第9話 ロキシィさんと恐怖の
「おっ、アンタもしかして噂の勇者様か?」
考え事をしているときに突然かけられた声に驚きはしたものの、軽快で明るい声にあまり危機感を感じなかったのですぐに返事をすることが出来た。
「はい、そうですけどお兄さんは……?」
「あぁ。悪いな、自己紹介をすっかり忘れてた。
俺はロキシィ、ロキシィ=ガラーベ。一応王国直属騎士団の団長をやってんだ。
よろしくな」
差し出された手を取り握手を交わす。
「もちろんです!
私は吉野_____じゃなくて、アキ=ヨシノです。
よろしくお願いします、ガラーベさん」
そう答えると、ガラーベさんは照れ臭そうな顔をした。
「いいよいいよ、ロキシィって呼んでくれ。
あー。なんだ、その、ファミリーネームで呼ばれるってのも何かむず痒いからよ」
やっべぇこの人めっちゃいい人じゃん……。
お兄ちゃん属性が強すぎて一周回って可愛い。
「……じゃあよろしくお願いします、ロキシィさん」
「応」
にかっと笑ってそう言うロキシィさんを見て私は確信した。
地位もあるでしょ?
王国直属騎士団の団長ってことはお金もあるでしょ?
性格良いでしょ?
顔も結構良いでしょ?
この人、モテる人だわ。
えーやだローランさんといいロキシィさんといい私の周りイケメン多いから見知らぬ女の子に水とかかけられていびられそう。
え? 何?
『ロ』から始まる名前の人はスペックが高いっていう風に出来てるの?
この世界ではそれが摂理なの?
寧ろ王様もいい人だったしこの世界いい人しかいないの?
私……疎外感……。
「……どうした? 物凄く遠い目をしてるぞ?」
「
「神様を恨むって……。
勇者として大丈夫なのか……?」
ごもっとも。
「闇堕ちはしないので大丈夫です」
「ならいい……のか?
まぁそれはともかく、噂通り面白いやつだなぁ」
……噂通り?
「あの……噂って……?」
「あぁ、ヨシノは知らねぇのか。
結構広まってるぜ?」
?
なんだろう。
やっぱり異世界から来た人間だからってことかな。
「異世界から来た勇者様で、
しかもあの堅物イケメンを落とした女だって」
……?
……。
…………!?
………………!?!?
「はあ!?!?!?
なっ、なんでそんなこと広まってるんですか!!」
「それがよぉ、この前ティーセットを持って行こうとしてるローランを見かけた王宮メイドが話してたんだがな?
幸せそうな顔で紅茶を選んでるアイツを見かけて、なんで幸せそうなのかと思いながら『勇者様はご一緒ではないのですか?』って訊いたら、もう花が咲いたような幸せオーラを放出しながら『勇者様は稽古でお疲れですから休んでいただいています。
本日もそれはそれは一所懸命に努力をしていらして……素敵な方です』って周りにいるやつらをノックアウト出来る微笑みで答えてくれたらしい」
「……へー……」
………………ローランさん……。
くそ……、怒れない。
可愛くてイケメン……尊い……。
思わず熱くなった顔を隠すようにしたを向く。
……これじゃあまるで私がローランさんのこと……。
いや! まだ好きになってはいない! ……はず……。
……うん、そう!
ローランさんイケメンだからさ!
照れてるだけだから!!
それにしても、私が迷惑なんじゃなくて私に気を使ってたのかぁ。
……良かった。
そう言えばロキシィさんはどうしてここに?
そう訊こうとしたその時だった。
『カッ!!!』と何かが刺さったような音が聞こえて顔を上げると私の目には驚くべきものが二つ映った。
一つは頬から若干血を流しているロキシィさん。
もう一つは______壁に深々と突き刺さる、
マドラー。
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