第十一夜 侵食

おじいちゃんは、ことあるごとに僕にお守りをくれた。

彼は全国の神社仏閣を巡ることを楽しみにしていたから、どこか行く度に孫のためにお守りを買ってきてくれていたんじゃないかな。


子どもながらに、邪魔だな、なんて思っちゃって。

そう何個ももらっても、カバンにつけるのは恥ずかしかったから。


お守りの中に何が入っているか知ってる?

変な紙がはいっているんだ。


だから僕は、その変な紙だけを抜き取ったら、外袋は捨てちゃった。

そのまま捨てるのはなんか気が引けたからさ。

今思うと、これは相当に罰当たりな行為だよね。


次第に十や二十の紙が集まって。

家の出窓に飾ってあった鉄瓶のなかに、全部まとめて入れちゃった。

その鉄瓶自体なんなのかよくわからないんだけど、

相当に重くて古いものだったことは確か。


一週間くらいして鉄瓶の蓋を開けてみたら、

中に入れていた紙の端の方が、全部焼け焦げたように黒くなっていたの。


——浸食したんだ——


そのとき小学生だった僕が浸食なんて言葉を知っているはずがないのに、

なぜだかその言葉が、はっきりと頭のなかに響いた。


それからずっと、鉄瓶の中に入れた紙のことは忘れちゃった。

数年経って、ふと思い出したように開けてみたら、まるでもとから何もなかったかのように、空っぽだったんだ。

誰かがゴミだと勘違いして、捨てちゃったのかもね。


でも僕は、神様同士が互いに浸食しつくしたんだと、思っているの。

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