第2話 ゲートスクワッド結成

 「警視庁の近松です」

 「同じく磯辺です」

 「FBIのヒラーです」

 「同じくハリスです」

 四人は警察手帳を五人のウラジミール達五人に見せた。

 「僕達は何も悪い事はしていない」

 ザカリンが声を低める。

 「アコードのエミリーです。ルカエフ・ブルガーという旧ソ連の旧式潜水艦D型1号艦と融合しているミュータントを探している。彼は勅使河原教官やジョージ教官とは知り合いだったけど連絡がとれなくなっているから探している」

 写真を出すエミリー。

 「ルカエフ教官は僕達の・・・ロシア軍の潜水艦のミュータントは全員彼に鍛えられた」

 ザカリンは口を開いた。

 「私達もルカエフ教官を探していた」

 わりこむカリナ。

 「彼は邪神ハンターで俺達はハンター訓練で彼から一から教えられた」

 オニールが口を開いた。

 「彼は邪神ハンターとしても潜水艦としても優秀だ」

 それを言ったのはジェスロである。

 振り向くウラジミール達。

 「ルカエフとは先の大戦で一緒になった事がある。彼は触れた相手のパワーを奪う能力者だ」

 スパイクが声を低める。

 「彼にはロシア軍の艦船のミュータントは勝てなかった。気がついたら彼に触られてパワーを一時的に奪われて動けなくなる」

 ウラジミールが遠い目をする。

 「ルカエフから僕に手紙が届いた」

 思い出したようにわりこむ辰巳。

 「手紙?」

 身を乗り出すパインとカリナ。

 「僕は捨てられてから記憶がないの。でも僕と彼は重要な物を隠すのが任務の内容の仕事に関わっていたんだけれどそれ以上は思い出せない」

 困った顔をする辰巳。

 「それは「紺碧の眼」と「虹の眼」でしょ」

 身を乗り出すダスティと頼仁。

 振り向く真島達。

 「ルカエフ教官は時々昔話をするの。先の大戦でのゲートスクワッドメンバーとしてナチスドイツと戦った事やガーランド元理事長や米軍の戦闘機の事も話していた。とても彼はうれしそうだった。そしてクロウ・タイタスと一緒に仕事した事や辰巳博士の事も話していた」

 カリナがおぼろげながら思い出す。

 「それは私も聞いた。ハンター訓練を彼から受けたからね。彼は思い出話を時々するわ。年のせいで潜水艦としてもハンターとしても全盛期の能力が出せなくなってきている事も話した」

 パインがわりこむ。

 「その時は気にしなかったけど大事な時空異物を隠す任務をしていた事をある日しゃべった。二つの宝だけでなく世界の王室や世界遺産には先人たちが隠した時空の遺物を隠されているからそれを守る任務がやがてやってくるという話だった」

 オニールが説明する。

 「彼はその手がかりを東シナ海に埋めたとか沖縄かどっかの精霊に託したとか言っていた」

 思い出しながら言うウラジミール。

 「僕も聞いたんだ。それが悪人の手に渡れば世界は終わると」

 ザカリンが口を開く。

 「東シナ海は広いし、沖縄の精霊って?」

 真島がわりこむ。

 「特に東シナ海や沖縄近海は中国海警局だけでなく中国軍の潜水艦のミュータントが出没する」

 日紫喜がわりこむ。

 「最近では韓国の潜水艦が出没する」

 島津が口をはさむ。

 「韓国の潜水艦は潜水もままならないようなポンコツばかりよ」

 ローズがわりこむ。

 「沖縄にはガジュマルの精霊がいる」

 本宮があっと思い出す。

 「でもどこの洞窟かはわからないわ」

 平野が言う。

 「丁度ここにはロシア警備艇と海保と台湾の巡視船のミュータントがいる」

 アレックスが笑みを浮かべる。

 「僕も連れてって」

 辰巳がわりこむ。

 「僕と頼仁がいなければその手がかりは反応しないと思う」

 真顔になるダスティ。

 「あまりそれはオススメできない。中国海警船は尖閣諸島だけでなく東シナ海、日本海に出没する。日本海には韓国海洋警察の警備艦もウロつく。危険だと判断したら保安部に戻る」

 本宮はうなづく。

 「明日出発になる」

 西山が言った。



 翌日。石垣島海上保安部

 第十一管区海上保安本部は、沖縄県の区域及びその沿岸水域(主に沖縄地方の東シナ海及び太平洋)を管轄範囲とする、海上保安庁の管区海上保安本部の一つである。

最前線となる那覇市の第十一管区海上保安本部の石垣海上保安部を中心に、尖閣専従部隊が創設。領海侵入を繰り返す中国監視船との“長期戦”に備えていた。

ヘリポートにアコードのオスプレイが着陸する。アコードのオスプレイはプロペラではなくジェットエンジンが搭載されている。

機外に出てくるダスティ、頼仁、辰巳、西山、本宮、平野、アレックス、パイン、奨遜和、周碌英が降りてきた。

「ベラナ達はどこにいるんだろう?」

ダスティが周囲を見回す。

「彼女達と真島さんたちは沖縄の辺野古基地にいる」

本宮がわりこむ。

「そうなんだ」

納得するダスティ。

沖縄の七五%は在日米軍基地で占められているのは知っている。辺野古基地は自衛隊と米軍の共同使用になっていた。

「尖閣専従部隊の大型巡視船は十四隻中一〇隻がミュータントなんですね」

頼仁は桟橋にいる巡視船を見ながら言う。

「常に二隻で組んで行動する。海警船も大型巡視船が多いからね」

西山が説明する。

「ねえ飛んじゃダメ?」

ダスティが聞いた。

「石垣市の許可は出ていない」

きっぱり言う平野。

「尖閣諸島の近くまで行ってくれる」

それを言ったのは辰巳である。

「かまわない。近くまでなら行ける」

西山はうなづく。

桟橋から飛び込む西山、本宮、平野、アレックス、パイン、奨と周。緑色の蛍光とともに巡視船に変身する。船橋の窓に二つの黄金色の光が灯っていた。

巡視船「やしま」全長一三〇メートル。五二〇〇トン。巡視船「つるぎ」「かりば」全長五十メートル。二〇〇トン前後。白地の船体に船首に横向きの「S」をあしらった紺色の文字が入っている。

