第32話 旧暦忍者5、一つ目小僧!?

「鬼妖神様! どうかお力を与えたまえ!」

 玉藻前が妖怪の頂点、鬼妖神の眠りし肉体に祈りを捧げる。妖怪の暗いアジトに新たな妖怪が生まれる。

「ピカーン! ビビビビビー!」

 壁に埋め込まれた上半身のだけのような姿の鬼妖神。その目が光りビームを発射し、一人の妖怪が姿を現す。

「玉藻前様のお呼びにより駆けつけてきました。一つ目小僧です。」

 現れた妖怪は、一つ目小僧だった。

「よく来た。一つ目小僧よ。人間界に行って、人間を驚かせて来るのだ!」

「ははあ!」

 こうして玉藻前の命令で、一つ目小僧は人間界に出発した。


「今日は転校生を紹介します。」

 奏の通う渋谷スクランブル高校の教室に新しい転校生がやってきた。

「一つ目小僧です。よろしくお願いします。」

 なんと転校生は、妖怪だった。

「ギャアアアアー!? 目が一つしかない!?」

 教室の生徒たちは転校生が一つ目小僧なので驚いた。

「助けて! 睦月ちゃん!」

 奏は、妖怪が現れてピンチになり、友達の睦月の名前を咄嗟に叫ぶ。

「これは姫の悲鳴!? 何か一大事があったに違いない! 直ぐに駆けつけるでござる!」

 教室の天井裏部屋でゴロゴロ漫画を読み、おやつを食べていた忍者の睦月が奏の悲鳴を聞いて、慌てて戦闘態勢に入る。

「姫! 大丈夫でござるか!?」

 睦月は、天井裏から教室へ飛び下りる。

「睦月ちゃん!」

 奏は、睦月が現れたことで安心の笑みを浮かべる。

「あれを見て!」

「ムムム!? あれは妖怪!? 一つ目小僧!?」

 睦月は、自分が逃がした妖怪の1匹、一つ目小僧と遭遇する。

「由緒正しき忍者の家柄! 旧暦家の名にかけて! 一つ目小僧! お前は私が退治する!」

 睦月の決めゼリフと決めポーズが決まった。


「一つ目小僧ビーム!」

 一つ目小僧は、一つ目からビームを放ち睦月を襲う。

「キャア!?」

「うわあ!?」

 奏と睦月は、予想外の一つ目小僧のビーム攻撃を慌ててかわす。

「アッチチチチチ!?」

 一つ目小僧のビームが睦月ちゃんのお尻を少し焦がした。

「大丈夫!? 睦月ちゃん!?」

 奏は飛び跳ねている睦月を心配する。

「大丈夫でござる。奏姫様、忍者に同じ技は通用しないことを見せてやるでござる!」

 これでも睦月は、由緒正しい忍者の家柄、旧暦家の一人娘であった。睦月の闘争心に火が付いた。

「くらえ! 一つ目ビーム!」

 一つ目小僧が目からビームで攻撃してくる。

「その手は私には通用しないでござる! 忍法! 鏡返し!」

 睦月は、懐から鏡を取り出し、鏡でビームを跳ね返す。

「ビームが跳ね返された!? ギャアアアア!?」

 跳ね返ったビームで、一つ目小僧が丸焦げになる。

「やったー! 一つ目小僧を倒したでござる。」

「睦月ちゃん、カッコイイ!」

 奏と睦月は、一つ目小僧を倒して喜んだ。

「これで逃げた妖怪は後105匹。先は長いけど頑張るでござる。」

「私も何か手伝うわ。」

「奏姫様、ありがとうでござる。」

 奏と睦月は、残りの妖怪退治を全力ですることを誓うのだった。

「こら! 転校生をいじめちゃダメでしょうが!」

 先生は、転校生をいじめると怒る。

「怒られちゃったね。私たちは妖怪退治をしただけなのにね。」

「いじめは良くないでござる。ニンニン。」

 奏と睦月の青春は、始まったばかりであった。

 つづく。

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