第20話 苺先生2、給食費!?

「はい、今日は給食費を集めます。」

 最近の高校は、保護者がお弁当を作らなかったり、学校の中にある購買部でパンを買うお金を渡さなかったり、渡せなかったりする。そのため比較的安く、みんなが昼食を食べれるように給食がある。

「ええー!」

「ええー! って言うな! 昼ご飯無しにするぞ!」

 生徒たちはお金を取られるので、給食は食べたいが気持ち的に手元からお金が無くなるのでブーイングが起こる。

「先生も給食費を払えよ!」

「え? ええー!? なんで!?」

「苺ちゃんも給食を食べているだろう!」

「そ、そんな!? 私、教師なんですけど!?」

「給食費に教師も生徒もない!」

「ええー!」

 結局、自分が不満のブーイングをしている苺。

「分かりました。払えばいいんでしょ、払えば・・・。教師なんて安月給なのに・・・。クスン。」

 教師なのに生徒以下。そんな女教師の物語である。


「グオオオオー!?」

 苺は、教室でもがき苦しんでいる生徒の2年生の麗を見つける。麗は、ライト文芸部の副部長である。

「どうしたの? 頭でも痛いの?」

 苺は、自分が頼りなくて困ることが多いので、他人の痛みや苦しみを感じることができる。他人の悩みに寄り添える、今時、珍しい教師である。

「なんだ。苺ちゃんか。相談するだけ無駄ね。」

「あのね。」

 麗は、苺ちゃんが教師なのに生徒以下なのを知っている。麗は生徒だが、今時の教師には何も期待していない。

「まあまあ、これでも私は教師だし、何でも相談してよ。」

「実は・・・フォロー役ばっかりで目立たないの!? どうしよう!? 助けて!?」

 麗の悩み事は、ライト文芸部の副部長なので、部長の天に美味しい所を持っていかれることだった。

「なんだ、そんなこと。つまらないし、くだらないわ。小さな悩みね。」

 苺は、麗の悩みは10代の青春の悩み事だとバカにする。

「なによ!? 私が悩んでいる原因は、天だけじゃないぞ! 苺ちゃんも、教師のくせに目立ち過ぎよ!?」

「私!? 私も対象に入っているのか!?」

 麗の悩み事の原因は、目立ち過ぎる天と苺が原因だった。予想外の展開に驚く苺。

「苺ちゃん! 教師なんだから、もっと教師らしくお淑やかにしてよ! いつまでも生徒と同じようにはしゃがれたら、生徒の私がはしゃげないじゃない! 本当はフォロー役なんて、教師なんだから、苺ちゃんがすればいいのよ! 返して! 私の青春を!」

「す、すいません。」

 麗の悩みの原因は苺だった。申し訳なくて、ただただ謝る苺であった。

「どうしてくれるのよ!? 苺ちゃん!?」

「直ぐに対処法を考えます!? さようなら!?」

 麗に追い詰められた苺は慌てて走って逃げるのだった。


「みんな!? どうしよう!? 大変なの!?」

 苺は、いつものように慌てて、ライト文芸部の部室に駆け込んだ。

「どうした? 苺ちゃん。」

 天が、いつものように尋ねる。天はライト文芸部の部長である。

「いつものように厄介事を持ち込んだに決まっています。」

 大蛇が、苺が駆け込んでくるのは、いつものパターンだと言っている。

「どうしたんですか? 苺ちゃん。怒らないから言ってごらん。ニコッ。」

 笑が、子供をあやす様に苺を扱う。

「実は、麗が私が目立ち過ぎで、自分が目立たないって言ってるの。クスン。」

 苺は、悲しくて思わず涙ぐむ。

「何だって!?」

「確かに苺ちゃんは目立ち過ぎだ。」

「私たちよりも教師が目立つのはどうかと思います。」

 ライト文芸部の部員たちも、苺が目立ち過ぎだと言っている。

「ご安心して下さい。いざという時は私が苺ちゃんや天部長よりも目立ってみせますから! カッカッカ!」

「そうだわ! 私にはカロヤカさんがいたんだわ!」

 カロヤカさんは、才色兼備、文武両道、四面楚歌、大納言小豆、何でもできるスーパーな女子高生である。

「ありがとう! カロヤカさん!」

「カロヤカにお任せあれ。」

 苺の悩み事は消えた。悩み込んでいる麗より、カロヤカさんの方が頼りになるのだ。

「はい! みなさん! 今日の和菓子は、甘くておいしいお汁粉ですよ! もちろんお茶もありますよ! エヘッ。」

 本物の幽霊おみっちゃんは、着物を着た純和風の幽霊である。

「今回の悩み主は、ライト文芸部の副部長の麗なので、彼女は、相談者の苺がライト文芸部に相談に来た時にはいない。それよりも自分たちの部室に、生徒に悩み相談にやって来る教師がいることに疑問を抱かないライト文芸部員の方が不思議だわ。あ、私は食べたら帰るからね。」

 幽子は、茶菓子とお茶をこよなく愛する。

「良かった。無事に麗の悩みを解決できたわ。これで教師としての面目が保てるわ。キャア。」

 苺が苺ちゃんでも教師をやっていけるのには理由があった。苺には、ライト文芸部という頼もしい仲間がいるからだった。


「お待たせ!」

 悩みの解決方法を持って、苺が麗の元へ帰って来た。

「あなたの悩みを、私が解決してあげよう!」

「苺ちゃんが~?」

 麗は、苺に自分の悩みが解決できるとは思わないので、疑いの眼差しを向ける。

「耳を貸して。」

 苺は、手招きで麗に耳を近づけるように指示する。

「ほうほう。」

 麗は、半信半疑で苺に耳を傾ける。

「いつまでもメソメソ悩んでいろ。あなたの代わりはいくらでもいる。」

 苺は、予想外に低い声で麗を脅迫する。実際に麗が悩んで腐っている間に、カロヤカさんが誰よりも目立つのである。

「ゾクッと!?」

 麗は、苺の言葉と声を聞いて、背筋がゾクっと寒気を感じる。

「苺、食べる? 美味しいよ。」

 苺は、手に苺を持っていて、麗に勧める。

「苺の共食いよー!?」

 麗は、苺に恐怖を感じ、思わず走って、その場から逃げ出す。

「そうだ! 私が悩んで動かない間に、誰かが私の代わりに目立ってしまう! 目立つためには出番が必要! 悩んで引きこもっている場合じゃないわ!」

 麗は、悩んでいるのがバカバカしくなった。悩んで動けなくなるより、もっと出番を増やして目立つという答えを出して、頭の中がスッキリとした。 

「青春っていいな、私にも若い頃があったな。いいな。」

 麗の悩み事は、見事に苺が解決した。

「三十路で独身はヤバイな。売れ残りだ。誰か私の悩みを解決してくれ!?」

 苺の悩みは、結婚するまで解決されることはない。

 つづく。

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