巡視船バーソルフ。全長一二七メートル。四〇〇〇トン前後。白地の船体に船首に赤色の太いラインと細いラインが入る。

台湾の巡視船は白地の船体に船首に青とオレンジのラインの中に白抜きのTが入っている。

ロシア国境警備艦「ヴァルガ」船橋構造物は白色で船体は紺色。船首に赤色と白色のラインが入っている。

台湾とロシアの巡視船は全長は九〇メートル位で一〇〇〇トン型と大きさは変わらない。

平野が変身する巡視船「かりば」に乗り込むダスティ達。

離岸する七隻。

「西山隊長」

接近してくる「あきつしま」「くにさき」

「あきつしま」は「しきしま」型巡視船の後継で全長一五〇メートル。六五〇〇トン。

「くにさき」は全長九八メートル。一二〇〇トン。

「秋山、馬場。どうした?」

西山が聞いた。

「ゲートスクワッドが結成されたのは本当ですか?」

馬場が変身する大型巡視船「くにさき」が聞いた。

「まだ政府からの正式な発表は出ていない」

西山が答えた。

「海洋安保の関係でアメリカ沿岸警備隊の巡視船がいるのはわかります。なんでロシアの警備艦と台湾の巡視船がいるのですか?」

「あきつしま」に変身する秋山は不満をぶつけた。

「なんか問題でも?」

流暢な日本語で聞くパイン。

「問題が大ありじゃん」

馬場がしれっと言う。

「台湾の巡視船のミュータントは平気で漁船を周辺海域に入れる。尖閣諸島沖でも集団でやってきた」

秋山は声を低める。

「僕達は調査でいる。中国海警船とは違う」

奨が語気を強める。

「信用できない」

馬場がわりこむ。船体から二対の太い鎖を出した。連接式の金属の触手だが見た目が鎖に見えるから鎖なのである。大型船ほ大木のように太く小型船ほど公園にあるような鎖のように細い。

シャアァァ!!

向き直り威嚇音を出す四隻。

「ここでケンカするなら家に帰れば」

アレックスが声を荒げる。

ハタッとやめる四隻。

「覚えてろよ」

馬場と秋山は離れた。

七隻は港を出た。

 「台湾の巡視船とは仲がいいわけではないんですね」

 おそるおそる聞くダスティ。

 「仲がいいわけではない。領海問題や領土問題を抱えているからね」

 船内無線で本宮が答える。

 「特に尖閣諸島は資源が眠っていて中国はそれを狙っている。歴史的に見ても中国のものだという歴史はない。ほっといたら南シナ海のようになる」

 西山が船内無線で説明する。

 「中国海警船は台湾でも問題になっていて漁船軍団を使って東シナ海に出没する。そして漁場を平気で荒らす。中国沿岸の漁場が枯渇しているからやってくる」

 奨が重い口を開いた。

 「最近は韓国漁船まで現れて養殖場を荒らす。やっていることは泥棒と変わらない」

 周が言う。

 「そんな事が起きているのは初耳よ」

 平野がわりこむ。

 「どっちもやっている事は荒っぽい。他国の漁場まで出向いて荒らす。この間は中国漁船がアルゼンチン沖までやってきて荒らしていたからアルゼンチンの沿岸警備隊によって追い払われた」

 奨が重い口を開く。

 「なんとかしないといけないけど彼らは法律をうまく使って逃げ回っているわね」

 パインがわりこむ。

 「そんな状態だったんだ。知らなかった」

 頼仁はうつむく。

 「マスコミは都合のいい事しかしゃべらない。政府も隠している部分はある」

 西山がわりこむ。

 「いずれにしても僕達は何が起きているのか見学に来たんだ」

 ダスティは真顔で言った。


 

