第3話 危機
「かが」の甲板。
「君がソランだね」
ダスティが甲板にたたずむ男性に声をかけた。
その男性は振り向いた。体は白色のサイバネティックスーツに包まれ腕と外もののプロテクターは青色である。髪は天然パーマで顔は童顔である。
「僕は西洞宮頼仁です」
ソランは握手する頼仁。
「君は宇宙人なんだね。僕もエイリアンに会うのは初めてだ」
困惑するダスティと頼仁。
「僕の種族は遥かな大昔に別の時空侵略者達に住んでいる惑星を奪われてから宇宙を漂流する生活をしている。僕達から見ればあなた方は幸運だ」
重い口を開くソラン。
「・・そうだよね。僕達は地球という惑星がある」
うなづくダスティと頼仁。
「アコードに近づいたのは遠い昔、僕達の種族とは別の道を行った種族を追ってきた。でも何もなければそれで僕達は帰る」
ソランは重い口を開く。
「そうなんだ」
ダスティと頼仁は声をそろえる。
ソランは黙ったまま艦橋構造物のドアを開けて艦内に入った。
「もし有事になったら辰巳博士やダスティと頼仁さまはどうする?」
本宮が口を開いた。
「頼仁さまは皇居に帰ってもらう。それとダスティはアメリカで辰巳博士は博物館に帰ってもらう」
単刀直入に言う真島。
はしっこの席で辰巳はヘッドホンをつけて音楽を聞いている。
「旅客船のミュータントには召集ハガキは来ていないから帰ってもらう」
当然のように言う倉田。
「私達は帰らないわ。戦局が悪くなくても召集ハガキは来るからね」
二コールは首を振る。
「辰巳博士は人間の重度障害者と代わらないわね」
カリナは資料を見ながら指摘する。
「放射能障害は治っていない。それに高次脳記憶障害で地図や航路が覚えられず、過去の記憶がない。彼女は漁船としても仕事がなく、ハンターの仕事がない。あるのは科学者としての知識だけだ」
ウラジミールが腕を組む。
「それに頼仁さまは普通の人間で護衛の不知火も人間だが高レベルの邪神ハンターで彼しか頼れない。ダスティはミュータントだけど頼仁さまも初心者レベルのハンターと変わらない」
西山が指摘する。
「それはわかっている」
ベラナがムッとする。
「遼寧と昆明と一緒にいた中国の潜水艦のミュータントは一〇隻潜んでいた。有事になればもっと潜水艦のミュータントを連れてやってくるんじゃないかと思う」
危惧する横田。
「哨戒ヘリや哨戒機が必要よね」
うなづくグロリア。
「地上部隊が上陸してきたら戦車や装甲車のミュータントをわんさか連れてやってきそうだな」
真島がわりこむ。
「ねえ。ベラナ。ここへ行って」
ダスティは地図を出した。
「え?どこ?」
ベラナはのぞきこむ。
「八重干潟。宮古島の観光スポットになっている環礁なんだ。勅使河原先生と歴史の授業を習った」
頼仁は手紙を出した。
振り向く真島達。
「その先生からの手紙は時空コンパスと時空を操作できる選ばれた者達でないと反応しないと書かれていた」
頼仁は声を低める。
「ベラナが行かないなら僕が彼を乗せて宮古島まで飛ぶ」
真顔で言うダスティ。
「小笠原沖から沖縄までおまえのエンジンで飛べるわけがない」
ベラナは声を荒げる。
「俺達が連れてってやる」
それを言ったのは本宮である。
「宮古島には陸自と空自、海自の分駐地がある」
西山が宮古島の地図を出す。
「宮古島の周囲の海はダイビングスポットが多くて潜水艦は近づけない。観光用潜水艦があるからそれを借りて近づける」
平野がわりこむ。
「乗ろう」
目を輝かせるダスティと頼仁。
「いやな予感」
エミリーがしれっと言う。
「ベラナは行かないの?」
ダスティが聞いた。
「私達は警備で沖縄にいる」
腕を組むベラナ。
「そうなんだ」
「俺達が付き合う」
西山は言った。
翌日。首相官邸
会議室に日米の閣僚達が顔をそろえていた。
「・・・マスコミはいなくなりました」
伊佐木総理は口を開いた。
「報告は聞いています」
セリス・ドワイト・マクラン大統領は資料を見ながらうなづく。
「昨日、ライ・コーハンという北朝鮮の工作員がゲートスクワッドチームと父島で接触してきた。それによると時空侵略者が韓国と中国政府に入っている事が確認されました」
菅野官房長官は何枚かの写真を出した。
そこには韓国の青瓦台や中国の中南海に出入りする紫肌のエイリアン達が映る。
「侵入したのはナポレオンやロシアのニコライ二世を口車に載せたエイリアンと同じタイプです。名前はフィランとシュラン」
ブレガー・トマス国防長官の眼光が鋭く光った。
「日露戦争でロシアが負けると彼らは自分の世界に逃げたのを当時の大本営とゲートスクワッドメンバーの記録があります。彼らは大きなタイムラインを感知できて細かいタイムラインや小さなタイムラインは感知が苦手であるのはわかっています」
四方田防衛大臣が声を低める。
「中国は米軍が参戦してこないような停戦工作をしてくると見ています」
稲盛外務大臣がわりこむ。
「そうですね。中国だけでなく韓国も同様の事をすでに打診して来ています。向こうは向こうで北京で中韓首脳会談をやっているから交渉してくるし、米軍が攻撃できないような状況に持っていくと見ています。だからゲートスクワッドメンバーにアコードの如月長官とガーランド元理事長と一緒に米軍で信頼できるメンバーを入れた」
セリス大統領は声を低める。
「ですが、アメリカ政府内でもこの四人を送り込んだ黒幕がいますね」
楠田統合幕僚長は写真を出した。
そこにはネイサン、トレバー、バルドー、アリスの顔写真とプロフィール、融合している艦船の「艦名」が出ている。
「送り込んだ相手は非常に上手で姿を見せない。そして人の弱みを利用する」
セリスの眼光が鋭く光る。
「そのようですね。その人物は「琥珀の眼」
「虹の眼」だけでなく他の世界遺産や時空遺物にものすごい興味を持っている」
伊佐木総理はうなづく。
「ゲートスクワッドメンバーによると小笠原諸島のEEZにこのミュータント達がやってきました」
楠田は写真を何枚か出した。
そこには空母「遼寧」とイージス艦「昆明」
韓国のイージス艦「セジョンデワン」駆逐艦
「デジョヨン」と中国軍の潜水艦一〇隻が映っている。
「さっそく現れましたか」
在日米軍司令官のフランクリンは身を乗り出す。
「メンバーには去年のインスマス事件と琥珀の間事件を解決したダスティ少年と西洞宮頼仁さまと辰巳博士がいますね」
楠田が話を切り替える。
「浅草寺の雷門前でダスティ少年に接触してきたのは頼仁さまです。辰巳博士は頼仁さまが連れてきたそうです」
菅野官房長官が資料を出す。
「三人共、初心者ハンターと変わらないな。頼仁さまには不知火という上級の邪神ハンターが護衛についている。そしてダスティが持っているような時空コンパスを持っていた」
ブレガーが説明する。
