第27話

シャケ達の目の前までセキトバで来ると、アキはセキトバから降りゲートの向こうへ還す。


「おひさ、そして初めまして」

「おうおひさ、ここ数日何してたんだ?」

「家族に旅行に連行されてな」

「oh......んまぁ気を取り直してメンバー紹介といこうか」


シャケの質問にアキが死んだ目で笑いながら答えると、シャケは苦笑いをしながら話をどうにか逸らしアキの負のオーラを霧散させようと試みる。

すると、その試みは成功したらしく、アキから漏れ出ていた負のオーラは消え、いつもの調子に戻っていたのだった。


「よ、よーし、時計回りに自己紹介をしていこうか」

「俺からでいいのか、俺はムイスラ、見ての通り盗賊シーフだ。アキでいいんだったよな、分からないことがあればなんでも聞けよ?」


腰から複数のナイフをぶら下げた緑髪の男プレイヤーは胸の前で両手をサムズアップし、無邪気な子供のような笑顔を見せ自らの紹介をする。


一人目はシーフと、見た感じあの腰についたナイフを投げるか突き刺してそのまま他のナイフに切りかえてとしそうだな。

正直見た目なんざシャケを見れば関係ないのだな、と思ってしまう。

あいつプリーストの筈なのに見た目もう格闘家なんだが。


「わっ、私はエストって言います!!魔法使いで炎魔法と雷魔法が得意です!!」


次に出てきたのは人見知りっぽい感じのするピンク髪の女プレイヤーだった。

髪だけではなく目も装備もピンクを主体としており、魔法使いと言うより魔法少女と言った方が合うのでは?と思うような見た目をしている。


炎と雷か、もしこのゲームで現実の常識が通じるなら爆発を起こしたりとか出来そうだな。


「次は僕ですね、僕はタブリンって言います。ジョブはアーチャーをしています、僕は絶対に誤射しませんので安心して前でタゲを取っていてください」


タブリンと名乗るプレイヤーは正直パッと見性別がわからない中性的なアバターをしており、白髪と黒縁のメガネが特徴的だ。

そしてこんな自信満々に言われると安心よりイラつきの方が勝つな。


「私が最後ね?私はミーよ、みんなからはミーちゃんって呼んでもらってるわ。私のジョブは剣士、この子が相棒の黒猫丸よ」


腰まで蒼い色をしたポニーテールを伸ばしたミーは、腰に帯刀している日本刀によく似た武器を艶めかしく触ると武器に付けられていると思われる名前を告げる。


よしわかった、この人は危ない人だ!!


「ほら、今度はアキから自己紹介しろよ」


シャケの愉快な仲間たちの自己紹介が終わった頃にシャケが脇腹を肘でつつきながらそう言ってきた。


「そうだな、ゴホン……俺はアキ、ガーディアン兼ネクロマンサーだ。気に食わないがそこの三枚おろし野郎と似たようなジョブの取り方をしてる」


俺が自己紹介をするとネクロマンサーのタイミングで周りのメンバーが黙っていた。


まぁ無理もないか、パーティーにクソジョブと名高いネクロマンサーが入るんだからな。


「やっぱりシャケの周りの奴らは面白いな!!」

「あの馬はまじで骨の馬だったりするのか」

「ガーディアンにネクロマンサーか、自分は守ってばかりになるからネクロマンサーで仲間を入れて攻撃をさせて火力を稼ぐ。なるほど、いい案ですねそれ」


まった、全然状況についていけないんだが。


嫌がられると思っていた矢先にこんな面白い話だと言わんばかりに盛り上がられるとどうすればいいのか分からなくなる。


「馬鹿だなぁアキは」

「あぁ?」

「よく考えてみろよ、ここは俺のパーティーだぜ?お前みたいな面白いビルド構成してる奴を見て騒がないわけないだろ?」

「あぁ、お前が入れるようなパーティーだからな、そりゃ愉快なとこになるわな」


そうシャケと笑い合っているとムイスラが何やら真っ赤な液体の入った瓶を手渡して来た。


「これは?」

「ホットホッターホッテストって寒さ対策用の飲み物だ」

「名前くっそやなこれ」

「これを作ったプレイヤーがふざけてつけた名前だからな、性能だけは保証できるぞ」

「ならありがたく頂きましょうかね」

「あ、アキ待て!!」


━━グビッ


赤くドロっとした液体が喉を通る音が脳に伝わり、みるみるうちに瓶の中身が空になる。


しかしその瞬間喉を焼くような痛みが喉に口内に瞬く間に広がっていった。


「っぅ!?」


ドロりとした液体から今まで経験したことの無いような痛みがじわじわと溢れ出し、胃の中へと拷問をかけるかのようにゆっくりゆっくりと進行していく。


「っぁ!?ぁぅぅんん!!」

「ばっかやろうそれは一滴飲めば30分は聞くやつなんだよ!!」


痛みに涙を流しながら雪の上をゴロゴロと転がっているとシャケが身体を掴み動きを止め、喉と口に手を当てそこから淡い光を放ち始めた。


すると痛みは嘘のように消え、全身がポカポカとする感覚飲みが伝わってきた。


「大丈夫か?」


珍しくヘラヘラしていないシャケが口と喉に手を当てたまま顔を覗き込みそう問いかけてきた。


「大丈夫だ、誰だこんなもん作ったやつ。ぶっ飛ばしてやりてぇ」

「そんなこと言えるなら大丈夫だな」


そんなやり取りをしていると外野からきゃーきゃーわーわーと黄色い声が聞こえて来た。


「お前ら、言っとくけどこいつ男だからな、そういう関係になることは無い」

「その通りだ、俺はバグでこのアバターになってるだけだからな」


俺たちが口を揃えて否定をすると何故か周りからは生暖かい視線が送られてきたのだった。

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