 一時間後。

 尖閣諸島沖二キロに三隻の中国の大型海警船がいた。船橋の窓に二つの黄金色の輝く二つの光が灯っている。白地の船体に船首に赤いラインと四本のラインが入っている。

 「海上保安庁である。そこの三隻。出て行ってもらう」

 西山は中国語で警告した。

 「ここは中国の領海だ」

 五千トン型海警船が声を低める。

 「金流芯と孫何進と孫河西兄妹だろ」

 アレックスが指摘する。

 「いつもは「やしま」「つるぎ」「かりば」だけでなく他の海保の巡視船が見回りに来るのに今日はアメリカだけでなくなんでロシア、台湾までいる?」

 金流芯と呼ばれた五千トン型海警船が怪しむ。

 「邪魔するな」

 声をそろえる三千トン型海警船。孫兄妹である。

 「邪魔するのは当たり前よ。あんたの所の潜水艦はロシアの領海をギリギリかすめる形でウロついているね」

 パインが核心にせまる。

 「そんなものは知らない」

 金流芯がそっけなく言う。

 「知らないとでも思った?あんたの所の潜水艦は日本海だけでなく黒海でもウロついている。領海に入ればコアをえぐる」

 ドスの利いた声のパイン。

 「まだそうなってないわ」

 孫河西が声を低める。

 威嚇音を出す二隻。

 「俺達はケンカしに来たわけじゃない」

 アレックスが制止する。

 「尖閣専従部隊なんていずれは蹴散らしてやる」

 孫何進が中国語で悪態をつく。

 ロシア語で悪態をつくパイン。

 「台湾でもおまえが連れてくる漁船軍団は養殖場を荒らすよな。泥棒だろ」

 奨がわりこむ。

 「黙れよ。それに今日は珍しいお客を乗せているんだな。農薬散布機と人間が」

 わざと言う金流芯。

 黙っているダスティと頼仁。

 「ガーランドはゲートスクワッドを国連に要請しているそうじゃないか。そんな事はしなくても何も起きていない」

 金流芯は話を切り替える。

 「起きているじゃないか」

 声を低める西山。

 「時空侵略者が入り込んでいるのがわからないだろ?」

 挑発する周。

 「黙れよ。もうすぐショータイムの時間だ」

 金流芯はしゃらっと言う。

 「ショータイム?」

 聞き返すアレックスと本宮。

 「楽しみにしてくれるとありがたいね」

 クスクス笑う金流芯。

 「楽しむって何を?」

 パインがわりこむ。

 「アメリカ大統領が来日するんだろ。でも中国はいっこうに構わない。見学するだけ」

 孫河西がわりこむ。

 「いずれはアメリカと太平洋を割譲するんだ。アジアやヨーロッパも台湾もみんな併合して全部中国になるんだよ」

 孫何進が自慢げに言う。

 どっと笑い出すアレックス達。

 「本当に大笑いね。パクリしかできないくせに」

 パインがしれっと言う。

 「併合なんてされてたまるか!!」

 奨と周が声を荒げる。

 「みんな併合って他の国はどうするんだよ」

 「そんな野望なんか頓挫させてやるわ」

 本宮と平野がわりこむ。

 「どうかな」

 中国語で悪態をつく金流芯。

 「おまえのところの主席は韓国の大統領と会うんだろ。会うのがロクでもない大統領だとやりにくいよな」

 西山が話を切り替える。

 「まったくだ」

 あっさり言う金流芯。

 「仲がいいと思った」

 わざと言う本宮。

 「韓国とはぜんぜん一緒じゃないし、嘘つきで平気で約束は破るから中国も困っている。でも使いようによっては使えるし、用途はいろいろだよ」

 自慢げに言う金流芯。

 「盾に使うとか小間使いとか?」

 アレックスがわりこむ。

 「アメリカ沿岸警備隊は韓国の釜山とかいるのは知っている。韓国海洋警察も韓国軍も信用できないぜ」

 わざとらしく言う金流芯。

 「じゃあなんで日本海では一緒にいる?」

 核心にせまるアレックス。

 「あいつらは使いやすい。それだけだ」

 金流芯はクスクス笑う。

 威嚇音を出す本宮と平野。

 「ショータイムの大統領が来るよ。中国にはしょうもない大統領が来るから警備に帰る」

 笑いながら金流芯は孫兄妹を連れて去って行った。

 「何がショータイムだよ」

 奨が中国語で悪態をつく。

 七隻は尖閣諸島沖を離れた。

 「・・あんな状態になっているなんて知らなかった」

 ダスティがうつむく。

 「日本と中国の問題だからね。最近は漁船軍団を引き連れて小笠原周辺に多く出没する。

狙いは赤サンゴなんだけど時空異変が起こると虹色のサンゴが現れるらしいからそれを狙ってやってくる」

 西山が説明する。

 「確か虹の眼も虹色のサンゴで出来ている」

 あっと思い出す頼仁。

 「保安部に戻ったら小笠原沖にも行ってみよう」

 西山が言った。


 石垣島に接近する七隻。海上保安部のある港は目と鼻の先である。

 「米軍の強襲艦がやってくる」

 本宮が指摘する。

 「おかしいな。この近海を航行するのは聞いていない」

 アレックスが怪しむ。

 スピードを落とす七隻。

 強襲艦「エセックス」ワスプ級強襲艦の二番艦である。全長二五七メートル。四万トン。艦橋の窓に二つの黄金色の光が灯る。

 「アリス。第六艦隊にいるのになんでここにいる」

 アレックスが聞いた。

 「散歩」

 しゃらっと女性の声で答えるアリス。

 「散歩であるわけないじゃない」

 ロシア語で指摘するパイン。

 「なんで潜水艦まで連れている?」

 アレックスは船体から二対の鎖を出す。

 「なんでって巡視船だけだからね」

 アリスは汽笛を鳴らした。

 浮上してくる三隻の潜水艦。

 オハイオ級潜水艦。全長一七〇メートル。一六七〇〇トン前後。戦略核ミサイルも搭載していたが現在では通常ミサイルになっている。彼と一緒にいるシーウルフ級、ロサンゼルス級潜水艦も全長は一〇七メートル前後の大型艦である。艦橋の窓に黄金色の二つの光が灯っていた。

 二対の鎖を出して身構える西山達。

 「ネイサン。バルドー。トレバー。なんでいる?大西洋艦隊司令部から異動になったのは聞いていない」

 アレックスは声を低める。

 「ガーランドはゲートスクワッドの召集を要請した。なんで入れてくれない?」

 ネイサンは太い声で聞いた。

 「なんで?理由は違法ハンターだからよ。そこの強襲艦とあんたとお供の潜水艦は魔術師協会から「破門」の通告をされて違法ハンターの登録になっている。誰の依頼を受けて世界遺産や他国の所有する宝を狙っている」

 はっきり指摘するパイン。

 「なんか勘違いしてないか。俺達は協力を求めて来ている」

 バルドーがよく通る声で言う。

 「ただの思い違いだし僕達は優秀な人材も求めている。それに本宮だっけ?」

 トレバーがクスクス笑う。

 「なんだよ」

 身構える本宮。

 「船で韋駄天走りできるのは君しかいない。それに潜水艦「うんりゅう」やイージス艦「あしがら」「まや」と三沢基地のF-35のミュータントはオッドアイで魔術師や邪神ハンターが訓練しないとできない能力を最初から持っている。それにロシア艦にもオッドアイがいてさんざん作戦を邪魔してきたアクラ級潜水艦の双子がいる。イギリスからは英王室に代々仕える魔術師やインドの空母は暗黒魔術が使える」

 トレバーは笑いながら説明する。

 「なんで知っている?」

 奨と周が聞いた。

 「なんでって話題になっているからだよ。優秀な人材だし米軍もほしいからね」

 バルドーがしゃらっと言う。

 「ダスティとプリンス頼仁。俺達に協力してくれないか?」

 ネイサンが聞いた。

 「やだ」

 声をそろえるダスティと頼仁。

 「ここから逃げられないわよ」

 ドスの利いた声のアリス。

 「潜水艦が姿を現したらダメだよな」

 不意に鋭い声が聞こえてテレポートしてくる護衛艦「せとぎり」「はるさめ」「みょうこう」「あしがら」「まや」そして潜水艦「ニューハンプシャー」と「うんりゅう」「くろしお」「みちしお」と空母「フラッグ」

 空母「フラッグ」二ミッツ級空母の九番艦。全長三三三メートル。十万トン。

 護衛艦「せとぎり」全長一三七メートル。三五五〇トン。

 護衛艦「はるさめ」「むらさめ」型の二番艦。一五一メートル。四五五〇トン。

 イージス艦「みょうこう」「こんごう」型の四番艦。一六一メートル。七二五〇トン。

 イージス艦「あしがら」全長一六五メートル。七七〇〇トン。

 「まや」型の一番艦「まや」全長一七〇メートル。八二〇〇トン。

 潜水艦「うんりゅう」「そうりゅう」型の二番艦。全長八四メートル。二九〇〇トン。

 潜水艦「みちしお」「くろしお」「おやしお」型潜水艦。全長八二メートル。二七五〇トン。

 潜水艦バージニア級「ニューハンプシャー」全長一一四メートル。七八〇〇トン。

 「ひさしぶりだな。アリス。ネイサン」

 リッグスが声をかけた。

 「大西洋艦隊司令部からなぜか太平洋艦隊に移動になったのね。誰にしてもらったの?」

 ローズは聞いた。

 「誰でもいいじゃないか」

 トレバーが答えた。

 「ローズ。僕とヨリを戻さないか?」

 誘うバルドー。

 「今更?」

 ローズが聞き返す。

 「なんでっていい機会じゃないか」

 当然のように言うバルドー。

 「あんたはバカ?五股も六股も彼女作って浮気したのは誰?そこのロサンゼルス級潜水艦は奥さんがいるのに浮気していたし、ロシアの潜水艦に追尾されていたし、そこのオハイオ級潜水艦は世界遺産から宝物を持ち出そうとしたよね」