「あれは皇室に三種の神器と一緒に伝わっている時空遺物です。中国と韓国、時空侵略者が狙っているのは琥珀の眼と虹の眼です。元寇襲来後に行方不明になったままです。二度の元寇の時、鎌倉幕府はゲートスクワッドの召集を要請を出しています。彼らは武士達と一緒に戦い、元寇を日本から追い出しました。その後、メンバーの誰かが隠した物と思われます」
四方田防衛大臣が資料を出して説明する。
「しかしそんなものが存在するのですか?」
セリス大統領が怪しむ。
「あれは伊勢神宮と出雲大社が所有しており記録の中にもあり、皇室の宝です」
伊佐木総理は答える。
「フィランとシュランの狙いは先人達が隠してきた時空遺物ですね。それは人類や地球の運命を左右する物ばかりだ。米軍としてメンバー入りしている者達の他にも信頼できるハンターを入れて協力する」
ブレガー長官はいくつかの世界遺産の写真を出しながらうなづく。
「それは日本としてもありがたいですね。それに使えるツテはなんでも使わないと人類に勝ち目はありません」
四方田大臣は声を低める。
「韓国と日本は徴用工、慰安婦問題で問題を抱えていますね。アメリカでも彼らの薄っぺらい外交には迷惑している。あの国は外交も国内外政策も失敗続きで経済は二度目のIMF入りになる。でもIMFもお人よしではないわ。助けないし我々も助けない。在韓米軍も撤収する予定よ」
セリス大統領は円グラフや棒グラフが書かれた資料を出した。
いずれも危機的な韓国経済の資料である。
「日本政府としても韓国は助けるつもりもないし、ウソを平気で吹聴する。言う事は聞かないし、おまけに火器管制レーダー問題もあります。日韓断交もしてもいいと思っている。それは共同宣言後に会見室で盛り込む予定になっています」
伊佐木総理の眼光が鋭く光る。
「そうですね。我々アメリカ政府もあなた方がやろうとしている事には感知しませんが中国と韓国がどういう風に出てくるか様子を見ようと思います」
セリス大統領は少し考えてから言った。
宮古島にある陸上自衛隊分駐地のヘリポートにアコードのオスプレイが着陸した。
機外に出てくるダスティ、頼仁、辰巳、不知火、エミリー、本宮、平野、西山、アレックス、奨と周、パインが出てきた。
オスプレイに近づく三人の自衛官。
「ゲートスクワッドの方々ですね。僕は梅田智弘です。隣りは景山健太と石野みどりです」
その自衛官は自己紹介する。
「あなた方もメンバーに選ばれているのですね。「かが」に乗ってなかった」
あっと思い出す頼仁。
「一〇式戦車と16式戦闘機動車、水陸強襲車と融合しているのですね」
ダスティが聞いた。
うなづく三人。
「官舎に案内します」
梅田は手招きする。
官舎に入るダスティ達。
「ここは分駐地ですのであまり建物自体は大きくありません」
会議室に入るとすまなそうに言う梅田。
「基地の周囲の家に反対の旗があっちこっちにあるのを見ました」
頼仁は身を乗り出す。
「見えたのですね」
景山が言いよどむ。
「基地反対するのはわかる。住民は周囲で何が起きているのかわかっていないだけだ」
アレックスは梅田の肩をたたく。
「警視庁とFBIからなんですがこのミュータントが入国したという情報が入っています」
石川は何枚かの写真を出す。
「チャックだ」
声を上げるダスティ。
「ネイサンとバルドー、トレバー、アリスも一緒か」
難しい顔をするアレックス。
「それと空母「遼寧」イージス艦「昆明」と潜水艦一〇隻。韓国軍の「セジョンデワン」「デジョヨン」も一緒に宮古島のEEZ周辺をウロついています」
景山が地図を出して説明する。
「それだけでなく金流芯と孫兄妹も入国しています。チャック達や金流芯達の狙いはあなた方です」
梅田ははっきり言う。
「知っている。昨日はネイサン達やセジョンデワンや遼寧と会った。琥珀の眼や虹の眼がほしいみたい。でもあれは元々出雲大社や伊勢神宮のものだ」
頼仁は真顔で言う。
「基地の浮き桟橋に観光用の潜水艦が横付けしてあります」
石野が窓の外を指さす。
岸壁のそばの浮き桟橋に潜水艦の艦橋が見えた。
「自衛隊で借りたのですか?」
ダスティが聞いた。
「宮内庁に協力してもらったんだ。宮内庁の六十里長官とお父さんの名前で借りた」
頼仁が答えた。
「そうすれば反対されないか」
納得する本宮達。
「本宮さん達も乗るの?」
ダスティが聞いた。
「俺達は宮古島保安部の連中とパトロールする」
西山が答える。
アレックス、周と奨、パインと西山、本宮、平野は部屋を出て行く。
「僕達は監視です」
梅田が口を開く。
「ありがとうございます」
頼仁は頭を下げた。
「僕達は潜水艦に乗ろう」
ダスティは言った。
浮き桟橋から観光用潜水艦が出港した。
操縦は執事の黒沢である。
黙ったまま座る不知火とエミリー。
「きれいな海」
「さんご礁」
ダスティと頼仁は眼を輝かせながら窓をのぞいている。
「こちら巡視船「やしま」漁船が近づいてもハッチを開けないように」
船内アナウンスが入った。
レーダーに接近するプレジャーボートが映し出される。
難しい顔をする黒沢。
身を乗り出すダスティと頼仁。
「来たね」
エミリーは言った。
巡視船「つるぎ」と「かりば」がプレジャーボートの進路をさえぎる。
「やあ本宮と平野じゃないか。大型巡視船はこの浅瀬では無理だもんな」
アメリカ人観光客は挑発する。
「ネイサン、トレバー、バルドー、アリスだろ。おまえたちだって変身できない」
指摘する本宮。
「あなた方の呪文を封じた。結界があるから呪文は使えないわ」
当然のように言う平野。
「そうよね」
アリスは声を低める。
観光用潜水艦が彼らのレーダーから遠ざかっていった。
宮古島沖EEZ
海域に接近する護衛艦「せとぎり」「はるさめ」「みょうこう」「てるづき「しらぬい」
五隻とも艦橋の窓に二つの光が灯る。
「あいつらがいないじゃないか?「まや」と「あしがら」は?」
「セジョンデワン」に変身している楊許比が聞いた。
「レーダーもポンコツでわからない?」
からかう天沢と杜若。
接近する遼寧と昆明。
「潜水艦はどうした}
楊許実が二対の鎖を船体から出した。
「教えるわけがないじゃないか」
当然のように言う松田。
「ポンコツ空母。また潜水艦を連れてきたんだ」
しゃらっと言う倉田。
「黙れよ」
声を低める遼寧。
艦橋の窓の二つの光が吊り上がる。
「韓国の潜水艦は稼働率が低いな。だって故障と欠陥で潜れないもんな」
松田が挑発する。
「でも首脳会談をやっているから暴れられない」
真島が指摘する。
中国語で悪態をつく遼寧と昆明。
韓国語でののしる許兄弟。
「お互い暴れられないのはお互い様だろ」
中国語で言う真島。彼は汽笛を鳴らす。
周囲の海域に大量の泡が吹き出して二十隻の中国軍の潜水艦が浮上した。艦橋の窓に二つの光が灯っている。
