19 ギンギラ
この子がギンギラ? メグルの脳内にその思考が駆け回り離れない。ばかな、そんなわけない、そもそもサイズが違いすぎる。いくつもの反論を現実に突き付けていくが、少年の傷の位置がすべてを物語っていた。
「と、とりあえず病院に……!」
少年から流れ出す鮮血にメグルははっとなる。今はそんなことどうでもいいことに気がついたのだ。このままじゃこの少年は間違いなく死ぬ、今は命を最優先にしなければならない。
「そうだな、とりあえず応急処――」
タイガが上着を脱ぎ、少年の傷を巻き付けようとする。だがその時少年の肩から鈍い音が鳴った。
「なんじゃこりゃ……」
信じられない光景だった。少年の傷が凄まじい速度で治っていくのだ。腹の傷は傷口が縫い合わされることもなく自然に塞がり、肩は砕けた骨がまるで溶ける蝋を逆再生したかのように修復されていった。
「連れていくならKフォースのほうがいいんじゃないでしょうか……?」
少年は明らかに人間ではない。ギンギラとは完璧に断定は出来ないが、そういうのはKフォースに任せるべきだとカケルは提案したのだ。だが、メグルの考えは違った。
「……連れて帰ろう」
「はぁ!?」
メグルの考えはこの子を連れて帰ることだった。この子は恐らく人間ではない、だから病院はダメだ。だが、Kフォースもこの子のことを考えるのはならば最善とは言えない、だったらもう家にかくまうしか方法はなかった。少なくともメグルはこんなあどけなさが残る少年を見捨てることはできない。
「何言ってるんですか!? 怪獣ですよ怪獣! 僕らの手に負えるものじゃ――」
「分かった」
必死に言葉を並べてるカケルを尻目に、タイガが少年を抱き抱えた。
「カケル、お前の気持ちはよーくわかる。だがKフォースにこの子が行きゃどうなるかお前なら想像できるだろ? 少なくとも俺は子供を持った身として、小さな子を不幸にすることは出来ない」
その言葉にあーだこーだ言っていたカケルも言葉を失う。それを見てタイガが、お前も子供をもったら分かるよ、と笑った。
「よし! そうと決まればずらかるぞ!」
「おー!」
「もう、知りませんよ!」
その夜少年が目覚めることはなかった。だが、血は止まり、傷も見かけではほとんど治って少年も穏やかな寝息をたてるようになるまで回復した。危機を脱し、そしてまばゆい朝がやって来る――
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