 ローズは声を張り上げた。

 「いや違う・・・」

 しどろもどろになる三隻。

 あきれてため息をつくアリスとリッグス。

 「おまえ達に依頼してきたのは誰だ?」

 声を低めるリッグス。

 「それはどうだっていいだろ」

 ネイサンは英語で悪態をつく。

 「おかしいよね。大西洋艦隊や第六艦隊から第七艦隊と太平洋艦隊に異動って」

 ローズが詰め寄る。

 「オッドアイに興味があるみたいだけどオッドアイを集めてどうするの?」

 ダスティは「かりば」の船橋ウイングから顔を出した。

 「仮に集めたとしても扱えない」

 船橋ウイングから顔を出す頼仁。

 「なんでオッドアイで最初からその能力が使えるのか考えた事あるのか?いつもベラナと横山とグロリアとかいう戦闘機のミュータントがお守りについていてそこのプリンスは不知火という護衛と黒沢という執事がついている。そして第五福竜丸は重度の障害者と変わらない」

 ネイサンはビシッと鎖で指さした。

 黙ってしまうダスティと頼仁。

 「子供だから当たり前だし、頼仁さまは皇族の継承第六位だ。護衛や皇宮護衛官がいるのは当たり前だろ」

 瀬古が指摘する。

 「辰巳博士は事件に巻き込まれて障害者になった。生活介助人がいるのは当たり前だ」

 はっきり言う島津。

 「瀬古と島津と日紫喜だっけ。米軍に来ないか?実戦を戦える」

 誘うバルドー。

 「雅楽代と京極だっけ。自衛隊じゃあ実戦はつめないだろ」

 ネイサンが誘う。

 「誘ってどうするんだよ」

 リッグスがわりこむ。

 「司令部に帰れば」

 突き放すように言うローズ。

 「覚えてろよ。かならずいただくさ」

 ネイサンはそう言うと他の三隻と一緒にテレポートしていった。


 

 一時間後。海上自衛隊辺野古基地

 「・・・あの四隻はなんだ?」

 真島は単刀直入に聞いた。

 「あの四人は違法なハンターだ」

 それを答えたのはベラナだった。

 振り向くダスティ達。

 「チャックというミグ29やエイブラムスM-1戦車とメルカバ戦車のミュータントと組んで遺跡荒らしをする連中よ」

 グロリアが重い口を開く。

 「私とグロリアは大西洋地域で遺跡荒らしをする連中の監視をやっていてあとから横田がくわわって一緒に監視や取締りをしていた」

 ベラナは大西洋地域の地図を出した。

 「そこにいたのがあの四隻とチャックと戦車二両」

 横田が写真を出した。

 「私はトレバーとバルドーの愛人だった。遺跡荒らしを誘われたけど断った」

 二コールが思い出す。

 「私はネイサンの愛人だった」

 ナタリーがわりこむ。

 「誰でも寝る高級娼婦」

 ロシア語で言うカリナ。

 「ちがうわ。あいつらから誘ってきた」

 ムッとする二コールとナタリー。

 あきれかえるスコット。

 「チャックや戦車二両も有名な遺跡荒らしで宝物も盗る違法ハンターで有名だ。世界の王室はそういった連中も監視している」

 それを言ったのはモンゴメリーである。

 「特にネイサンは任務のついでに遺跡荒らしを運ぶ事もやる事で有名よ」

 ローズがわりこむ。

 「軍にバレないのはそれをもみけしてくれる上官か政府高官がいるというウワサだ」

 リッグスは核心にせまる。

 「さっそく動き出したようね」

 それを言ったのは雅楽代である。

 「僕は日本に来ない方がよかったのでしょうか?」

 ダスティはうつむいた。

 「仮に来なくても事件は起こっている」

 ローランがはっきり言う。

 「今まで隠れていた奴らが動き出しただけ。インド政府も遺跡や遺物を違法ハンターを送ってくる黒幕を探していた」

 マッシュがわりこむ。

 「アメリカ政府にコネがあって顔が利いて軍に口出しできる黒幕は相当な権力者か大金持ちだよ」

 ノースがわりこむ。

 「僕を囮にすればその黒幕は出てきますか」

 それを言ったのは頼仁である。

 「それは危険だよ。尖閣諸島沖に行ったら金流芯達が現れて石垣島に帰ったらあの四隻がやってきた。次に現れるのは戦車二両かチャックかだな」

 フォックスが口を開く。

 「または韓国軍か中国軍の遼寧かだろ」

 本宮がわりこむ。

 「またネイサン達が現れたら逃げた方がいいの?」

 ダスティが聞いた。

 「チャックはともかくあの四隻は高レベルの魔術を使いこなす。潜水艦のミュータントは海底でも邪神やその眷属、魔物と戦えるように訓練されている。ネイサンはあらゆるところから鎖を出して縛る能力者よ」

 ローズがさとすように言う。

 「それじゃあ逃げるのは不可能か」

 レックスがしれっと言う。

 「二両の戦車も高レベルの魔術を使う邪神ハンターだ。出会ったら逃げるか、捕まったら抵抗しないこと」

 言い聞かせるリッグス。

 うなづくダスティと頼仁。

 「やけに守ろうとしているのはなぜ?」

 ベラナがわりこむ。

 「俺とローズはガーランドから頼まれた。理由は違法ハンターではないこと。あいつらから嫌われている事」

 肩をすくめるリッグス。

 「ガーランドはモスクワにも来た。出発する時にやってきてゲートスクワッドメンバーの時だけ守るように頼んできた」

 ウラジミールが重い口を開く。

 「もちろんロシア国内にいる時だって守る。そのつもりで来ているし、マシンミュータントがゲートスクワッドに選ばれるのはとても名誉な事だ」

 真顔になるオニール。

 「時空侵略者を野放しにすればロシアだけでなく人類は奴隷の道が待っている」

 ガザリンがわりこむ。

 「そんなのは嫌だから一緒に行く」

 カリナがうなづく。

 「それはこっちだって同じだ」

 真島がわりこむ。

 「これもなにかの縁ね」

 京極がわりこむ。

 「二コールとナタリーとスコットは?」

 真島が聞いた。

 「私達は氷川丸から頼まれたのよ」

 二コールが答えた。

 「氷川丸って横浜港の?」

 聞き返す頼仁とダスティ。

 「彼女はミュータントよ。名前は綾瀬美代。日本にいる旅客船のミュータントのリーダーをしている。アメリカにいる初代クイーンメリーと初代クイーンエリザベス。ドイツのドゥロス・フォス号はアメリカとヨーロッパでの旅客船達のリーダーなの」