「ビンゴ。大音量で狙い打ち」
「アクティブソナーを乱れ打ちした」
杜若と天沢が自慢げに言う。
「中国と韓国に帰れば」
しゃらっと言う松田。
「お互い首脳会談をやっている。騒ぎは困るからな」
ドスの利いた声で言う真島。
「覚えてろよ!!」
遼寧達は言い捨てると連れてきた潜水艦達と一緒に帰っていった。
北京の中南海
会議室に中国と韓国の閣僚達が顔をそろえていた。写真を撮っていたマスコミはざわつきながら出て行った。
「おもしろい話とは何かね?」
龍詠平主席は口を開いた。
「スワップなんてありませんよ
安孫和首相が牽制する。
「スワップをしに来たと思うのですか」
笑みが消える崔瑛哲大統領。
「大昔も今も我国の属国なのはあまり変わらない。小日本やアメリカになめられてばかりだからね」
孫零端外交部長が声を低める。
歯切りする文明伯首相達。
崔瑛哲大統領は主席補佐官に合図する。
ドアが開いて紫色の皮膚、黒色のサイバネティックスーツの男女が入ってきた。
「・・・なっ」
驚きの声を上げる龍主席達。
中国側の閣僚達がどよめく。
「だから重要な話ですよ」
崔瑛哲大統領は悪魔のような笑みを浮かべる。
「時空侵略者をとうとう入れたな!!」
安孫和首相は声を荒げる。
「貴国では朝鮮戦争前から時空のひずみや穴を入れる実験をやっていた。その成果というわけか」
語気を強める龍詠平主席。
「そうですよ」
崔瑛哲がうなづく。
「我々は運命共同体ですよ」
笑みが消える文明伯首相。
「ぜんぜん共同体じゃない」
否定する武柵碁公安部長。
「あなた方も国外、国内問題がたくさん抱えている」
崔瑛哲は話を切り出す。
「貴国もそれは同じだろう。どこともスワップしてくれなくて二度目のIFM入りになるがそのIFMも救済はしない。政策も外交も失敗続きで今回は決してやってはいけない事をやった。我々まで道連れにするのか!!」
声を荒げる龍詠平主席。
「協力するだけでいいですよ。あなた方もアメリカに関税をさらに引き上げられ南シナ海では米軍と日本軍が堂々と演習をして牽制している。AIIBや一帯一路がうまくいっていない。国内では内モンゴルやチベット自治区で武装蜂起や主要都市では大規模なストライキや暴動が起きている。日本とは尖閣諸島問題を抱えている。太平洋に進出したくても出られない。地中海や大西洋でもうまくいってない。ならいっそのこと力を借りようとしているのです」
身を乗り出して説明する崔瑛哲大統領。
「中国国内の魔術師協会とハンター協会、アコード支部はほぼ掌握していますね。九州やハワイの結界を壊すのはたやすいのではないかと」
文明伯首相が地図を出した。
「ハワイ?九州の結界?」
中国側の閣僚達がどよめく。
「沖縄や先島諸島は米軍や日本軍の警戒や離島防衛に力を入れている。得意のサイバー攻撃でアメリカのペンタゴンをおかしくさせてハワイを占領。九州に上陸してから沖縄や先島諸島を料理すればいい。それにはイスラム過激派を煽って日本国内でテロを起こせばいい。そちらの方で反日デモを起こして日本企業や日本人を追い出してはどうですか?経済が失速して外国企業や日本企業が相次いで撤退している。ならいっそのこと追い出すという事です」
李靖和外相が地図を指さしながら説明する。
「待て!なんでここで侵攻の話になる」
呉孫健党軍事委副主席がわりこむ。
「本当に日本侵攻したいのはあなた方ではないですか?でも離島防衛の自衛隊基地やアコード、魔術師協会、ハンター協会支部が増えてやりづらい。なら一緒にやりましょうということです。先島諸島は九州を占領してから料理すればいい」
崔瑛哲大統領がたたみかける。
「南シナ海の基地はそのための基地でしょう?造ったら活用しないともったいない。うまくいけば交渉できる。アメリカを参戦しないための停戦工作をするのです」
文明伯首相が南シナ海の地図を出した。
歯切りする龍詠平主席達。
「あなた方も困っているのでは?私達が協力しましょうと言っている」
フィランは笑みを浮かべる。
「断れないと思いますよ。絶好のいいチャンスだからね」
崔瑛哲大統領は笑みを浮かべながら言った。
その頃。八重干潟
岩礁地帯に浮上する観光用潜水艦。
「ここに岩礁が海上に出ているという地図にないですね」
黒沢は地図を見て怪しむ。
「そうよね」
観光ガイドだと突き出ている岩礁はなく海中に岩礁がある。
「精霊達がやっている」
ダスティが口を開く。
「この岩場と祠も存在しない」
はっきり言う頼仁。
二人は時空コンパスを出して潜水艦から出ると岩場に上陸した。
「行くしかないわね」
エミリーがしれっと言う。
黙ってついていく黒沢と不知火、エミリー。
祠に入るとそこは池になっている。水は澄み切っていて体長五〇センチはあろうかという錦鯉が二〇匹泳いでいた。どの錦鯉も模様が金色、白色、白色でブチ柄という鯉もいて模様も千差万別のようだ。
「海に鯉?」
驚きの声を上げる黒沢とエミリー。
「精霊だよ。沖縄の精霊が僕達に会いに来たんだ」
しゃらっと言う頼仁。
白色の鯉が近づく。
しゃがむ頼仁とダスティ。
「我々の姿が見える者達に警告する。結界を破壊しようとする者達がいる。その者達は魔物の群れを入れて襲ってくる」
声をはよく通る声である。祠内のいろんな方向から反響して聞こえた。
「バカな。結界は守られていて破壊できないハズだ」
エミリーがわりこむ。
「スパイがいれば別では?」
それを言ったのは不知火である。
「中国のスパイや韓国の科学者の中には結界を破壊して時空の揺らぎから時空侵略者を招き入れる研究をしている者がいるそうです。それが楊一族です」
黒沢が説明する。
「中国や韓国に時空侵略者が入り込んだならテロリストを使って爆破テロや破壊工作をするかもしれない。混乱しているところに侵攻もありうるのではないかと思います」
頼仁が真顔になる。
「先島諸島は自衛隊が離島防衛に力を入れている。沖縄には米軍がいる。ゲートスクワッドチームを警戒して先島諸島をやらないでいきなり東京とか韓国に一番近い場所にやってくると思う」
ダスティが核心にせまる。
「韓国軍の兵器は失敗作が多いと聞くが?」
エミリーが首をかしげる。
「たぶんその分を中国軍で埋めるとかするんじゃないかと思う」
ダスティがわりこむ。
「時空侵略者達は自分が住む世界からエイリアンを連れて来ている。それは隠れていて合図を待っている」
黄金色の鯉が口を開く。
「時空侵略者が連れてきたエイリアン?」
聞き返すエミリー。
「生態はハチかイナゴのようなもの」
白色の鯉がわりこむ。
黄金色の鯉がなにかくわえてやってくる。
「鍵?地図?」
ダスティと頼仁が受け取る。
「こんな形の鍵は初めてよ」
エミリーが驚く。
