25 イージスの弱点はこれだ!

「入れた……こんなあっさり……」


 触れれるほど近くにいるイージスを目の前に、エイタはまだそれを信じることができなかった。今KKCがいるのはイージスから5mほどの距離、もちろん障壁の内部にあたる。


「ははっ、今日の動画のタイトルは『速報! イージスの障壁内に入ってみた!』に決まりね……!」


 そういうメグルは自らのクリエイター魂と生物としての本能に板挟みになり、ただただ乾いた笑い声をあげるだけだ。今のところクリエイター魂がほんの少し勝っている、3㎜ほど。


 KKCはどうやって障壁を突破したのか? それではそれを順に追って解説しよう。


 まず昨日イージスを見た結論、イージスの障壁を直接破るのは無理、これは変わらない。障壁はイージスを中心にきれいな球体を描いている、このことから障壁には風船の頭の様な弱点は期待できない。


 そこでカケルが疑問に思った、障壁の中はどうなっているのか? 外から見る限りでは、特に変わらず地球の物理法則が働いているように見える。だがそこでの先見は危険だ。もしかしたら障壁の中は目に見えない水みたいなもので満たされているかもしれない。それがガスかもしれないし、実は超低温なのかもしれない。とにかく相手はアウトバースなのだ。そこに突破口があるかもしれない。


 そこでカケル達は三手に分かれて障壁内をひたすら観察、カツコにも頼んで定点カメラの映像を見せてもらったりもした。そしてその結論は『障壁内は生物が生存できる環境』というものに終わった。根拠は障壁内に取り残された鳩が飛んでいたから。結局、内側は壁で囲われただけだったのだ。


 だがさらに分かったことがある、障壁内にさらに障壁を展開するのは不可能ということ。やはりこれも根拠は飛んでいた鳩、彼は障壁内を特に弾かれる事無く飛んでいたのだ。そしてそれは障壁内での攻撃は有効ということを証明していた。


 ならば後は何とかして障壁内に入ってしまえばいい。まあそれができれば苦労しないのだが……だがカケルには一つ考えがあった。


「東京が穴だらけでよかったですね……」


 カケルの考え、それは地下の空洞を通って障壁に入ることだった。


 東京の地下道、それはRPGのラストダンジョンに匹敵する迷宮。東京独自の建築基準法も相まって、ビル街には日々迷宮が増築されている。そしてイージスがいるのは再開発中のビル街、つまりその近くのビルは地下でつながっていことになる。カケルはそこに目を付けた。さすがのイージスも地下までは障壁を展開できまい。KKCは運休になっている地下鉄の線路を歩き、イージスの障壁内にあるビルに上がってきたのだ。


「ねえ、ここで僕が変身すれば倒せるんじゃない?」


「止めといたほうがいいぞ、もし倒せなかったら今度こそ積むかもしれねえ」


 今回の状況はかなり幸運だったと言える。もしイージスがちょっと離れた地下道のない住宅街に現れたと思うと恐ろしい。


「とりあえずカツコさんに連絡しなきゃ。電波通じるかなあ……?」


「たぶん通じますよ。可視光線も一様電波ですし」


 カケルの言う通り、電話はあっさりと繋がった。一通り状況を説明するとカツコは一言……


「よくやった!!」


 爆音の賛辞にメグルの耳が砕け散る。


「カツコさん、イージスの弱点は地下からの攻撃です! イージスはアウトバース、つまり普段は宇宙空間で過ごしている。地に足ついての戦闘は想定してない!」


「あとは地面爆弾を仕掛けて爆破。これを繰り返していけば奴は倒せる!」


「……それが一番よさそうですね先輩、すぐに本部へ連絡します。みんな、危ないからすぐに帰るのよ!」


 その後、すぐに撃退作戦が発表される。主役はやはり地下に仕掛けた爆弾、そしてそこに誘導するための飛行部隊だ。作戦実行は爆弾の設置、また住民の避難にかかる時間を考慮し2日後の12時となった。

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