 ナタリーが口を開く。

 「福竜丸が記憶がなくなってから後見人になった。彼女には生活能力がないからね」

 スコットがわりこむ。

 「でも彼女の体は日常生活に支障が出ているし、戦えない」

 カリナがわりこむ。

 「そんなのはわかっている。紺碧の眼や虹の眼の騒動は彼女やルカエフ、ジョージ、勅使河原教官がからんでいる」

 スコットが声を低める。

 「とりこみ中悪いけど。拘置所に入れられていたチャックが出所した」

 ヒラーの顔がくもる。

 「刑務所のままじゃないんだ」

 ダスティがわりこむ。

 「警視庁からだけど行方不明のロシア人に似た男性が「おがさわら丸」に乗船したという情報が来たんだ。小笠原に行きますか?」

 近松が聞いた。

 「行きたい」

 声をそろえるウラジミール、オニール。

 「僕達も行く」

 身を乗り出すザカリンやカリナ。

 「海上自衛隊と合同演習という名目で行こう。その方が騒がれない」

 真島がうなづく。

 「僕も連れてって」

 辰巳がわりこむ。

 「構わない」

 真島が言った。

 

 

 

  「新しいニュースが入ってきました」

 女性アナウンサーが口を開く。

 画面が変わり横田基地に着陸した大統領専用機から出てくる女性大統領とSPがタラップを降りてくる。

 「セリス大統領が来日しました」

 男性アナウンサーが報告する。

 画面が変わり、大統領専用ヘリに乗り込む大統領の様子や首相官邸に着いてそのままゴルフして大相撲観戦をしている様子が映し出される。

 「セリス大統領は大相撲だけでなくゴルフも好きであるとか」

 女性アナウンサーが聞いた。

 「そのようですね。一番最初に訪問した伊佐木総理は金色のゴルフクラブをプレゼントしてアメリカでの首脳会談で一緒にゴルフするほどのゴルフ好きです」

 専門家の男性が答える。

 「大統領になる前は現役の邪神ハンターであり魔術師協会の理事長や邪神ハンター協会の局長を歴任。同時に実業家でもあります。不動産屋を代々経営していて世界のお金持ち一〇〇人にも入っています」

 くだんの専門家はつけくわえた。

 「大統領が来日した目的はなんでしょうか」

 女性アナウンサーが聞いた。

 「八年前の東日本大震災が発生して五日後に南極点に七十二年ぶりに「時空の揺らぎ」が発生。それを最初に通告したのは昭和基地です。南極に派遣される観測隊には邪神ハンターや魔術師、アコードの隊員が含まれます。それは日本だけでなく南極に基地を置く各国の基地ではそうなっています。そして小さな時空の異変が起きておりとりわけ日本海周辺と東シナ海、南シナ海では連続して発生。日本政府はアジア沿岸同盟という組織をつくりました。これはアジアの国々とTPPの加盟国にインドと台湾が加盟していますが韓国と中国は入っていません。理由は時空の異変の中心が韓国と中国で起きています。それの話し合いで来日しています」

 くだんの専門家は写真を切り替えながら説明した。

 「中国と韓国は反発しそうですね」

 懸念する男性アナウンサー。

 「セリス大統領が来日する今日に合わせて中国の龍主席と韓国の崔大統領の首脳会談が北京で開催されます」

 写真を切り替える専門家。

 「なんか陣営が別れましたね」

 わりこむ女性アナウンサー。

 「セリス大統領と伊佐木総理は明日、首脳会談をするのですが韓国と中国の会談も明日行なわれます」

 専門家が口を開く。

 「ガーランド元理事長が国連に「ゲートスクワッド」の召集の要請を出しています」

 女性アナウンサーが話を切り替える。

 「ゲートスクワッドとは?」

 男性アナウンサーが聞いた。

 「ゲートスクワッドは歴史上何度も結成されています。丁度「映画のアベンジャーズやXメン」のような物と思ってください。最初に結成を要請したのは五千年前の古代エジプト王朝のメナス王と言われています。最近になってサッカラで日本とエジプトの共同調査で新たな遺跡が発掘され、そこのレリーフにはいろんな国から来た特殊能力者が集まり地球の危機を救ったとあります。そして太平洋戦争や第一次世界大戦、日露戦争でも記録が残っています。日露戦争ではロシア帝国に時空侵略者が入り込み、第一次世界大戦はドイツに。太平洋戦争ではナチスドイツ、日本、イタリアに入り込み、連合国側から要請が出ていました」

