第31話
あいつには痛覚がある、それは腹部に傷を負った時とそこにホットホッターホッテストを吹き付けた時の反応でわかった。
雪月家来は強い、ナズナさんから貰った装備が無ければ先程の斬撃で腕を切り飛ばされていた。
でも強さだけじゃ勝てない勝負だってある。
「ようはどう相手の嫌な事をするか、なんだな」
昔っから俺は状態異常を使って敵を倒すのが好きでな。
その上相手が苦しむのを見れるときたら、徹底的にやるしかないよな?
アキはそう心の中で呟くと口にホットホッターホッテストを含む。
さっきはアホみたいに大量に飲んだからやばかったが、この程度の量なら辛党兼甘党の俺にゃちょっと辛い程度だ。
口内を唾液と混ぜたホットホッターホッテストで半分程満たすと次の雪月家来の
が、それを見た雪月家来はアキではなく後ろの三人にターゲットを移す。
「『ひゃうんほ』ひゃんねんはっはな」
そんな雪月家来の動きを察したアキは口にホットホッターホッテスト唾液割りを含みながらタウントを発動し、アキに向きざるを得ない状態にする。
「あ、あいつバカなのか?」
ホットホッターホッテストを口にし、ニヨニヨとしながら雪月家来を待つアキの姿にムイスラがシャケへと問いかける。
「リアルの方では冷静なんだがゲームの事になるとな……」
呆れながら質問に答えるシャケの様子にムイスラは苦笑いを送るだけだった。
━━ギィィン!!
二人が話しているとそれを他所にアキと雪月家来は一進一退の攻防を繰り返していた。
雪月家来が太刀を振るうとアキは盟友の盾で受け、仕返しに口に含んだホットホッターホッテストの毒霧を吹きかける。
それを予測していた雪月家来は受けられた事を察知するとすぐさま離れ、次の攻撃に移る。
右、左上、右下と次々に雪月家来の繰り出す攻撃を、アキは全て危なげなく受け止め攻撃に転じようとする。
がしかし、それらを全て雪月家来は軽々と避け毒霧攻撃の届かない一定の距離を保つ。
「めんどくさいな、あれだけ早く動かれると……」
アキはそう口にすると後ろを一瞥する。
やっぱり狙いが定まってないみたいだな。
そこには頑張って狙おうと頑張るエストと苦い顔をしながら矢を番えるタブリンの姿があった。
こうなったら毒霧は諦めて引き止めておくしかないか。
アキは毒霧攻撃に見切りをつけると口の中に僅かに残っていたホットホッターホッテストを吐き出し、両手の盾をそのままにした状態で死霊守護者の大盾を装備する。
「アキのやつころっころと装備変えるな、今回はフル装備っぽいし」
「んな事言ったらムイムイだって短剣だの何だのってころころ変えてるじゃん?」
「まったく、君たちは武器に対する愛情は無いのか?」
「「名前付けるほど溺愛してるやつはお前しかいねーよ」」
俺が大盾を出していると後ろからなにやら漫才が聞こえて来た。
本当に仲良いんだな。
「っと、ジェラってる場合じゃないな」
俺はそう呟くと大盾を構え、その瞬間大盾から重く強い衝撃が伝わってきた。
「っぐうぅぅ!」
口の中にホットホッターホッテストが入っていないとわかった雪月家来が好機とばかりに飛び込んで来たのだ。
だがそれはアキにとっても最大の好機であった。
その瞬間アキは左手を慣らしクマ五郎を呼び出し、腕だけを出させると雪月家来の両足を持ち、くま五郎自慢のStrを生かし拘束した。
「今だ!!」
アキが合図を送るとタブリンとエストは持ちうる限りの最大火力を雪月家来にぶつける。
二人の攻撃が着弾すると共に、その攻撃の熱によって膨大な量の水蒸気が発生し当たりが真っ白になった。
「ぐっ、やったか?」
「「おいバカやめろ」」
水蒸気の中ムイスラがフラグを建築し、それにシャケとアキがツッコミを入れ水蒸気の中を注意深く監視する。
しばらくすると水蒸気が晴れてゆき、一つのシルエットが映し出された。
「ムイスラ、お前のせいだぞ」
「そうだな、お前のせいだ」
「あ、俺のせいなん?」
そのシルエットを見たシャケとアキはジト目でムイスラを睨み、その後水蒸気の中で仁王立ちする雪月家来に視線を移す。
「まだ生きてんじゃねぇか、立ってるし目も赤く光ってるし」
「なら僕が止めを!!」
そう言って矢を放つタブリンだったがその矢はシルエットの目の前で真っ二つになって落ちてしまった。
「飛んでくる矢を落とすほど元気だが」
「元気だねぇ」
「「あ…………」」
雪月家来の様子を警戒し見ていると、後ろから何かを刺されたようで赤い双眼は上を向き身体は少し浮き上がっていた。
完全に水蒸気が晴れ、向こうの様子が見えるようになるとそこには雪月家来を後ろから剣で刺し貫いたほね太郎がいた。
『我が主、敵を討ち取りました!!』
「お、おう、良くやった」
最後に美味しいところだけを持っていったほね太郎はとても嬉しそうな声色で報告すると雪月家来を縦に真っ二つにした。
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