第2話 馬鹿!
その夜は澪がベッドで寝たのを確認してから俺は畳の上で壁にもたれて寝た。
流石に家族とはいえ同衾はまずいだろ。
おかげで朝起きると身体はバキバキに固まっていた。
入学式前日の今日は特に予定はない。
昼前に澪を見送り、ついでに昨日のコンビニで昼飯を買うことにした。
適当に弁当とお茶を買い、出口に向かうと一枚の貼り紙に目がついた。
『アルバイト募集中!』
そういえばアルバイト先を探さないとな。
アパートの家賃は親に出して貰っているが流石に3年間も生活費全てを負担してもらうのは心が痛い。
せめて食費だけはという十字架を自分に課したからな。
部屋に戻り、コンビニの弁当を食べながらアルバイトの求人サイトで募集している近所の店を探した。
「おっ、結構あるな。」
コンビニ、引っ越し屋、ファーストフード店などたくさんある。
「このファミレス…」
『シフト制・一日二時間~・昇給有り・制服貸与・新高校生歓迎!』
高校生にはかなり優しい店だ。家から10分程度の距離だし、これなら学校帰りでも通えそうだ。
部活はやるつもりないし、一日最低2時間なら勉強にも差し支えないだろう。
ここにするか。
…まさか電話だけで即採用とは思わなかったな。
とりあえず明後日から来てほしいと言われたのでカレンダーに書き込む。
食べ終わった弁当の容器をゴミ箱に捨て、一眠りした。なんせベッドで寝なかったせいで疲れが全く取れていないからな。
昼寝をして、起きると部屋は夕暮れで赤くなっていた。
「ふぁ…そういえば夜飯どうすっかな。」
欠伸をして思い出す。さっきコンビニで昼食と一緒に買ってくるんだった…。
パーカーを羽織って玄関を出ると外はあっという間に暗くなっていた。
コンビニに着くなりドリンクコーナーへ向かうとデジャブった。
昨日ここへ来た時にいた茶髪ワンピースの少女が。今日はオレンジジュースと炭酸飲料を交互に睨んでいる。
「うーん、炭酸は少し苦手なのよね…でもメロンの気分だし…」
ふむ、独り言を言うタイプか。もう少し掛かりそうな雰囲気だな。
俺はお茶しか飲まない主義なので、
「すみません。前失礼します。」
「あっ、ごめんなさい!ってあ…!」
「失礼しましたー。」
あえて絡まずにそそくさと去る。弁当コーナーで最初に目に入ったペペロンチーノを手に取りレジへ。
「ありがとうございましたー!」
帰ろうと外に出て数歩歩いたところで、
「あの!!」
「うわっ!!なに!?」
さっきの少女に突然大きな声で呼び止められて驚きながら振り返る。
「もしかして……宮原悠くん?」
なんで俺の名前知ってんの!!?
「えーと、どこかで会いましたっけ…?」
「うそ……」
俺の一言で彼女の顔が絶望の表情に。
「私だよ。
「ごめん、たぶん人違いです。」
「私のこと忘れちゃったんだ……」
少女が涙目で答える。
「…?忘れたって何を?」
「馬鹿!」
そう言って風のように去って行った。
「何だったんだ…?」
部屋に帰って、すぐに買ってきたものを食べた。
風呂に入り、明日の入学式の荷物などの準備を済まし、ベッドに転がる。
「あの子、何だったんだろ…。俺にあんな可愛い女の子の知り合いいたか?確か茅秋って……」
聞いたことあるような、ないような…。
考えているうちに俺は眠りに落ちていた。
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