消しゴム

勝利だギューちゃん

第1話

心の中に傷がある。

いじめを受けた傷、ぬれぎぬを着せられた傷

計り知れない。


机の上の消しゴムを、撫でてみる。


「お前じゃ、僕の心の傷を消せないよな」


当たり前だが、無生物である消しゴムが答えるわけもなく・・・

「わかってるよ。無理なのは・・・」

最後、消しゴムを撫でる。


「その願い、叶えてあげようか?」

えっ、しゃべった?


「うん、私は消しゴムの精。レヒサ」

「小さいね」

「消しゴムだもん」

「でも、どうして人間の格好?」

「精霊だもん」

「あっそ」

意外とかわいいな・・・


「私に、いかがわしいことしないでね」

「しねーよ」

「冗談よ」

そうは、思えん。


「私たちの仕事は、間違いを消すこと。

でも、それは字や絵だけではない」

「それで?」

「だから、君の心の傷も消してあげる」

どうしよう?

頼もうか?


「私が、いたらやりたい放題よ」

「やりたい放題?」

「うん。いじめらても、叱られても、そのたびに消すことができる。

怖いものなんて、なくなるわ」


その話を、聞いて逆に怖くなった。


「やめておくよ」

「どうして?いい話なのに」

「だって、もしいじめれても、叱られてもそのたびに消していたら、

同じ事を繰り返す。」

「だから」

「なので、犯罪や悪い事に手を染めかねない。だから、やめておく」


「えらい」


「なんだって?」

「よくそこに気がついたね」

「試したの?」

「うん」

レヒサは、微笑む。


「君なら、自分で気がつくと思ってたよ。がんばってね」

何をだ?


「でも、最後にひとつだけ、消してあげる。何がいい?」

「何でも?」

「うん。でも、私との記憶はだめよ。消しゴム自体も消えるから」

「わかった。では、頼む」


僕はレヒサに、ひとつだけ記憶を消してもらうように頼んだ。


「本当に、それでいいの?」

「ああ、構わない」

「OK」


そして、その記憶は消えた。


レイサは、その後も時々現れる。


「そこ、間違ってないから消さなくていいよ」

「そこの下書き、まだ消し忘れがあるよ」


今では、いいパートナーとなった。


えっ?

何の記憶を消してもらったかって?


覚えていない。

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消しゴム 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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