10 超人

 それは巨人としか言いようがなかった。その者は二本の足でしっかりと地面を踏みしめ、五本の指がある手でアモンミムスの尻尾をガッチリとつかみ投げ飛ばした。


「……にあれ? ……なにあれ!?」


「こんな怪獣見たことありません! 恐らくアウトバース、未知の超人です!」


 その巨人は確かにマッシブな男性のシルエットをしている。だが、その風貌は初心者でも一目見て宇宙産と分かる異様なものだった。


 巨人の肉体は、まるで宇宙を切り出したように深く暗い紫色の体に、まるで星々のように輝く点がちりばめられている。


 手足の根本には藍色の炎のようなものが燃えていて、それが手足の先に収束し指や足下を作っていた。胸の中央からもやはり藍色の炎が燃えている。しかしその炎の勢いは手足よりも激しく、まるで銀河系のように深く渦巻いていた。


 その胸と同じくらい激しく燃える頭部には目元と鼻を覆うかのように、鈍く輝く十字のプロテクターのような物がつけられている。メグルは頭にもゆる美しい炎もあいまって、聖火台みたいだと思った。


「メグル、カメラ!」


 メグルはそこまで言われて思い出す、自分の腕にカメラがまだあるのが。ベルトの部分を手にギチギチに巻いていたので、どれだけ振り回されようとも離れなかったのだ。メグルはあわててカメラを構え直した。


「えっと、現在われわれの目の前に巨人が現れました! 詳細不明! 情報がある人は今すぐわれ―――」


 その時、凄まじい咆哮がメグル達を襲う。投げ飛ばされたアモンミムスが起き上がり、怒りの雄叫びを上げたのだ。先程までメグル達に見せていたものとは違う、敵対者に対する明らかな殺意が彼女らの身をすくませた。


 一方巨人はその咆哮に怯むことも昂ることもなくアモンミムスに向き合い、拳を構える。


「ねぇ、これ不味くないですか……?」


「同感だなぁ……」


「え? どういう――」


 瞬間、タイガがメグルを腰に抱き抱え、二人で一目散に巨人から距離を取った。メグルは訳もわからずカメラを構え続ける。そこに映ったのは、一斉に地面を蹴り激突する両者の姿だった――

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