24 イージスの弱点を探れ!
倒壊したビル、砕け果てた道路。そのがれきの山の中でコンパスで円を描いたように、イージスを中心とした半径53.7m、その内側だけは整然とした街並みが傷一つなく残っていた。イージスに踏み潰された地面を除いて。
「うわでっかい……」
メグルとしても生きた怪獣をこれだけ近くで見るのは初めてだった。KKCは現在、イージスの障壁の周りにたどり着いたところである。今回はカツコが話をちゃんと通していてくれていたらしく、スムーズに規制線の中に入ることができた。ここまで歩いた道のりは全然スムーズではなかったが。
近くで見るイージスを見た感想は、悪趣味! の一言である。いや、誰かの趣味で作られたものではないが、もしこれがどこかのマッドアーティストが作った作品なら間違いなく世界中から総バッシングを受けるだろう。
「タイトルは『孤独』でしょうか!」
一部の変態は、きっとこれを眺めて喜ぶんだろなぁ。横で地面に這いつくばってカメラをを構えるカケルを見て、姉は悲しくなっていた。
「カケルお兄ちゃん、何してるの?」
「覚えておきなさいエイタ君。怪獣は広角レンズにしてアオリで撮るとめっちゃ映えるんです。間に人工物があるとなおよし!」
そんなことエイタに分かるはずもなく、ただ不思議そうな顔をするだけだ。
「障壁超怪獣イージスか、とりあえず……よっ――!」
瞬間、メグル達は衝撃で吹っ飛ばされた。イージスの障壁が突如展開されたのだ。
「なにしてるの父さん!?」
原因はタイガが投げた小石だった。
「いやいや、ここまで来たらやらなきゃ帰れんだろコレ」
「あいつが起きたらどうするのよ!?」
「エイタがいるから大丈夫だろ」
それがどうしたと笑い飛ばすタイガを見てメグルは頭が痛くなる。よく私これまで生きてきたな……、改めて自分の危うさを痛感した。
「これはもう防ぐというより弾くですね。父さんもう一回お願いします」
「え? ちょ――」
「おう! 任せろ!」
瞬間凄まじい音が鳴り響き、メグルはもう一度吹っ飛ばされる。
「もう! 耳がキンキンするんだけど!」
「その音に関係ありそうですよこれ。はい、リプレイです」
カケルの構えたカメラは、ばっちりと小石が弾かれる瞬間を連写していた。
「ほら見て下さい。小石がぶつかった瞬間、粉々に砕け散っているでしょう? おそらく障壁自体が振動していて、物体を弾き出しているんです」
要はプラモデルを作るときとかに使う超振動カッター、それと同じ原理だとカケルは言う。
「理屈は分かったけど、それをどう突破すればいいの?」
「うーんどうでしょう? エイタ君、どう思う?」
「たぶん無理だと思う。全力で叩いてもびくともしなかったし……」
「よし、じゃあ障壁が弱そうなところを探してみるか!」
困ったときはいつも足と頭で解決してきたKKCだった。
一時間後――
「だめだぁぁぁぁ!」
足と頭でも解決できないことがある、それがKKCの結論だった。
「うーん、たぶん一定以上……といっても空気とか埃とか、それ以上の大きさの物は全部弾いてしまううんでしょうね」
一周ぐるっと回って出た結論はそれぐらいだった。イージスは一定以上の大きさのものが近づいた時、そこに障壁を展開してはじき出す。原理は空母などで使われているミサイル迎撃システム『CIWS』によく似ているとタイガは言う。
「ダメだぁ、もう毒ガスしか方法が思い浮かばない……」
「市街地でそんなもん使える訳ないだろ……」
「そもそもアウトバースですから、呼吸してるかどうかも怪しい……」
手詰まりだった。イージスの障壁は文字通り完璧、最強の盾だ。どうしようもない脱力感がメグル達を襲う。
「Kフォースの超兵器でも無理?」
「無理無理、ギンギラでも無理だったんだぜ。なあエイタ?」
そのギンギラ本人はずっとイージスを見つめ、何かを考えていた。
「どうしたエイタ? なんか策があんのか?」
「いや、どうにかして中に入れないかなぁって」
結局変わらない答えにタイガは深々とため息を吐く。
「いやいや、さっき言ったろ? その障壁は――」
「それでも! どうにかして入れたら、寝てる間にドーン! ってできるのに……」
その言葉にカケルの眉が動いた。
「寝てる間に、ドーン……」
地面に力なく寝転がっていたカケルがだらりと起き上がり、何やらスマホをいじり始める。
「ドーン……爆弾……不意打ち……寝込みドッキリ……」
「なに~? なんの詠唱~?」
「ちょっと黙ってて下さ~い」
ふと、カケルの手が止まる。
「……いけるかも」
翌日、KKCはイージスの障壁を突破することに成功した。
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