2 初めまして。私の名前はネオンです。

 初めまして。私の名前はネオンです。

 

 とんとん、とドアを叩く音が聞こえる。

 その音を聞いて、照は布団の中で目を覚ました。

「照。お客さんですよ。お客さん」

 そんな声を聞いて、照は布団から顔を出した。すると、そこには、一人の空中にふわふわと浮いている、長い黒髪をした青白い肌と青色の目をした、不思議な(まるで幽霊みたいな)少女がいた。


 その少女の名前は、ネオンと言った。

 それはきっと、少女の本名ではないのだろう。仮の名前だ。でも、少女の本当の名前を知らない照にとって、ネオンはやっぱり、ネオンだった。


「今、起きるよ」

 そう言って照は布団から抜け出すと、パジャマの上にコートを羽織り、(今は十二月の後半。とても寒い冬の季節だった)それから冷たいフローリングの床の上を歩いて玄関のドアのところまで移動をした。


「はい。どちら様ですか?」そう言って照はドアを開けた。(チェーンはつけたままだった)

 するとドアの向こう側には一人の、白いマフラーを首に巻いて、厚手の赤いコートを着た、照と同じ十六歳くらいに見える、その細い足に黒いタイツを履いた、黒い制服姿の少女が立っていた。


「こんにちは」とその少女はにっこりと笑って照に言った。

「こんにちは」照は言う。

(そう言いながら、照は、なんだか初めて見るこの少女のことを、以前にどこかで見たことがあるような気がしてならなかった)


 ……さようなら。と、誰かがどこかで、とても小さな声で、そんな(とても悲しい)ことを、つぶやいたような気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る