 画面が切り替わり資料や写真が出る。

 「すごいですね。初耳です」

 驚く女性アナウンサー。

 「今度は日米共同宣言で正式に発表されると見ています。ガーランド元理事長が来日しているので何もないとは考えられません」

 専門家は言った。



 三時間後。

 小笠原諸島父島にあるヘリポートにアコードのオスプレイが着陸した。

 機外に出るダスティと頼仁、辰巳。

 ダスティは時空コンパスを出した。

 ダスティ、頼仁、辰巳は早歩きで港に近づく。港には大型フェリー「おがさわら丸」が入港して着岸するのが見えた。

 ついていく近松、磯部、ハリス、ヒラーとエミリー。

 「本当にルカエフ教官はいるのでしょうか」

 ラフな格好をした四人のロシア人が聞いた。

 「そうだといいけどね」

 磯辺は乗客名簿を見ながら答える。

 おがさわら丸の桟橋から続々と降りてくる乗客達。

 「ウラジミールさん。ルカエフさんはいるよ。乗っている」

 ダスティは真顔になる。時空コンパスの針はおがさわら丸を指している。

 黙ったままのウラジミール達。

 他の乗客達に交じって桟橋から岸壁に上陸する二人の男性。

 「日本人?」

 首をかしげるオニールとウラジミール。

 「ちがうな。中国人か?」

 怪しむヒラー。

 二人の男性が近づく。

 「あなたがルカエフさんですね。ジョージさんや勅使河原さんのパンくずを追って来ました」

 ダスティは翻訳機を出して口を開く。しゃべった内容がロシア語に変換される。

 「君がダスティ君か。ガーランドが言っていた少年か。隣りはプリンス頼仁と辰巳博士だね」

 笑みを浮かべる初老のロシア人。

 「ルカエフ教官」

 目を輝かせるウラジミール達。

 「ルカエフさん。警視庁です」

 「FBIです」

 「アコードのエミリーです」

 わりこむエミリー達。

 「この人は?」

 頼仁が聞いた。

 「俺はライ・コーハン。北朝鮮の工作員だ」

 つけひげを取る若い男。

 「北朝鮮のスパイなの?」

 驚くダスティと頼仁。

 「重要な情報を俺達は持っている。地球の未来を揺るがすような情報だ」

 ライはニヤニヤ笑った。




 父島沖に停泊する「かが」

 「かが」の甲板に着陸するアコードのオスプレイ。艦首側エレベーターが降下してオスプレイが格納庫に格納される。

 艦内にあるミーティングルームに入るダスティ達。

 「ゲートスクワッド部隊司令官の月島昭である」

 「艦長の有馬です」

 「僕は西洞宮頼仁です。よろしくお願いします」

 頭を下げる頼仁。

 「でもなんで北のスパイとロシア軍の潜水艦が一緒にいる?」

 それを言ったのはウラジミールである」

 「人類や世界の揺るがすような情報を手に入れたんだ」

 もったいぶるように言うライ。

 「俺達は信用できない」

 真島がわりこむ。

 「瀬取りだけでなく日本国内によくスパイを入れている」

 本宮が指摘する。

 「サイバー攻撃をするじゃないか」

 西山がわりこむ。

 「俺がもってきた情報はこれだ。韓国は時空侵略者を入れたという証拠だ」

 語気を強めてライは写真を見せた。

 何枚かの写真には紫色の皮膚に黒色のサイバネティックスーツに身を包んでいる。男女共にスキンヘッドで尖り耳、頬やあごに三本の溝の模様がある。

 「名前はフィランとシュラン。フィランがオスでシュランがメス」

 ライはエイリアンの男女を指さす。

 どよめくスコット達。

 「ナポレオンや日露戦争でやってきた連中と同じ種族だ」

 ルカエフがナポレオンの肖像画やニコライ二世の写真を出した。

 「連れてきたのは楊親子。父親は楊由哲。息子は楊許比。息子の楊許比は韓国軍のイージス艦「セジョンデワン」と融合している。こいつには弟の許実がいてチャムゴン・イ・スンシン級「デジョヨン」と融合している」

 ライは写真を出して説明した。

 「私は廃艦になった潜水艦や艦船をまとめて買収する団体を追っていた。最近は退役したロシア軍のタイフーン級潜水艦「ドミトリー・ドンスコイ」を中国企業が購入して曳航していった」

 ルカエフは廃船や退役した艦船の写真や曳航していく業者の写真を見せる。

 「タイフーン級原潜は原子炉や主な武装は外して引き渡した」

 ライがわりこむ。

 「中国は退役した艦船を使って改造して中国軍に入れるのか?」

 蜂須賀が聞いた。

 「中国の事だからロクでもなくパクッてまた別の物を造るのが得意だから」

 グロリアがしれっと言う。

 「そっちのスパイは?」

 リッグスが聞いた。

 「俺は韓国の司令部に潜入していた。韓国軍の上官がなぜか退役したロシア軍の艦船や米軍の艦船を物色して中国軍と一緒に優秀な能力者をスカウトしようと駆け回っていた。中国と韓国は時空のひずみを造る実験をしていて俺とルカエフは追っているうちに合流。そして調査を始めたらジョージと勅使河原が殺害されて俺達はアメリカからヨーロッパに渡ってそこから日本に来た」

 世界地図を出して説明するライ。

 「確か韓国の大統領が中国の龍詠平と会談だよな」

 周が思い出す。

 「お互いにうまくいっていない同士ね。中国は一帯一路や海のシルクロードがうまくいってなくて詐欺呼ばわりされていて高速鉄道建設も頓挫。AIIBは加盟国を借金漬けにする。南シナ海に基地を造り、海洋進出をしようとしている」

 奨は世界地図の太平洋を指さす。

 「韓国は火器管制レーダー問題や徴用工、慰安婦問題、天皇陛下に謝れと国会議長は言い放ち、経済は二度目のIMFを迎えている。

もともと日本と韓国は仲はよくない。崔瑛哲に変わってからその病気がどんどんひどくなってきた。その影には金がなくて通貨スワップしてほしいのがある。UAEと原発建設もで問題を抱えた韓国は日本から石油や物資を輸入している」

 倉田が説明した。

 「なるほどね。だから揉めているんだ」

 納得するダスティ。

 もともと日本と韓国が揉めているのは知っているし、お金のない韓国がアメリカにもやってくる。米韓同盟の継続と米韓演習の継続をお願いしに来るのはニュースで見た。

 「韓国政府も嘘つきで約束は守らないのは有名よ。韓国軍も嘘つきでパクるしまともな艦船や武器を造れない」

 ローズがわりこむ。

 「なんか日本は隣国に恵まれないわね」

 同情するマリーナ。

 部屋に入ってくる副長。

 「宗方副長どうした?」

 有馬艦長が聞いた。

 「護衛艦「しらぬい」「てるづき」が中国軍と韓国軍の艦船と潜水艦がEEZすれすれで同じ海域を行ったり来たりしているのを発見したそうです」

 宗方副長は答えた。

 「さっそくやってきたな」

 真島がわりこむ。

 「韓国軍の艦船は「セジョンデワン」「デジョヨン」中国軍は空母「遼寧」イージス艦

旅洋Ⅱ「昆明」です。商型、漢型、晋型潜水艦はミュータントばかりです」

 宗方副長が説明する。

 「真島さん。楊許比はオッドアイだよ」

 ダスティがわりこむ。

 「ミュータントを見分けられるのは同じミュータントで「しらぬい」「てるづき」はミュータントですね」

 それを言ったのは頼仁である。

 「まさか会ってみたいとか?」

 ベラナがわりこむ。

 「自衛隊はロシア軍と合同演習のフリをしてここにいます。だから僕達がロシア艦に乗ってれば相手は攻撃してこないと思います」

 頼仁は身を乗り出す。

 ため息をつくベラナとグロリア。

 「あまり進められないが様子を見よう」

 月島司令は少し考えてから言った。



 小笠原諸島のEEZ

 その海域に接近する護衛艦「せとぎり」「はるさめ」「みょうこう」「まや」「あしがら」そしてロシア軍スラヴァ級巡洋艦「マーシャル・スチフノフ」ウロダイⅡ級「アドミラル・チャバネンコ」

