20 真っ白な少年

 あれからメグルは付きっきりで少年を看ていた。いや、見張っていたといったほうが正しいだろうか? カケルは、拾ってきた人が責任を取るのが当然だと言って帰ってきた瞬間ベッドに潜っていった。タイガはいざというときには男手がいるかもと一緒に見張っていたが、三十分としない間に寝落ち。仕方がないのでメグルは睡魔と戦いながら少年を見守っていた。


 そんな感じでしばらく経つ。メグルが三本目の栄養ドリンクを飲み干した時、窓の隙間から覗く朝日が、少年の目を照らす。


「まぶしい……」


 その言葉が今まさに夢に沈もうとしていたメグルの意識を釣り上げた。


「父さん……! 起きた……!」


 だがタイガは動かない。こっちより少年が先に起きてどうするのだ! メグルは少しイラついたのでタイガの肩を思いっきりしばいた。


「うおっ!? なんだ!」


「声が大きい……!」


 メグルがタイガの口を慌てて塞ぐ。慌てて目を落とすと、少年は目を開けこちらをじーと見つめていた。


「おはようございます」


「え? ……えーと、おはようございます」


「……お姉ちゃん達、だれ?」


 メグルは返答に困った。どう言えばいいのか、拾ってきたとは言えないし……そんなメグルはお構いなしに、タイガが口を開く。


「俺たちは君を救護したものだ。病院に連れていかれると困ると思ったからな」


「? えっと、ありがとうございます?」


 少年は疑問符がついたお礼をし、体を起こす。そこで少年は気がついた、自分の体が自由に動かせないことに。鎖が少年を縛っているのだ。


「おっと、動くんじゃねえぞ。上で寝てるやつがうるさくてね、いくつかの質問に――」


 その時、鋭い破壊音が響く。少年がタイガが話終えるのを待たず、素手で鎖を引きちぎったのだ。さすがのタイガもこれは想定外だった。慌ててメグルを背後に隠し、低く構える。来るなら来てみろ! だが少年の答えは気の抜けたものだった。


「あの! 壊しちゃってごめんなさい……」


 メグル達は顔を見合わせた。どうやら敵意はないらしい。その事に安堵し、少年と同じ目線に座った。


「君、ギンギラ……あの巨人なの?」


「僕のこと知ってるんですか?」


「そりゃもう、世間じゃ大ニュースだからな」


 その言葉に少年はホッとしたように息をついた。


「よかった~、教えてくれませんか? 僕のこと。僕が何者なのか」


 その言葉の違和感にメグル達は首をかしげる。そしてそれはすぐに確信にかわった。


「僕、なにも思い出せないんです」

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