第7話 王様は
「……では勇者殿、座られよ……」
「ヒャイ……」
違うよこの人地球生まれじゃないよ
「
「大丈夫デスゥ……」
楯突いたら死にそう……。
頭をまるで紙屑のようにクシャっと……、だめだ自分で言ってて怖くなってきた。
「ところで、勇者殿の名を訊いてもよいだろうか……」
「惑星地球、
日本国出身、
アキ=ヨシノです!」
しまった、恐怖のあまり某兵団の芋女みたいな自己紹介になってしまった……!!
「ふむ。ではヨシノ殿、旅には勿論モンスターなどの敵との戦いも含まれる。
暫くは自由にここで過ごしていただいて構わない。
必要なら魔法や剣術の講師も手配すると言いたいところだが……、生憎講師よりもそこのローランの方が適役だろう。
ローランは召喚士ではあるものの、剣でも魔法でも国一番だからな……」
……今この人、何て言った?
『剣でも魔法でも国一番』?
十秒ほど固まっていたが、王様の言った言葉を理解してバッと右後ろのローランさんを見る。
……ハイスペックかよぉ……!
勿論、王様の前なので頑張って口にはしなかった。
「……ローラン、少し外してもらえるか」
「はい」
待って!
サイ●人相手に地球人を一人にしないで!!
そんな心の中の叫びも虚しく、バタンとローランさんが出ていった後の扉が閉まった。
……終わった……。さよなら私の命、来世はもうちょっと良い待遇にしてほしいな。あとうっかりあの神様を信仰しないように気を付けたいね。
などと自分の命にお別れを告げていると、王様が話し始めた。
「……もう、二十年前になるだろうか。
私がたまたま倒れている、まだ五歳のローランを拾ったのは……」
!
「ヨシノ殿の国ではどうだったか分からぬが、ローランの髪と目の色はこの世界では魔王の色と言われ忌み嫌われておってな。
恐らく、親に捨てられたのであろう……」
……ローランさん……。
「私は子がいなくてなぁ。
拾ったローランを実の子のように思って育ててきた。
だから勇者殿。
これは一国の王としてではなく、一人の親としての頼みだ」
王様が、王冠を手に持ち私に深く頭を下げた。
「ローランを、よろしく頼む……!」
私は王様のいない国に生まれて王様のいない国で育ってきたけれど、王様が頭を下げるっていうことは大変なことで、周りに人がいたら王様が怒られるくらいのことだっていうのは分かる。
……人は見た目で判断しちゃいけないな。
「勿論です!」
「……ありがとう……!」
いい、王様だなぁ。
「いえいえ。
……って言ってもまぁ、私の方がローランさんに沢山お世話になることになりそうですけどね」
そう言って笑うと、王様も柔らかく笑った。
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