「アドミラル・チャバネンコ」全長一六三メートル。八五〇〇トン。

 「マーシャル・スチフノフ」全長一八六メートル。九三〇〇トン。

 EEZ付近に護衛艦「てるづき」「しらぬい」がいる。艦橋の窓に二つの黄金色の光が灯っているのが見えた。

 「あきづき」型の二番艦。全長一五〇メートル。五〇五〇トン。

 「あさひ」型二番艦「しらぬい」全長一五一メートル。五一〇〇トン。

 「杜若(かきつばた)、天沢どうだ?」

 「せとぎり」に変身している真島が聞いた。

 「真島隊長。本当にロシア軍と合同演習なんですか?」

 杜若と呼ばれた「てるづき」と変身しているミュータントはたずねた。

 「日本とロシアは海洋安保でつながっていません」

 天沢と呼ばれた「しらぬい」に変身するミュータントが聞いた。

 「ゲートスクワッドが結成されるのは本当ですか?」

 杜若が核心にせまる。

 「まだ正式な発表は政府からはない」

 答える真島。

 「遼寧とセジョンデワンは?」

 雅楽代が聞いた。

 「この辺りをウロついています。ロシアの潜水艦が二隻いますね」

 声を低める天沢。

 「中国の潜水艦一〇隻もEEZの外にいますが騒音は大きいです。新宿大ガードと同じ大きさの騒音が聞こえます」

 天沢が位置を送信した。

 「丁度Uターンしてきた」

 杜若が指摘する。

 しばらくすると接近してくる数隻の中国軍と韓国軍の艦船。

 中国軍空母「遼寧」旅洋Ⅲ型イージス艦「

昆明」と韓国軍イージス艦「セジョンデワン」

チャムゴン・イ・スンシン級駆逐艦「デジョヨン」である。四隻とも艦橋の窓に二つの黄金色の光が灯る。

 空母「遼寧」全長三〇五メートル。5万トン前後。元はロシアの空母だったが中国が買収して修理して練習用空母して中国軍が所有している。

 「昆明」全長一五六メートル。七〇〇〇トン前後。旅洋Ⅲ型は中国軍のイージス艦である。中国軍は蘭州級イージス艦も含め一〇〇隻以上のイージス艦を所有している。

 「セジョンデワン」全長一六五メートル。七六〇〇トン。韓国軍の攻撃型イージス艦で日米のイージス艦よりも重武装である。

 「本当にロシア艦がいる」

 中国語で主錨で指をさす空母「遼寧」

 「人間の子供と農薬散布機を乗せて何をしている」

 韓国語で聞く楊許比。

 「韓国語わからないからロシア語でしゃべれよ」

 ロシア語で答えるウラジミール。

 「ここは日本のEEZだ」

 真島は中国語で語気を強める。

 「ロシア軍と自衛隊が合同演習なんて珍しいよな」

 昆明が中国語でわりこむ。

 「お前の所の潜水艦はこの周辺に一〇隻いるよな」

 倉田が話を切り替える。

 「別に俺達は何もしていないし、潜水艦は連れて来ていない」

 他人事のように言う遼寧。

 「だってよ」

 真島はそっけなく言うと汽笛を鳴らす。

 すると周辺に大量の泡が吹き出し、いっせいに中国の潜水艦一〇隻が浮上した。

 「なんで?」

 驚きの声を上げる遼寧、昆明、許兄弟。

 浮上してくる「うんりゅう」「くろしお」

「みちしお」「ニューハンプシャー」とアクラ級潜水艦「ヴェブル」「ゲバート」の六隻。

 「アクティブソナーを乱れ打ちをしたの」

 そっけなく言うローズ。

 「ついでに超音波や大音響の音を中国軍の潜水艦だけに飛ばしたんだ」

 杜若がわりこむ。

 「中国の潜水艦は新宿大ガードや新幹線と同じ騒音を出しているからわかりやすいわ」

 天沢が口をはさむ。

 「バカな・・・」

 絶句する遼寧と昆明。

 「私達があんたの所の潜水艦がどこにいるかわからないと思った?ずっと追っているし位置も特定している」

 当然のように言うローズ。

 「普通の潜水艦でも中国の潜水艦は騒音を立ててるよね」

 日紫喜がわりこむ。

 舌打ちする遼寧と昆明。

 「中国海警船の連中から聞いたがおまえの政府は日本や台湾だけでなくロシアも併合して太平洋を割譲すると聞いたがロシアの領海に入ればその場で沈めてやる」

 ドスの利いた声で言うオニール。

 「俺達は何も聞いていない」

 遼寧が他人事のように言う。

 「韓国と中国は仲がいいんだな」

 ザカリンが聞いた。

 「そうでもないさ。向こうから勝手に合流してきた」

 昆明がしゃらっと言う。

 「今度は中国に泣きついたのか?」

 わざと言う松田。

 「なんか言えよポンコツ」

 船体から二対の鎖を出す真島。

 「俺はそんなにポンコツじゃない」

 しれっと言う楊許比。

 「ポンコツだろ。日米韓演習で衛星にリンクできず他艦とイージスシステムが構築できなくてトップヘビーでうまく旋回できないのは誰だっけ」

 わざと挑発する松田。

 「よくもおまえ、去年のリムパックでボコボコに殴ったな」

 あっと思い出す楊許比。

 「おまえが暴言と変態発言を連発したからに決まっているじゃないか」

 倉田が語気を強める。

 「少しは黙れよ」

 弟の許実がわりこむ。

 「ダスティとプリンス頼仁を連れているんだろ?なぜロシア艦に乗せている」

 遼寧が聞いた。

 「なんでだろうね」

 わざとらしく言う雅楽代。

 「そこのイージス艦は幹部候補生でそこにいる二隻の駆逐艦も幹部候補生と見習いだ」

 昆明がわりこむ。

 「ダスティ。いるんだろ」

 クスクス笑う楊許比。

 「何?」

 ダスティと頼仁は「アドミラル・チャバネスク」の艦橋ウイングから出てくる。

 「同じオッドアイなんだから友達にならないか?」

 楊許比が聞いた。

 「やだ」

 即答する頼仁

 「なんで操ろうとするのかわからないけどへんな周波数がたくさん出ているね」

 ダスティが指摘する。

 「出していない」

 弟の楊許実が否定する。

 「周波数や変な電波がセジョンデワンとデジョヨンから出ている」