それは装飾が施され先端は幾何学的な形になっておりメタリックに輝く。
「武運を祈る」
そう言うと鯉達は水底の岩の向こうに消えていく。
「帰ろう」
ダスティは言った。
「新しいニュースが入ってきました」
女性アナウンサーが口を開いた。
「日米共同宣言がさきほど発表され日本政府は「ゲートスクワッド」の要請を国連に出しました。ゲートスクワッドチームは歴史上何度も結成されました。二度の大戦と日露戦争でもメンバーは結成されています」
男性アナウンサーは白黒写真の集合写真を出した。
「日米共同宣言の中で時空侵略者が韓国と中国政府の内部に入っているのが確認されました」
女性アナウンサーがわりこむ。
「国連と政府のホームページにメンバーの詳細が出ると思います。これによりアコード、邪神ハンター協会、魔物ハンター協会、魔術師協会では中級レベル以上のハンターや魔術師を召集しているそうです」
「新しいニュースが入ってきました。自衛隊のPAC3部隊が東京に。陸自の部隊が九州地方、沖縄や先島諸島に派遣が決まりました。沖縄や先島諸島の住民の反対を押し切っての派遣になります」
「元号が「零和」に変わって最初の動きは軍事行動のようですね」
男性アナウンサーが言った。
同じ頃。宮古島沖EEZ
護衛艦「せとぎり」「はるさめ」「みょうこう」「てるづき」「しらぬい」がいる。艦橋の窓に二つの光が灯る。
「中国軍の潜水艦のミュータントは北海艦隊や東海艦隊基地に戻るようですね」
天沢が報告する。
「南海艦隊と海南島の潜水艦基地は動きがないというのはありえない。静かすぎる」
真島が怪しむ。
遼寧や楊兄弟が今の所騒いでいるがそれ以外にも何かある。
「韓国軍も動きがない。といってもポンコツで故障兵器ばかりじゃあ動けないか」
松田がわりこむ。
「潜水艦「うんりゅう」「みちしお」「くろしお」「ニューハンプシャー」「ヴェルが」
「ゲバート」浮上します。それと他にも潜水艦が三隻ついてきたようです」
困惑する杜若。
「他にも三隻?」
倉田が聞き返した。
浮上してくる九隻の潜水艦。
「本当に三隻増えたよ」
しれっと言う真島。
「インド軍スコルぺヌ級とイギリス軍アスチュート級、米軍のロサンゼルス級潜水艦です」
困惑する天沢。
「中国軍の潜水艦を追い出したら接触してきたのよ」
戸惑う日紫喜。
「僕はクリストファー・リード。隣りはスタイナーでインド軍から来たジャミル」
イギリス軍の潜水艦が紹介した。
英軍アスチュート級「アスチュート」全長九七メートル。七八〇〇トン。
インド軍スコルぺヌ級「カルヴァリ」全長六六メートル。一六六八トン。
「中国軍の潜水艦のミュータントがインド洋だけでなく大西洋や北極海にも進出してきている。中国海警船と中国軍の艦船のミュータントと普通の艦船も堂々と進出をしてきている。潜水艦の方はほぼミュータントだ」
スタイナーは二対の鎖を船体から出すと先端からホログラムを出した。
「中国軍の積極的な海洋進出は知っている。ソマリアの海賊対策で派遣されて行くと中国の駆逐艦のミュータントがいるし、インド洋にもいたよな」
倉田が思い出しながら言う。
「イギリス軍司令部とアコードの要請で調査していた。その過程でスタイナーと出会って、日本に来る途中でジャミルと会った」
リードは説明した。
「なるほどね。なんで相棒が解消されたのか不思議だったのよ」
ローズが納得する。
「ジャミル。日本語はしゃべれるの?」
疑問をぶつける杜若。
「僕はインドの公用語と英語です。日本語は少ししかわかりません」
ジャミルが答えた。
「基地へ戻ろう。翻訳機くらい用意できる」
真島は言った。
二時間後。辺野古基地
マッシュとジャミルはヒンディ語でなにかしゃべっているのが見えた。
「インドの公用語・・・わからない」
頼仁が首をひねった。
「僕もわからない」
ダスティがわりこむ。
インドの公用語はヒンディ語だが英語も習うらしい。でも部族語やらその地方の言語と複数の言語が話されるのは知っている。
「俺も全然わからないよ」
真島はリモコン型の翻訳機を設定しながら言う。
「話が盛り上がっているところ悪いがいい知らせがある」
ライが部屋に入ってきた。
「いい知らせってなんの?」
リッグスが聞いた。
「中国と韓国の首脳会談で韓国側が時空侵略者を連れていったらしい。そこで会談が何回か中断の末に一緒に歩調を合わせるという事で決まったらしい」
もったいぶるように答えるライ。
「悪い知らせよね」
エミリーがわりこむ。
「どっちも国内、国外問題を抱えている。トラブルメーカー同士が手を組んだ」
雅楽代が新聞を出した。
それは主要新聞やニューヨークタイムズやロイター通信の新聞である。どれも日米共同宣言が第一面で取り上げられ中国、韓国の首脳会談の扱いは小さい。
「中国側が何回も会談を中断したのは韓国側がしつこく一緒にやろうと言ってきてしかたなく折れた感じだ。その中には具体的な侵攻作戦の言及もあったらしい」
ライは笑みを浮かべる。
「すごい情報収集能力だな」
腕を組むオニール。
「詐欺師のやり方に似ているな」
あきれるアレックス。
「具体的な侵攻作戦って?」
ウラジミールが聞いた。
振り向く真島達。
「結界を破壊する作戦らしい。太平洋の結界で一番大きいのはハワイで二番目が小笠原諸島と南太平洋のフィジーやパラオ、トンガ。東京湾。外国との貿易船が多くクルーズ船が一番多くやってくる港の灯台や空港の結界を破壊する。そのうえで魔物の群れを入れるという物だが狙いは尖閣諸島であることには変わりはない。今回入ってきた時空侵略者は自分のタイムラインがなくなれば自分の世界に帰るタイプだ」
ライは世界地図を出して太平洋を指さしながら説明する。
「なら小さなタイムラインから潰していけばいい」
倉田がわりこむ。
「それにはまずテロ組織を煽って爆破テロを起こす。サイバー攻撃をして侵攻を開始する。そして琥珀の眼や虹の眼を手に入れてアメリカと交渉をするそうだ」
ライが日本地図やハワイの地図を指さして説明する。
「具体的だけどまた変更される確率も高いだろう」
ノースがわりこむ。
「あくまでも韓国側の提案だからね」
ライが考えながら言う。
「太平洋は広い。場所がどこかわからなければ警備ができない」
ベラナがわりこむ。
「テロを起こすにも警備が厳しければ出来ない気がするけど」
二コールがわりこむ。
「明日にはセリス大統領が帰国する。新しく即位した天皇陛下や皇后さまと謁見したし、大相撲観戦や横須賀基地で護衛艦「あかぎ」の視察、アコード日本支部の視察もやって日米共同宣言もやったからあとは帰るだけ。帰ったら帰ったで警備も解かれる」
真島が説明するとテレビをつけた。
画面には新しく即位された天皇陛下、皇后さまと謁見するセリス大統領が映っている。
