第3話 女天使メタトロン

サラサラと天の川のように美しい髪の毛を揺らしながら女天使メタトロンは謝った。


『サンダー、ごめんなさいね。お仕事増やしてしまって。子供課も今は天使が足りなくてテンヤワンヤしてるの。だから天国受付所にで直接手続きしてもらいなさいと大天使様に言われて』


今夜のヘブンズエールを逃して半泣きの天使サンダルフォンを見て先輩天使ジェレミエルが笑った。


『天使らしく無償の愛で助け合いな。俺は無償のヘブンズエールがあるから天国だぜ』


天使の冗談を飛ばしながら、天使サンダルフォンをからかった。その様子をみて女天使メタトロンは申し訳なくなった。


『申し訳ないわ。私がヘブンズエールをご馳走するからお願いしても良いかしら?』


天使サンダルフォンは我に戻り


『君にそんなことさせないよ!気を遣わないで、さあ今日最後の仕事だ』


と生前履歴書を見つめた。赤ん坊は0歳。生まれて1ヶ月で亡くなった。男の子。死因は心臓病。子供の死者は意志がハッキリするまで未来を選択することが出来ないため、自動的に休息をすることになるが、天国に住む里親に育ててもらう制度になっている。里親登録は天国受付でする手続きではないが、連携している書類があるので立て込んで来ると特別に対応することもある。


出来れば生まれた場所と同じ国で育ってもらうほうが良いのだが、あいにく彼の出生地である日本の里親受付時間は終了していたので、受付時間内のアメリカで里親を探すことに。手続きを終了した書類を入れた箱を漁りだした。


『確か、、。里親登録希望の夫婦が150番台にいたはず』


違う、違う、これか?違うか、お、これだこれだ。


【アメリカ : カリフォルニアにて休息中 ジョージ・フォースター (妻)イーサン・フォースター 里親希望】


女天使メタトロンは書類を覗き込むと優しく微笑んで頷いた。


『とてもいいと思うわ。ありがとうサンダー、本当に助かった』


天使サンダルフォンは照れながら『大丈夫大丈夫』と書類を渡した。天使メタトロンの腕の中でスヤスヤと眠っていた赤ん坊が目を開けていた。『あら、起きたのね』と笑いながら赤ん坊をあやしながら天使メタトロンが尋ねた。


『そういえばサンダーは今までに赤ん坊を抱いたことはある?』


突然の質問に目をパチクリしながら、『俺は〜...無いかな、ははっ』と笑った。


『良い経験よ、さあどうぞ』とひょいっと赤ん坊を渡されあたふたする天使サンダルフォンを側から見ていた天使ジェレミエルが面白がって笑っていた。


『わあ!怖いよ赤ん坊なんて!返すよメタトロン!』


赤ん坊は天使サンダルフォンの声に驚いてぐずりだした。さらにあたふたする天使サンダルフォンを二人は笑っていた。


赤ん坊の泣き声は現世にまで届きそうなほど元気がよかった。










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