、怖がらせる。


最後に男子生徒が来場者に

「お前、夜中に歩く時には気をつけろよ。

……俺が後ろから刺すかもしれないからな…。」

という決めゼリフを言って終わり。


まぁ、なかなか怖いと思う。

しかもこれは実際あったことで、自分たちの高校。

校舎は建て替えられているが場所はすぐ近く。

役をする私達も怖い。

でも、殺人事件ということがなければ普通に

男女の恋の物語だった。

ただ悲しいすぎる結末だった。

それを演じるのは責任重大。

私は頑張ろうと気合いを入れた。

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