「FBI本部からなんだけどこの韓国人と中国人が入国したらしい」
ヒラーがFAXを見せた。
「誰?」
声をそろえる真島達。
「そいつ知っている。韓国軍の特殊部隊隊員の朴崔紺。中国軍所属のスパイの洪養毛だ」
それを言ったのはライである。
「知り合い?」
ローズが聞いた。
「洪養毛は人間や普通のミュータントを操るのが得意でしゃべるだけで人を操れる。朴崔紺はあらゆるものを武器に造り替えたり爆弾を造ったりできる。能力者じゃないけど爆弾に関してはスペシャリストだ」
説明するライ。
「仲間に接触する気ね」
ハリスが声を低める。
「テロを起こすとしたら大統領が帰国のために日本を離れて警備も解かれる時よね。それが解かれないで継続していたら?」
磯部がひらめいた。
「しかし主要駅と政府関連の施設を全部警備は無理だぞ」
難しい顔をする近松。
「ゲートスクワッドは正式に発表されている。政府に警備を解くフリをしてもらうのはどうだろう?」
ポンと手をたたく頼仁。
「それはいいかも」
うなづくヒラーとハリス。
「僕も手伝う」
頼仁が身を乗り出す。
「ここからは警察の仕事です」
強調する近松。
「・・・はい」
しぶしぶうなづく頼仁。
「僕達は八重干潟で精霊に出会ったんだ」
話を切り替えるダスティ。
「精霊?」
聞き返す真島達。
「ガジュマルの精霊が警告してきた。結界を破壊しようとする者がいるから注意しろという話だった」
ダスティが口を開く。
「精霊の話だと時空侵略者が連れてきたエイリアンがいるらしい。生態はハチやヤゴに似ていて合図があるまで隠れている」
頼仁がわりこむ。
「隠れているじゃ探しようがないわ」
困った顔をするローズ。
「敵が潜水艦か艦船か人間やミュータントに擬態しているのかわからない」
リッグスがわりこむ。
「精霊からこの地図と鍵をもらった」
ダスティは袋から鍵と地図を出した。
「これは僕が精霊に渡したんだ」
あっと思い出す辰巳。
「いつ?」
エミリーが辰巳の肩を思わずつかむ。
「ゴミ捨て場に捨てられる前」
辰巳が答える。
「地図はどこの?」
エミリーが聞いた。
「日本海溝の海底。メンバーだった勅使河原とジョージに手伝ってもらった。それ以上はわからない。この指輪に反応する」
思い出して指輪を出す辰巳。
「それは精霊の指輪じゃない。あなたの体ではもたないわ」
二コールがわりこむ。
「僕の代わりに行ってくれますか?」
辰巳が聞いた。
「いいけど。もし有事になればあなたは戦えない。なら私があなたの代わりに行くけど」
二コールは真顔になる。
「お願いします」
辰巳は頭を下げた。
「客船に潜水艦は見つけられないし武装もないじゃないか」
倉田がわりこむ。
「高レベルの魔術くらい使えるけど」
ムッとするニコール。
「自分の身ぐらい守れる」
ナタリーがわりこむ。
「そのつもりで来ている」
スコットが言う。
「日本海溝はどこも数千メートルの深海だけど一番最深部は八〇〇〇メートル前後で鹿島灘沖の海底は八〇〇〇メートルを超える」
島津が海図を出した。
「潜水艦のミュータントは五〇〇〇メートルの海底でも動けるように訓練されるし自在に動き回れて高速で移動もできる」
瀬戸が海図と地図を見比べる。
「それに中国軍の潜水艦のミュータントは全部が帰ったわけじゃない」
ザカリンがわりこむ。
「帰るフリをして日本の領海スレスレを北上する潜水艦は一〇隻いる」
雅楽代が地図の太平洋を指さす。
「日本海溝の最深部は領海外にあるから絶好のチャンスね」
ローズがわりこむ。
部屋に入ってくるアレックス。
「どうしたのですか?」
頼仁がたずねた。
「沿岸警備隊本部で「地図」が盗まれた」
FAXを見せるアレックス。
「こいつは立花の仲間だ」
あっと声を上げる栗本。
「ベルウッド教官が?」
驚くアレックス。
「沿岸警備隊の練習艦帆船「イーグル」は元々はナチスドイツの船でベルウッド自身もナチスドイツの幹部で時空侵略者を招きいれた連中の仲間だった」
モンゴメリーが指摘する。
「バカな。俺達はその仲間の一人に救助や警備のイロハを教えられたのか」
絶句するアレックス。
「この七十年は時空侵略者が入り込む大きな揺らぎはなかった。だからベルウッドも普通の練習艦として暮らしていたら、日米共同宣言があった。それを聞いて動き出したとみていいだろう」
ジェスロが核心にせまる。
「この数日間でいろんな事が起きている。有事になったら俺達は裏方に回る」
スパイクが腕を組む。
「いろんな根回しが必要だな」
ルカエフがうなづく。
「蜂須賀。これを貸す」
スパイクは大きな武器ケースを出した。
「プラズマ銃だ。戦闘機仕様だけど改良がひつようですね。艦船用にもできるかも」
蜂須賀は目を輝かせる。
「あげるわけじゃない。貸したからな」
念を押すスパイク。
「わかってます」
蜂須賀は答える。
「警視庁に戻りたいならアコードのオスプレイで警視庁に送るけど」
エミリーが言う。
「そうしてくれるとありがたい」
近松とヒラーは顔を見合わせてうなづく。
「今日は横須賀基地に戻って明日横須賀から出発になる」
真島は言った。
翌日。首相官邸
会見室に菅野官房長官が入ってきた。
「韓国と中国に時空侵略者が入っているのは本当ですか?」
「ゲートスクワッドメンバーに西洞宮頼仁さまが入っています。天皇陛下、皇后さまは納得されたのですか?」
「十三歳のアメリカ人少年が入っています。有事の際はどうされるのですか?」
「ゲートスクワッドの召集はかならずといっていいほど世界遺産の宝が関係しています。皇室にも失われた宝というのがあるのですがそれが関わっていますか?」
「北朝鮮の工作員が入っているのですが本当に入れるのですか?」
「韓国政府と中国政府は歩調をお互いに合わせると言っています。韓国政府がすごい反発していますが」
「軍事行動になるのですか?」
矢継ぎ早に記者達が質問した。
「時空侵略者が入っているのは本当です。
ゲートスクワッドメンバーに十三歳のアメリカ人少年と頼仁さまが入っています。伊佐木総理は天皇陛下、皇后さま、上皇さま、上皇后さまに状況の説明に皇居や高輪御所に行っています」
菅野長官は冷静に説明する。
「北朝鮮の工作員は本当に入れるつもりですか。国民は納得しません」
中年の記者が口を開く。
「使えるのもはなんでも使わないと勝ち目はありません。今回の召集と失われた宝の関係性は今は調査中です。軍事行動はあります。歴史上チームは何度も結成されています。時空侵略者を入れたならやる事は一つです、なので陸自部隊を乗せた輸送艦を離島防衛に派遣しました」
淡々と説明する菅野長官。
ざわつく記者達。
