さよならの約束
雨世界
1 夢を見ていたの。とっても、とっても、楽しい夢。あなたの夢。……私の夢。
さよならの約束
プロローグ
あなたによく似た人
本編
夢を見ていたの。とっても、とっても、楽しい夢。あなたの夢。……私の夢。
背中に二つの白い羽根を生やした君は、確かに空を飛んでいた。
背中に翼を持っていない僕は、そんな君の姿を見て、確かにとても美しいと感じた。(それは嘘ではない。確かにそう感じたのだ)
僕は思う。
君のことを。
そして、僕は選択を迫られる。
……僕のよく知っている君と、僕のよく知らない君。どちらの君を救うのか、その選択を迫られる。
そんな僕に君は「大丈夫。初めから答えは決まっています。そもそも、『選択肢なんてこの世界にはないんですよ』。……だって私は、私自身の偽物だから」とにっこりと笑ってそう言った。(でも、君の体はかすかに震えていた)
僕は走る。
たとえ、君がそばにいなくても、この世界にたった一人きりになったとしても走り続ける。
それは、なぜかって?
決まっている。
それは君との約束だから。
それは、今、僕が君との約束を果たすために、もう一人の、『本当の君』を助けるために、……僕はこうして全力で、走っているのだと知っているからだった。
本物と偽物。
本質(物質)と影。
……私と、もう一人の私。(あるいは私たち)
そんな不思議な現象が(秘密裏に、世界の裏側で)この世界の中で起こり始めたのは、2045年をすぎた、ちょうどつい最近のことだった。
その不思議な現象のことを世界中の科学者たちは後年、『ドッペルゲンガー症候群』の名前で呼んだ。
自分の影が一人歩きして勝手に動き始める、その現象の名前を、科学者たちは世界初の心霊現象的な病名でそう呼び始めたのだった。
科学者たちは言った。
……自由とは、病である。
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