第21話 苺先生3、廊下に立たされる!?
「はい。授業を始めます。教科書を開いてください。」
苺は、雑用ことオールマイティーな教師として、普通に授業を始めようとしていた。
「先生、教科書を忘れました。」
「忘れ物ですか? やる気がないなら、教室の後ろに立っていなさい。」
生徒の忘れ物には、名前と違って厳しい苺先生は授業に対する姿勢は、まっとうな女教師であった。
「あ、教科書を職員室に忘れた・・・。」
そんな苺も教師であるが人間なので忘れ物をすることもある。
「苺ちゃんも廊下に立っていろ!」
「え? ええー!? なんで!?」
「そうだ! 教師でも教科書を忘れたら立たされるべきだ!」
「そ、そんな!? 私、教師なんですけど!?」
「忘れ物に教師も生徒もあるものか!」
「ええー!?」
結局、廊下に水の入ったバケツを両手に持たされて立たされる苺であった。
「どうして私がこんな目に!? 私は教師なのに!? ウルウル。」
教師なのに生徒以下。そんな女教師の物語である。
「グオオオオー!?」
苺は、教室でもがき苦しんでいる生徒の1年生の笑を見つける。笑は、ライト文芸部の部員である。
「どうしたの? 頭でも痛いの?」
苺は、自分が頼りなくて困ることが多いので、他人の痛みや苦しみを感じることができる。他人の悩みに寄り添える、今時、珍しい教師である。
「なんだ。苺ちゃんか。相談したくないです。」
「あのね。」
笑は、苺ちゃんが教師なのに生徒以下なのを知っている。笑は生徒だが、今時の教師には何も期待していない。
「まあまあ、これでも私は教師だし、何でも相談してよ。」
「実は・・・私はニコッと笑っているだけで味が無いと思うんです。本物の幽霊おみっちゃんに対抗して、洋菓子のバイヤーもやりましたが失敗しました。どうしましょう!? 教えてください!?」
笑の悩み事は、ライト文芸部の部員なのに、笑うしか個性がないことだった。
「なんだ、そんなこと。つまらないし、くだらないわ。小さな悩みね。」
苺は、笑の悩みは10代の青春の悩み事だとバカにする。
「なに!? 私が悩んでいる原因は、苺ちゃんの主演作での役作りが原因なんだぞ! 苺ちゃんは教師なんだから、もっとしっかりして下さい!」
「私!? 私が原因なの!?」
笑の悩み事の原因は、関係ないように見えた苺だった。予想外の展開に驚く苺。
「苺ちゃん! ヘラヘラ笑ってないで、ちゃんと教師をしてください! いつまでも生徒と同じように笑われたら、生徒の私が笑えないじゃないですか! 本当は腹黒い悪役役なんですよ! 私は! 苺ちゃんが頼りないから、優しい笑顔の女子高生役を演じています! 私の個性が死んじゃってます! 返して下さい! 私の青春を!」
「す、すいません。」
申し訳なくて、ただただ謝る苺であった。
「どうしてくれるのよ!? 苺ちゃん!?」
「直ぐに対処法を考えます!? さようなら!?」
笑に追い詰められた苺は慌てて走って逃げるのだった。
「みんな!? どうしよう!? 大変なの!?」
苺は、いつものように慌てて、ライト文芸部の部室に駆け込んだ。
「どうした? 苺ちゃん。」
天が、いつものように尋ねる。天はライト文芸部の部長である。
「いつものように厄介事を持ち込んだに決まっています。」
大蛇が、苺が駆け込んでくるのは、いつものパターンだと言っている。
「そうか!? この流れで天を1番登場のポジションに置いておけば、ライト文芸部は平和だわ!」
麗は、天が暴れないとライト文芸部は平穏だと言っている。
「実は、笑が笑い過ぎで、個性が死んでいると悩んでいるんだ。クスン。」
苺は、悲しくて思わず涙ぐむ。
「何だって!?」
「きっと苺ちゃんが原因だよ。」
「そうそう。苺ちゃんは不幸をばら撒く女教師だもんね。」
ライト文芸部の部員たちも、全ての問題の原因は苺だと言っている。
「ご安心して下さい。いざという時は私が笑よりも笑い! 笑よりも腹黒いことを考え実行してみせます! カッカッカ!」
「そうだわ! 私にはカロヤカさんがいたんだわ!」
カロヤカさんは、才色兼備、文武両道、奇想天外、横断歩道、何でもできるスーパーな女子高生である。
「ありがとう! カロヤカさん!」
「カロヤカにお任せあれ。」
苺の悩み事は消えた。悩み込んでいる笑より、カロヤカさんの方が頼りになるのだ。
「はい! みなさん! 今日の和菓子は、甘くておいしい善哉ですよ! もちろんお茶もありますよ! エヘッ。」
本物の幽霊おみっちゃんは、着物を着た純和風の幽霊である。
「今回の悩み主は、ライト文芸部の部員の笑なので、彼女は、相談者の苺がライト文芸部に相談に来た時にはいない。テンプレート型だと3話も直ぐに完成。ドラえも〇や水戸黄〇、ドクター〇も毎回同じのテンプレート型だけど、絵があるアニメやドラマは面白いけど、文字だけって面白いのかな? あ、私は食べたら帰るからね。」
幽子は、茶菓子とお茶をこよなく愛する。
「良かった。無事に笑の悩みを解決できたわ。これで教師としての面目が保てるわ。キャア。」
苺が苺ちゃんでも教師をやっていけるのには理由があった。苺には、ライト文芸部という頼もしい仲間がいるからだった。
「お待たせ!」
悩みの解決方法を持って、苺が笑の元へ帰って来た。
「あなたの悩みを、私が解決してあげよう!」
「苺ちゃんが~?」
笑は、苺に自分の悩みが解決できるとは思わないので、疑いの眼差しを向ける。
「耳を貸して。」
苺は、手招きで笑に耳を近づけるように指示する。
「ほうほう。」
笑は、半信半疑で苺に耳を傾ける。
「いつまでもメソメソ悩んでいろ。あなたの代わりはいくらでもいる。」
苺は、予想外に低い声で笑を脅迫する。実際に笑が悩んで腐っている間に、カロヤカさんが誰よりも笑うのである。
「ゾクッと!?」
麗は、苺の言葉と声を聞いて、背筋がゾクっと寒気を感じる。
「苺、食べる? 美味しいよ。」
苺は、手に苺を持っていて、笑に勧める。
「苺の共食いよー!?」
笑は、苺に恐怖を感じ、思わず走って、その場から逃げ出す。
「そうだ! 私が悩んで動かない間に、誰かが私の代わりに笑ってしまう! 悩んで引きこもっている場合じゃないわ! 私は、もっと笑うんだ! ニコッ。」
笑は、悩んでいるのがバカバカしくなった。悩んで動けなくなるより、もっと笑って生きるんだという答えを出して、頭の中がスッキリとした。
「青春っていいな、私にも若い頃があったな。いいな。」
麗の悩み事は、見事に苺が解決した。
「三十路で独身はヤバイな。売れ残りだ。誰か私の悩みを解決してくれ!?」
苺の悩みは、結婚するまで解決されることはない。
つづく。
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