第12話 依頼BOXを作ろう

依頼がなければ活動することさえ出来ないボランティア部は休みが多い…らしい。先生から聞いた話だが。

活動開始2日目の今日、部長である茅秋に呼ばれ、俺達は部室に集まっていた。



「皆、来てくれてありがとう。」


「それはいいが…何か依頼でもあったのか?」


「ううん、違うの。この部活って依頼がないとやる事ないじゃない?」



茅秋以外が揃って頷く。



「そこで!ただ待つんじゃなくて、私達の方から貰いに行けば良いと思ったの!」



と豊かな胸の前でパチンッと手を叩く。



「なるほど…でもどうやって?」


「依頼BOXを作るの!そうすれば紙を入れるだけだから恥ずかしがり屋な人とか、この部室まで来る時間が無い人でも依頼しやすいし!」


「名案だな!拍手!!」


「考えたねぇー!茅秋すごい!」



涼と滝野さんがそう言って必要以上に拍手した。褒められた茅秋は徐々に得意気な顔になっていく…。

こいつらがいると茅秋がダメになりそうだ……


すると俺の横に座っていた夏恋が挙手した。



「それだと四季高関係者しか依頼できなくない?地域の人でも依頼出来るようにした方が良いと思うけど…。」


「それもそうね…じゃあ地域用に依頼受付中のポスターを作るってのはどうかな?」


「良いんじゃないかな。」



「当然だ。」と言わんばかりの真顔で答える夏恋。その顔を見てムッとした顔になる茅秋。

頼む…仲良くしてくれ…!




────────────────────

その後、効率的に進めるため、依頼BOXと依頼用紙の作成をする班に俺と涼と夏恋、地域用のポスターを作成する班に茅秋と滝野さんに分かれた。


班分けに茅秋がブーブーと文句を言っていたが無視した。何故なら夏恋と茅秋を一緒にすると忽ち喧嘩を始めて恐らく一生作業が終わらないし、ほぼ初対面の夏恋と滝野さんを2人っきりにするのは少し可哀想な気がしたからである。



「悠くんと一緒が良かったな……ボソッ…」


「ん?何か言ったか?」


「何でもない!彩ちゃん行こっ!」



茅秋は不満そうに少し怒って部室を出た。



「おい!…何だったんだ?」


「あはは!悠もなかなか鈍感だな!」


「涼、どういうことだ?」


「今の白鳥さん見て気付かなかったのか?」



俺が鈍感?自分では結構鋭い方だと思っていたのだが。茅秋も親友と一緒の方が良いだろ…?



「ま、私にとっては都合の良い班分けね!」



と、涼がいるのを気にもせず夏恋が腕を組んでくる。

恥ずかしいので振りほどきたいが、振りほどいたら可哀想だから出来ない…。

くっ…可愛い生き物はずるい!




────────────────────

……話し合いの結果、BOXは木材で作ることにした。木材は帰りにホームセンターで買うとし、とりあえずはBOXのデザインと依頼用紙の印刷だな。


デザインをしたいと夏恋が自ら名乗り出たので、俺と涼はパソコン室で依頼用紙を作成することになった。


依頼日・依頼者名・依頼内容を書き込む欄を作り、あっという間に完成させる。A5サイズの紙に50枚印刷して部室に戻った。



「戻ったぞー。夏恋、そっちはどうだ?」


「うん。今ちょうど書けたところだよ。」


「どれどれ…お、良い感じだな!流石だ。」


「えへへ…もっと褒めて?」



夏恋は上目遣いでお願いしてきた。控え目に言って超可愛い!


彼女の可愛いに逆らえず、なでなでしようと右手を彼女の頭に伸ばそうとしたところで部室の扉が勢いよく開いた。



「ちょっと!関本さん!抜け駆けは許さないわよ!」


「ちっ…」



なんか時々、夏恋から闇が見える気がする…



「ち、茅秋の方は終わったのか?」


「ほぼほぼ終わったよ。後は数枚コピーしてラミネートするだけ。」


「そうか、早いな。俺達これから木材を買いにホームセンターに行くから今日はここで解散でいいか?」


「え!?私も一緒に行きた…ぐぇっ!」


「だーめ!茅秋はまだ仕事が残ってるでしょ!」



出発しようと荷物をまとめ始めた俺達の方へ一歩踏み出す茅秋を滝野さんが襟首を掴む。



「茅秋のことは任せておいて。それじゃまた明日ね!」


「あ、あぁ…よろしく。またな。」


「あ!そういえば宮原君にはまだ私の連絡先教えてなかったよね?はい、これ。」



そう言ってスマホの画面を見せてくる。

スマホでそこに記された番号とアドレスを写真で撮り、礼を言って2人に別れを告げる。


扉を閉めるときに茅秋がしくしく泣いているのが見えて少し可哀想に思えた…。





────────────────────


ホームセンターに着き、真っ直ぐ木材コーナーに向かう。

俺が手頃な杉の板と釘、のこぎりやすりを選んでる間に、夏恋には塗料を選んで貰った。

そして会計を済ませ、帰ろうとした時に気付いた。



「あれ?涼は?」


「そういえば居ないね。」



スマホを取り出し、涼に電話を掛ける。



『もしもし?』


「おい、涼。今どこにいるんだ?もう帰るぞ。」


『悪い!先帰ってくれ!今、目の前にいるトイプードルちゃんに行かないでって言われてる気がするんだ!』



電話の先から犬や猫の鳴き声が聞こえた。ペットコーナーにいるのだろう。



「分かった。また明日な。」


『ああ!』



涼は短く返事をし、俺が切るよりも早く電話を切った。犬好き過ぎか。



「何処にいたの?」


「なんでもペットコーナーにいるトイプードルが帰してくれないんだと。」


「何それキモ。」



辛辣ー…その言葉は直接言わないであげてね…。



「俺達だけで帰ろうか。もう遅いし、悪いんだけど買った物持ちきれないから俺の家まで持ってくれるか?」


「もちろん喜んで!!」



夏恋が何故か嬉しそうに引き受けてくれた。

普通なら面倒くさがるところだと思うんだが…。


ま、どちらにせよ助かるから別に良いか。



「ありがとな。」


「ううん!…むしろこっちがありがとうと言いたい…ボソッ…」


「何か言ったか?」


「な、何でもないよ!それじゃあ行こっか!」




こうして涼をホームセンターに置いて帰った。

その後、家まで荷物を持ってくれた夏恋がなかなか帰ろうとしなかったのには少々困ったが、無理矢理彼女を家まで送還した。

1日の最後にドッと疲れた……あいつ暫く俺んち出禁…。

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