「それにより渡航レベル3に引き上げられます。徴用工、慰安婦問題で一〇社以上の日本企業の韓国にある資産を現金化しているので韓国国内にある日本企業は撤退になり、石油やフッ化水素や物資の輸出も停止になります」
冷静に口を開く菅野長官。
「それだと韓国政府は前々から日本人を全部追い出し、防衛を強化すると言っています」
小太りの記者がわりこむ。
「すればいいんじゃないですか。自衛隊に防衛出動を要請を出して警備するだけです。以上で私の話は終わります」
腕時計を見ながら菅野長官は退室した。
その頃。浦賀水道
浮上航行する六隻の潜水艦。
東京湾外湾から接近する三隻の潜水艦。
「ネイサンとトレバーとバルドーじゃない。強襲艦はどうしたの?」
ローズは聞いた。
「知らない。あのいつもの駆逐艦と巡視船がいないじゃないか」
ネイサンは声を低める。
「プリンス頼仁と農薬散布機と不知火、エミリーという人間のハンターと客船のミュータントを乗せてどこに行く?」
トレバーが聞いた。
「乗員を乗せていたら急激な機動はできないよな。領海の外に出ると中国の潜水艦がわんさかいる。晋型潜水艦の程府という奴に気をつけた方がいいよ」
わざと言うバルドー。
「知っているけど。黒海や地中海でよくウロつきながらスパイをしているし、よく別のスパイを乗せているからね」
ザカリンがわりこむ。
「知らないと思った。アメリカとロシアは同盟もしていないし海洋安保もないから今度会ったらコアをえぐるけど」
カリナがロシア語でわりこむ。
「脅しか?おまえの所の潜水艦のミュータントは特に公海や北極海だけでなく太平洋もウロついている命令が出ればいつでも仕留められる」
ネイサンは船体から錨を出してビシッと指をさした。
潜水艦の錨は目立たないようなマッシュルーム型をしている。
「できるのかよ」
ロシア語で挑発するザカリン。
「このガキが・・・」
威嚇音を出すバルドーとトレバー。
「海上保安庁である。そこの潜水艦。航路の邪魔だから外湾でケンカをやってくれないか?」
不意に声をが聞こえて艦首を向けるネイサン達。
接近してくる七隻の巡視船。
「アレックスじゃないか」
ネイサンがクスクス笑う。
「昨日、インド軍とイギリス軍と米軍の潜水艦がやってきたんだろ。スタイナーによろしくな」
わざと言うバルドー。
「こんな連中を相手にしていると時間がなくなるよ」
ロシア語でたんか切るパイン。
「このクソアマが」
ネイサンが声を低める。
無視して浦賀水道を進むローズ達。
「まだ俺達の話は終わってない」
不満をぶつけるバルドー。
「終わったしその時間がもったいない」
しゃらっと言う本宮。
「基地へ帰れば」
わりこむ西山。
「覚えてろよ」
捨てセリフを吐いて三隻は基地の方向へ艦首を向けた。
「・・・ネイサン達と仲がいいと思っていた。潜水艦同士仲がいいわけじゃないですね」
黙っていた頼仁は口を開いた。
「仲がいいわけじゃないわ。ネイサン達は宝を盗む違法ハンターで私はそいつらを取り締まる側だからね」
ローズの声が「うんりゅう」の艦内無線に入ってきた。
発令所に頼仁、ダスティ、エミリー、不知火、ニコールはいる。彼らの目の前にホログラムが現れ、海底の様子を映し出している。
「丸テーブル型のホログラム台はミュータントになってからなの?」
ダスティが聞いた。
「大戦前の潜水艦のミュータントは魔術師協会から「水鏡の台」を借りて情報を共有していた。現在は3Dやホログラムを使っている。集合意識でつながっているからね」
艦内無線に島津の声が聞こえた。
「僕達は戦闘艦だからデータリンクでつながっている。ザカリンやカリナともデータリンクで共有してつながっている状態」
瀬古がわりこむ。
「なんか複雑」
しれっと言うニコール。
「そういえば東京湾出入口から相模湾にかけて「東京大渓谷」が広がっているのをバラエティ番組で見ました」
頼仁があっと思い出す。
「私達が潜っている場所はその海底谷の一部よ」
日紫喜が言う。
タブレット端末を出すダスティ。
東京湾の入り口付近が深い海底の谷になっていて、そこに様々な深海魚が生息しており、
とりわけサメの仲間は四〇種類。世界の海の中でこんなにも多くの種類のサメが集中していること自体珍しいそうだが、それが大都会の目と鼻の先で展開しているというのも、非常に珍しい。東京湾内の水深は比較的浅く富津岬沖には「中の瀬」と呼ばれる台地が広がる。水深が浅いのは観音崎の北までで隣接する久里浜の南沖の海底は急激に深くなっており、水深五〇〇メートル以上に達する海底谷が認められている。
深さ一〇〇〇メートル、長さ四〇キロに及ぶ峡谷で、グランドキャニオンのような不気味な暗黒の世界は「東京キャニオン」とも呼ばれ、そこには極めて独特な生態系が築かれている。未開拓の世界。海底谷のどこにどのような生き物が生息しているか、予測すらできない。水深二〇〇メートル以上の深海と呼ばれる区域は、日の光が届かない暗黒の世界。
どんな生き物がいるのか、全ては謎に包まれている。
「日紫喜さん。君は海の中で泳ぐのを楽しんでいるみたいですね」
頼仁が聞いた。
「海底はよけいな雑音がなくて落ち着く。融合する前は水棲型ミュータントで海の中を泳ぎながら海女をやっていた。両親は漁師と海女で兄弟も漁師をやっていて私は国立音楽院に推薦入学して音楽療法課にいた」
重い口を開く日紫喜。
「推薦入学ってすごいじゃないですか。ミュータントでそれはすごい幸運です」
声を弾ませる島津。
「でもなんで自衛隊に?」
ダスティがわりこむ。
「自分の絶対音感と物体を通り抜ける能力に気づいた自衛隊のスカウトがいて海自の入隊を薦めてきた。ソナーマンとして潜水艦隊に入って気がついたら融合していた」
どこか遠い目をする日紫喜。
「僕の家も漁師で兄が漁師を継いだから僕は両親から自衛隊に入るか東京に出て就職かアコードで働くか選ぶ事になって自衛隊に入隊した」
「僕も農家か自衛隊か就職を選ぶかで自衛隊に入隊した。姉と弟は農家を継いだからね」
島津と瀬古は思い出しながら言う。
「僕達も同じようなものかな。漁師だったからね」
ザカリンがわりこむ。
「私は米海軍に入隊した。先祖も両親や兄弟はアコードや魔術師協会で働いているけど、私はそんな優秀じゃなかったから海軍に入隊した」
ローズが重い口を開く。
「私は客船の機関士になる前は米海軍に入隊していた。先祖も両親も兄弟も優秀な魔術師だったけど私だけ芽がでなかったから海軍に入った。六年でやめて客船の機関士になった。そしたら客船と融合しちゃった」
ニコールは肩をすくめた。
「事情はさまざまね」
エミリーが感心する。
「ネイサンが言っていた程府って誰?」
頼仁が話を切り替える。
「楊一族とは親戚にあたる璃家の一員。だいたい時空遺物がある場所に現れる。性格も楊兄弟にそっくりね」
ローズが答えた。