 ビシッと指をさすダスティ。

 「確かにそうですね。おかしな音がセジョンデワンから出まくっている」

 黙っていた天沢が助け舟を出す。

 「合流した時点で遼寧と昆明と潜水艦を周波数で操った?」

 杜若が核心にせまる。

 「洗脳した?」

 京極がわりこむ。

 「黙れよガキが!!」

 声を荒げる楊許比と楊許実。船体から二対の鎖を出した。

 「子供の言う事になにを興奮している」

 真島がわりこむ。

 「ちくしょう!!」

 キレる楊許比と許実。二隻は韓国語で暴言を吐いてわめくとどこかへ行ってしまう。

 「なんだあれ?」

 あきれるウラジミールとオニール。

 「火病を起こした」

 真島が指摘する。

 「合流したのはいいけどすぐ火病を起こして困っている?」

 松田がわりこむ。

 「まったくだ」

 さじを投げた医者のように言う遼寧。

 「そっちも困るでしょ。中韓首脳会談が明日行なわれるし、こっちも暴れても困るけど」

 ローズがわりこむ。

 「俺達も困るし、日本と中国はその状態じゃない」

 昆明が声を低める。

 「じゃああの一〇隻の潜水艦を連れてとりあえず中国に帰ってくれないか」

 真島が語気を強める。

 「わかった」

 遼寧はそう言うと昆明と潜水艦たちを連れて去っていった。


 

 護衛艦「かが」ミーティングルーム。

 「仲間が増えたのか?」

 口を開くベラナ。

 「杜若豊(かきつばた)です」

 「天沢泉です」

 男女の自衛官は名乗った。

 ため息をつくベラナとリッグス。

 「僕が呼んだんだ。だって一〇隻も潜水艦のミュータントがウロついていたから潜水艦を見つけるのが得意そうだったから呼んだ」

 ダスティがしゃらっと言う。

 「それに二人とも絶対音感を持っていて杜若さんは衝撃波を操れて潜水艦がどこに隠れても見える。天沢さんはオッドアイで音を自在に操れて武器にもシールドにもできる。雅楽代さんと京極さんはテレエンバスで雅楽代さんが天候を操れて京極さんが光を操れる。日紫喜さんは透明になれて物体を通り抜けられる。島津さんはカメレオン能力と毒針。瀬古さんは自在に大きさを変えられる。蜂須賀さんは雷が操れるならスパイクさんのプラズマ銃が使える。」

 頼仁は説明した。

 「ウラジミールさんは物質変換能力者でオニールさんが重力を操れる。ザカリンさんが炎でカリナさんが氷を操れる。ライさんは普通のミュータントで誰にでも変身できる」

 ダスティが笑みを浮かべる。

 「すごい子供だ」

 感心するライ。

 「有事になったら遼寧達はもっと潜水艦を連れてやってくるよ」

 心配する頼仁。

 「それにあの韓国のイージス艦は危険かも」

 ダスティが核心にせまる。

 「どのように?」

 黙っていたルカエフが聞いた。

 「邪眼で何人もの他人を操れて洗脳できる。そして他人にやらせておいて自分は痕跡を残さない。破壊衝動でなんでも壊す」

 頼仁は答えた。

 「それは暗黒魔術だ」

 黙っていたマッシュが口を開く。

 「暗黒魔術?」

 聞き返すダスティと頼仁。

 「闇の精霊か上位の魔獣と契約する事で使用できる。僕の師匠ダーエワは三〇〇年生きた魔術師であり僧侶だった。インド政府はカースト制度は廃止して禁止しているけど根強く残っている。僕は一番最下層のカーストだったから生活のために海軍に入隊した。そしたら空母と融合して落ち込んでいたらダーエワ師匠と出会って弟子になって修行して「闇の精霊」と契約した」

 マッシュは重い口を開いた。

 「闇の精霊ならまだマシかもね。魔獣や邪神と契約すると死んだとき魂は奴らに取られ地獄で永遠に苦しむことになる。楊一族は唐や殷王朝に仕える魔術師だったが強さを求めるあまり邪神と契約。代々子供は邪神の血を受け継ぎ怪物や魔人が生まれるようになった」

 モントゴメリーが説明する。

 「楊一族は去年のインスマス事件にもからんでいるし、先の大戦や時空侵略者の侵入の手助けをしていると思われる」

 マリーナが口を開く。

 「もしかしてダニッチ村のウエイトリー・ウィルパーみたいなものですか?」

 ダスティが質問する。

 「それと同じよ」

 マリーナがうなづく。

 「私達もミスカトニック大学やリヴァーヴァンクス大図書館、魔術師協会本部から禁止されている魔術書を持ち出そうとした泥棒を追っていた」

 二コールが重い口を開いた。

 「アコードや魔術師協会、邪神ハンター協会も中国には支部しかなく中国本部はなくて韓国には出張所だけよ」

 ナタリーがわりこむ。

 「理由は両方とも嘘つきで信用できないからというのが本音だね」

 スコットがつけくわえる。

 「連中の嘘つきで約束破りは今に始まったことじゃないからな」

 肩をすくめる真島。

 「韓国に関しては国連も他国も信用されてない」

 黙っていた西山が口を開く。

 「金流芯や遼寧の方がまだマシかな。用が済めばどっかいくからね」

 本宮がわりこむ。

 「遼寧や昆明の様子から見ると言う事聞かなくて自分勝手ですぐ火病を発病してわめいて暴れるから手を焼いているようですね」

 それを言ったのは雅楽代である。

 「韓国軍と中国軍のミュータントはあまり連携が取れてなくてコミュ二ケーションがうまくいっていないとみています」

 京極が分析する。

 「なるほどそれは使えるな」

 有馬艦長はうなづく。

 「月島司令。「かが」はこのまま沖縄に向かいますか?」

 真島がたずねた。

 「いったん横須賀に戻り、私は伊佐木総理に韓国と中国に時空侵略者が入った事を報告する」

 月島は言った。

 

 

 

 

 

 

 

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