57日目  江住ー日置


 さぁ出発。しばらくはマイナーな町からマイナーな町へとの移動だ。現地の人には申し訳ないけど、今日の目標も、あまり知られていない日置の町である。


 今日も国道を進んで、出発してからほどなくして、道の駅「すさみ」に到着。まだ休憩する時間でもないんだけど、併設するように「エビとカニの水族館」があるみたいなので、寄ってみた。ドライブついでに寄ってみました風に。

 すさみ町立ということもあって、こじんまりした感じだけど、エビはたくさんいた。名前的に美味しそうなイメージだったけど、カブトガニやらゾウリムシみたいのが多くいて、美味しそうなカニはあまりいなかったかな。代わりにサメのプールがあってちょっと怖かった。


 そんなこんなでさっと見て出発。

 少し登ってやや山の中を抜けていく。けれど住宅が途切れることはなく、そこそこの町。そして上った後の下り坂で、その先の街並みと海が見える光景は、何度見ても気持ちいい。できれば登りが無ければもっといいんだけど。

 いつの間にか右側には紀伊本線の線路も見えてきて、まもなくして見老津駅に到着。相変わらずの小さな駅だ。けれど駅の目の前は海で、おそらくホームからは海が一望できるそう。スラムダンクのあんな感じだ。


 トイレと軽く休憩して再び歩き出す。

 駅を出てすぐ右側に、熊野古道の入り口があった。そういえばこの辺りにもあったんだ熊野古道。ずいぶん懐かしい気がする。けれど明らかに山の中なので今回はスルー。国道42号線を進んでいく。

 少し歩いていくと、海側にちょっとした飲食店。茶屋って感じ。そしてその先には恋人岬。前にもあったよね恋人岬。きっとこの手の岬は全国各地にまだまだありそうな気がする。


 岬はスルーして進む。前方のトンネルは、わきの山道を登って回避。山道登るのは辛いけれど、トンネルを越えて国道へと戻る際、正面に見える海の光景はなかなかだった。

 再び道の駅があったので、そこでひと休憩。イノブータンランドすさみ。イノブータンって何? って何気なく説明を見たら……なんと独立国家でしたw なんとここは日本ではなく、イノブータン王国だったのだ! いつの間に国境越えをっ?

 というのは冗談……だけど半分くらいは本当。

 なんでもイノブータン王国とは、ここすさみ町が町おこしとして、名乗りだしたもののようだ。ちなみに建国は1986年。もう三十年以上前から独立していたようです。知らなかった。


 王国を後にして先に進む。

 やや山道が続く先を抜けると、内陸部に入ったのか、海があった左手も山に囲まれた盆地に出た。田畑が広がっていて、ちょっとした隠れ里みたいな感じ。けど少し進めばすぐに海が見えてくる。

 やがて右手にまた熊野古道の看板が。長井坂って前も見た気がしたと思ったら、やっぱりあの時の熊野古道だ。ここが出口のようだ。

 通らなくてよかった。って思ったんだけど、この先の道はやはりトンネルで徒歩には不向きっぽいので、けっきょく脇道の山道を通る必要がありそう。


 熊野古道ならぬ新道だと思いつつ登る。最初はフェンス越しに国道を見下ろして歩く感じだったのに、一気に山の中に突入した。熊野古道のほうがまだ整備されているんじゃないかって感じ。

 けど必死に上って抜けると、一気に開けた場所に出た。木々が生い茂っておらず、イメージ的にはブルドーザーやショベルカーが並んでいるような工事現場みたいな感じ。山の禿げたあたりが、いい感じの高台になって広がっている。

 少し歩くと、石像が見えた。高さは2メートルちょいくらい? 詳しくないのでわからないけど、観音様みたいな感じ。近くには海を見るように、ベンチが置かれている。何の説明書きもないので、ここが何なのかもわからないけど、ここから見る海の景色は絶景だった。地図にも載っていないし、穴場スポットだったかも。

 さて。ひと休憩を終えて出発。あまりに広くてどこに進んでいいか分からなかったけど、グーグルマップさんを信じて歩いていくと、また山の中に。獣道みたいで、こんなところで死んでも見つからないだろうなと思いつつ進んでいると、ようやく右手下に線路が見えてきて、文明を感じた。

 最後は急な石段を下って久しぶりのアスファルトに。出口のところに「熊野古道長井坂大辺路 馬転坂」って案内板がひっそりあった。てことは、あの道も熊野古道だったのか。


 山道で疲れ切った足に逆にアスファルトは堪えたけれど、何とか歩いて進むこそしばし。そこそこの街並みが見えてきた。周参見駅周辺だ。って、すさみって「周参見」って書くのかな。正式名称が「すさみ町」みたいだけど。漢字を簡略化したのだろうか。こう考えると「さいたま市」も馬鹿にできないかも。ちなみに埼玉の「埼」は漢字検定2級レベルだし。


 それはさておき、駅前のいかにも地元な中華料理屋(飯店)で足休めもかねて昼食を摂って再出発。ちょっとした漁港になっていて、近くに海水浴場もあるみたいで、結構栄えている。

 海を眺めつつ歩いていると前方にトンネル。朝来トンネル全長918メートル。迂回の道もあるのでそちらに行くべきなのかなと思ったけれど、以外にも柵付きの歩道がトンネル内までつながっているので、トンネルに直行した。久しぶりの長めのトンネル。さすがに1キロは長いなぁ。


 ようやく出口だ。ふと振り返ると、トンネルの上部にイノシシのような豚のような生き物がカジキマグロ?を抱えている壁画があった。ああなるほど。イノシシと豚で、イノブタ。イノブータン王国か。それにしてもまだすさみ町なのに。王国の形跡がほとんど見当たらないんですけど。

 と思って今度は前方に目を向けたら、「白浜町」の標識が。このトンネルですさみを抜けたようだ。そしてこんにちは。ついに白浜まで到着だ。


 先の道が高架になっていたのでその横の道を進む。さて地図によれば、この先もトンネルである。

 日置トンネル。今度は堂々一キロ越えの1184メートル。これって新記録かもしれない。今回もご丁寧に柵付きの歩道があったので、トンネルに突入。

 トンネル内は特筆無く。ただ長いので出口が見えてきたときは、光がやたら眩しく感じた。実際トンネルを出ると景色は広がっていて、大きな川、日置川と橋が見えた。川の向こうには日置の町が広がっている。けっこうな規模だ。


 いったん国道からそれ、木造が目立つ住宅地を抜け、再び国道に合流。あの海沿いの僻地を通っていた同じ国道42号線とは思えないほど、町中の県道っぽい道を進んでいく。

 もう目的の宿はもう少しだけど、その手前にある志原海岸という道の駅で休憩。パーキングから見える海岸線と海が美しい。ここもいわゆる白浜に入るかわからないけど、さすがきれいな海だった。


 というわけで、今日は少し先にある民宿で泊り。お疲れ様でした。



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