「こちらアスチュート。カルヴァリ、アナポリス」
艦内無線に入ってくるリードの声。
ソナーやレーダーに三隻の位置が表示される。三隻とも昨日出会っている。
起伏のある渓谷に合流する九隻。
「房総沖のEEZギリギリに程府と一〇隻の潜水艦がウロついている。海上には遼寧と昆明と楊兄弟、金流芯一味がいる。それはリッグス達が追い出す」
スタイナーは映像を送信する。
海上には空母「遼寧」や「セジョンデワン」達がいる。
「リッグス達が超音波やソナーを乱れ打ちして中国の潜水艦を追い払うからそのスキにその目的の海底に行け。僕達が囮になる」
リードが海図を出して説明する。
「合図が来た。全員耳をふさげ」
スタイナーは声を荒げた。
日紫喜たちは船体から二対の鎖を出して耳をふさぐしぐさをした。
つられてダスティ達も耳をふさぐ。
竜巻のような荒れ狂う音や地下鉄の轟音のような音が海底に響き、続いて衝撃波が広がった。続いて中国語の叫び声が聞こえ、海底へ目を剥いて沈んでいく中国軍の潜水艦のミュータント達がソナーに映る。
「ソナー艦。新たにもう一〇隻接近。漢型潜水艦と韓国軍の潜水艦が三隻入っています」
ジャミルが報告する。
「超音波やアクティブソナーで乱れ打ちで音が交錯しているからそう簡単に動けない」
リードはソナーやレーダーに精神を振り向けながら指摘する。
再び轟音が響いて別の方向の一〇隻に命中したのか叫び声が聞こえた。
「行くぞ」
スタイナーが崖から飛び出す。
海底で散開するローズ達。
海底の岩礁や崖に沈んでいく中国軍の潜水艦のミュータント達。普通の船なら沈没だがミュータントはそんな簡単に沈まない。
その間隙を縫うようにスピードを上げて抜ける日紫喜達。
イスにつかまるダスティ達。
「電車より早く走れるのですか?」
頼仁はイスにつかまりながら聞いた。
「特急くらいのスピードは出せるわ。潜水艦のミュータントは高速移動できるように訓練される」
日紫喜が答える。
九隻は海溝へ艦首を向けた。
「レビテト」
ニコールは呪文を唱えた。力ある言葉に応えて頼仁達が浮いた。
「これならケガしないわね」
納得するエミリー。
「深度六〇〇〇メートル・・・七〇〇〇メートル」
ホログラムに海溝の深さが表示される。
「ソナー艦。中国軍の潜水艦一〇隻追跡してきている」
ザカリンが報告する。
「一〇〇キロ離れているからこのまま振り切る」
リードが距離を分析する。
「このまままっすぐよ。精霊の指輪が反応している」
ニコールは手すりにつかまりながら言う。
ダスティと頼仁は時空コンパスを出す。針は海溝の底をさしている。
「そのまままっすぐだよ」
ダスティがわりこむ。
「深度八〇〇〇メートル。もしかしてあの渦潮の中?」
困惑する瀬古。
「精霊がそのままおいでって言っている」
ダスティが戸惑う。
渦潮が危険な物というのは知っている。エンジンの出力が弱いとなかなか抜け出せない。
「敵艦一〇隻接近。距離五十キロ」
ザカリンが報告する。
「そのまま突入してください」
頼仁が叫ぶ。
九隻はそのままのスピードで渦潮に飛び込んだ。せつな、どこかの洞窟のトンネルに入った。
「ここは?」
驚くスタイナーとローズ。
九隻はスピードを落とした。
「魔術が解けた」
気づくエミリーと不知火。
「やったのは精霊ね」
ニコールが言う。
「ソナーにもレーダーにも敵艦はありません。我々しかいないみたいです」
戸惑うジャミル。
「次元ブリッジでつないだのね」
ニコールは映像を見ながら指摘する。
しばらく行くと開けた場所に出る。
浮上する九隻。
「桟橋も上陸できる陸地はないようです」
島津はソナーや赤外線ソナー、レーダーに切り替える。
ハッチから船外に出るダスティ達。
艦内からゴムボートを出す日紫喜。
簡易のタラップからゴムボートに乗り込むダスティ達。
岩壁の穴から白色のクジラと数十頭の白イルカが現れた。
「シロナガスクジラ?シロイルカ?」
困惑するスタイナーとローズ。
「私の中に入ってこないで」
声を荒げる日紫喜。
「代弁者になれっていうのか」
それを言ったのはリードである。
「え?」
「精霊がささやいている」
「僕も聞こえる」
戸惑うダスティと頼仁。
「指輪を外すと私は聞こえない」
困惑するニコール。
「私も聞こえない」
「私もだ」
エミリーと不知火が首を振る。
「僕とカリナに精霊がロシア語で話しかけているんだ」
困惑するザカリンとカリナ。
「僕達は聞こえない」
戸惑う島津、瀬古、ジャミル、スタイナー。
「私は聞こえない」
ローズがわりこむ。
「聞こえる人と聞こえない人がいるけどその両方にわかりやすいように精霊が現れた」
ダスティが周囲を見回す。
ギシギシ・・・メキメキ・・・
日紫喜とリードが変身する「うんりゅう」「アスチュート」の船体から機械や金属が軋む音が聞こえた。
「嫌・・・」
日紫喜は二対の鎖を出して先端を鉤爪に変形させて思わず船体を引っかいた。
リードもくぐくもった声を上げる。
「強く反応しているのは日紫喜とリード?」
驚くジャミル達。
ローズは鉤爪で日紫喜の船体を触った。それはなんとも言えない感触に思わず鉤爪を引っ込めた。
「子供の頃からなの」
「僕もだ」
日紫喜とリードが絶句する。
「ゴムみたい・・」
ひどく驚くローズ。
高張力鋼や合金で出来ている船体がまるで硬質ゴムのように弾力があるのだ。
「精霊が小さい頃から見えたのか?」
スタイナーが聞いた。
「僕は物心ついた頃から妖精や精霊が見えて彼らと話し相手をしていた」
リードが船体を鉤爪で引っかいた。
「小さい頃から魚やクラゲだけでなく動物の声が聞こえた。無害な魔物と話もできる」
日紫喜は重い口を開いた。
「僕やカリナの周囲にもしょっちょうオーブがまとわりついた。動物や無害な魔物だけでなく死者と話と出来たから、両親が不気味がって協会に頼んで追い払った事があるんだ。それっきり現れなくなったけどね」
ザカリンがどこか遠い目をする。
「友達になりたかっただけね。両親が心配したから追い払ったけどまとわりついていた時は楽しかった」
カリナがため息をつく。
「我々はあなた方以外にもゲートスクワッドメンバーで地上や海上にいる精霊と幼い頃から見えて話ができた者に話しかけている」
ニコールは指輪を見ながら困惑しながら代弁した。
鹿島灘沖EEZ
本宮は周囲を見回す。
「どうした?」
西山が聞いた。
「精霊のささやきが聞こえる」
本宮が答えた。
「え?」
「俺にも精霊の声が聞こえる」
それを言ったのはウラジミールである。
「俺もささやき声が聞こえる」
オニールがわりこむ。
「ささやき声がクラシック音楽として私の場合は変換される」
天沢がどこか遠い目をする。
「僕も弱い振動とパステルカラーの音となって変換されている」
杜若が困惑する。
