4 私は私を探しているんです。

 私は私を探しているんです。


「私は私を探しているんです。ずっとずっと、探しているんです」仙波千鶴は真剣な顔をして、そんなことを照に言った。

 普通の状態だったから、いわゆる自分探しのようなことを言っているのかな? と思う千鶴の言葉だったけど、今、この街で起きている不思議な現象のことを知っていた照には、その千鶴の言葉が『文字通りの意味』であるということがすぐにわかった。

「千鶴さん。あなたの『ドッペルゲンガー』。つまり『あなたの影』を探しているということですね」照は言った。

 照の言葉に千鶴はこくんと小さく頷いた。


 ドッペルゲンガー症候群。

 いわゆる自分の影が、自分の偽物として、一人歩きし始める、この不思議な、あるいはとても奇妙な病気がいつごろ、この街で流行りだしたのか、その正確な時期はわからない。でも、去年の春頃にはそれなりに症状を発症した病人が数人はいたことは事実だった。

 なぜそれがわかるかというと、『照自身が、ドッペルゲンガー症候群の罹患者であったからだし、また、その病気の治療法を探る過程において、偶然出会った、幽霊のような青白い顔をした少女、ネオンもそうだった』からだった。


 照が自分のドッペルゲンガーの存在に気がついたのは、今年の春頃のことだった。そして話によると、ネオンが自分のドッペルゲンガーの正体に気がついたのは、去年の冬頃のことだという話だった。


 ……お願い。私を見つけて。じっとネオンの顔を見ていた照は、どこかで誰かがそう言ったような、小さな声が聞こえたような気がした。

「どうかしたの照? 僕の顔をそんなに熱い目で、じっと見つめちゃってさ」にひひ。と笑って、空中にあぐらの姿勢をして、上下逆さまに浮かんでいるネオンは言った。

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