第8話 稽古

「剣だけを見るのではなく相手の体全体を見て動いて下さい! 

 相手の動きに追い付けていませんよ!!」

「はい!」


 あの後私は、早速ローランさんとの修行を始めた。


 そりゃあ初めは勇者なんてやる気なかったけど……。

 王様に『頼む』って、言われちゃったからなぁ。


 それにしても、私が教えてもらうのに王様からローランさんに私の教師(師匠?)になってほしいと頼んでもらうのもおかしな話なので私からお願いをして、それでローランさんから快くOKをもらえた時は安心したけど……。


 ローランさん、滅茶苦茶教えるの上手い。

 まさに理想の教師だ。

 大学に欲しかった。


 自分の良くないところとかもすごい分かりやすく教えてくれるし、改善が上手くいかなかったときは的確なアドバイスをくれる。

 筋トレとかの量も、毎日少しずつ増やしてくれるお陰であんまり苦じゃないから結構楽しい。


 剣も毎日着実に使えるようになってきてるし。

 あれ、でももう稽古を始めてから半月経ってるのか。早いなぁ……。


 あ、正面からの一撃。

 なので弾いて、そしたら流れにのって弾いた方から一撃来るからそれをかわしつつ……攻撃!! 


「はぁ……っ、やっと当たった~!」


 って言ってもかすった程度で実践では全く意味の無い一撃だけどね。

 因みにちゃんと木刀使ってるから危なくはない! 


「お見事です。

 では今日はここまでとしましょう」


 当たったらその日の稽古は終了。

 私はこの後の時間がすごく好きだ。


「では、いつも通りお茶会のお時間ですね。

 ティーセットをお持ちしますので少々お待ちを」

「はーい!」



 稽古は中庭でやっていたのでお茶会は近くののテラスですぐに始められる。

 まぁたまに別のところでもやるけど。


 ローランさんがティーセットを持ってきてくれるまでに私がすることは三つある。


 一つ目は、稽古とはいえ危ないので一応着けている防具をとること。

 二つ目は、稽古の後はほぼ確実に汚れているので手洗いうがいをすること。

 三つ目は、テラスにある円形の二人向かい合わせに座るのにちょうど良いような机の所に座って待つこと。


 この三つは私がローランさんに手伝えることを訊いたところ帰ってきた答えである。


 ……手伝いとか、余計なお世話だったかな……。

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