「私も精霊の声が聞こえる」
「私もよ」
雅楽代と京極が声をそろえる。
「ぜんぜんわからない」
真島、倉田、松田、リッグスは声をそろえる。
「私は聞こえない」
平野がわりこむ。
「俺も聞こえない」
困惑する西山。
「聞こえた?」
パインが聞いた。
「聞こえない」
アレックス、奨と周が声をそろえる。
「俺は子供の頃から「オーブ」が見えて精霊が見えて話が出来た。不気味がった両親は協会に頼んで封印したんだ。俺の両親は工場で働き、兄弟はアコードに入隊。俺は海軍に入隊した」
オニールはどこか遠い目をする。
「俺も精霊と遊んでいた事があったから両親は結界の強いモスクワに引っ越したんだ。そのおかげか精霊は現れなくなった」
オニールはどこか遠い目をする。
「邪神ハンター訓練を三歳から受けた俺は韋駄天走りしかできなかったけど精霊と話ができて魔物と話ができたんだ」
話を切り出す本宮。
「雅楽代家と京極家は七十七代続く邪神ハンターの家柄だった。魔物退治や異界送りは当然やっていた。両親や兄弟も親戚も私は精霊や死者、魔物と話ができた」
雅楽代は重い口を開いた。
「私も同じような物ね。精霊の声が聞こえるというのは時間の流れも何かの形で感知できる能力があるの」
納得する京極。
「ぜんぜんわからない」
困惑するリッグスと真島。
地上にいるメンバーにも聞いた方がいいかもよ」
平野が言った。
その頃。東京駅
東京の表玄関とも言うべきターミナル駅で、特に東海道新幹線と東北新幹線の起点となっており、全国の新幹線網における最大の拠点となっている。また、東海道本線や東北本線など主要幹線の起点駅でもある。当駅から乗り換えなしで実に33都道府県と結んでおり、1日当たりの列車発着本数は約三〇〇〇本という日本を代表するターミナル駅の一つである。プラットホームの数は日本一多く、在来線が地上五面一〇線と地下四面八線の合計九面十八線、新幹線が地上五面一〇線、地下鉄は地下一面二線を有しており、面積は東京ドーム約三・六個分に相当する。
赤レンガ造りの丸の内口駅舎は辰野金吾らが設計したもので、一九一四年に竣工、二〇〇三年に国の重要文化財に指定されている。「関東の駅百選」認定駅でもある。
東京駅の構内図をのぞきこむ近松、磯部、ヒラー、ハリス。
「さすがターミナル駅だけあって迷路のような構造だ」
困った顔をするヒラー。
「入国管理局の品川です。朴と洪の二人は成田空港から入国ゲートを通っています。新宿の大久保にはコリアタウンがあり川口には中国人グループが住むエリアがあります」
東京周辺の地図を出して名乗る男性。
「警視庁の近松です」
「同じく磯部です」
「FBIのヒラーです」
「同じくハリスです」
警察手帳を見せる近松たち。
「ゲートスクワッドの事は聞いています。今の所、イスラム過激派メンバーが入国したという情報は入っていません」
品川は声を低めた。
「それはよかった。朴と洪を探そう」
顔写真を渡す近松。
五人はホームに出た。
そこに東海道線の電車が轟音を立てた入ってくる。ドアが開いて外国人観光客や家族連れが出てくる。通勤ラッシュから数時間すぎて比較的車内はすいている。
車内に入る近松と磯辺、品川。
向かいの電車の車内に入るヒラーとハリス。
座席に座る男性。
その男性と目が合う近松。
「朴崔紺ですね。入国管理局の品川・・・」
品川は手帳を見せた。しかし最後まで言えなかった。朴と呼ばれた男に蹴りとばされ、ひっくり返る品川。
朴は壁を蹴り手すりをつかみドロップキックする。
近松は座席にたたきつけられた。
どよめく乗客達。
朴はつり革をつかんで飛び蹴り。
すんでのところでかわす磯辺。
「ぬあああ!!」
朴は杖の連続突きを繰り出す。
磯部はとっさに乗客が持っていたサーフボードをつかんだ。杖の連続突きで穴が開いた。
朴の連続蹴り。
磯部は受け払いながら飛び退く。
朴の蹴りは電車の窓ガラスを蹴り割った。
向かいの電車の窓が割れてホームに落ちる中年の男性。窓から飛び出すハリスとヒラー。
朴は両手から鉤爪が生えた。その鉤爪で連続でなぎ払った。
とっさに上体をそらす磯辺。
朴の鉤爪で車内の壁がえぐれ、穴が開いた。
飛び蹴りする近松。
壁に激突する朴。
振り向きざまに傘をつかみ突く朴。
近松はすんでのところでかわす。
身構える朴。唐突に目を剥いて倒れた。
見ると首筋に針が刺さっている。
「麻酔銃です」
品川は言った。
同時刻。海底
「ここはエネルギーが満ちている」
リードはうれしそうに言う。
「エネルギー?」
聞き返すジャミル。
「僕は生物だけでなくマシンミュータントのエネルギーを奪ったり、反対に流れを変えて与えたり操ることもできてエネルギー弾で攻撃もできる。精霊の声が聞こえるというのはなんらかの形で時空の揺らぎを感知しているんだ。僕も感知するとゴムみたいにへこむ」
リードが答える。
「仲間がいたのね」
それを言ったのはカリナである。
「それもNATOや米軍側にね」
不満そうなザカリン。
「我々の声が聞こえる者達に警告する。間もなく戦いが始まる。長い戦いになる」
クジラが口を開いた。
「それは世界情勢を見てもわかるし、フィランとシュランという時空侵略者が入ってきたらやる事は一つだ」
スタイナーは核心にせまる。
「中国と韓国は侵攻計画を立てて結界を破壊する作戦がある」
ローズがわりこむ。
「フィランとシュランが連れてきたエイリアンの気配が見えない。感知できない」
訴えるように言うイルカ。
「それを我々も探している。そこには決まって中国軍の基地や中継地だ。法律をうまく利用して接近はできない」
ジャミルがヒンディ語で語気を強める。
「彼らは頭がいいですよ。うまく擬態している」
ヒンディ語で答えるクジラ。
「エイリアンがなんであれ私達はそのために集まったのよ」
たたみかける日紫喜。
「ならこれを奴らに奪われてはいけない」
クジラははっきり言う。
二頭のイルカが口にくわえて近づく。
袋から出す頼仁とダスティ。
「これは紺碧の眼だ」
頼仁は叫んだ。
「こっちは琥珀球で地図?になっている」
ダスティが目を丸くする。
「今から七百八十三年前のゲートスクワッドのメンバーだったという貴族がやってきて我々に託しました」
クジラが重い口を開く。
「それって鎌倉時代で元寇の襲来があった時期と一致する!」
興奮しながらジャミルとカリナをおしのける島津。
「歴史的な大発見です!!」
声を弾ませる瀬古。
「皇室の宝だ!!」
ダスティが声を荒げる。
「そうだった」
正気に戻る島津と瀬古。
「ここの空間は間もなく消滅します。あの穴を出ると東京大渓谷です」
クジラは促した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます