55日目  那智ー串本


 今日の目的地は、紀伊半島の最南端、串本である。

 泊った場所が駅から中途半端なところにあったため、宿を出てからしばらくは緑に囲まれて、適度に家があり、のどかな田園風景ってイメージだ。正確には田園じゃないけど。


 出発して間もなくして町が見えてきた。次の駅である下里周辺だ。

 そこそこ大きい太田川を渡って、先に進んでいるとトンネル。これは歩行者が通れそうにない幅の上、そこそこ長い。地図を確認して、いったん戻って住宅地を抜けることにした。

 町と町を結ぶ国道沿いは何もない山道でも、こうやって少し外れると意外と住宅地が広がっている。当たり前のことなんだけど、最近になって分かってきた。

 さてその住宅街を抜け、再び国道に合流しようと歩いていると目の前に小さな川があった。「二級河川 ぶつぶつ川」?

 奇妙な名前に惹かれて寄ってみたら、「日本一短い ぶつぶつ川 13.5メートル」というシンプルな文字が。地元の人の冗談かと思ったけど、調べてみたらこの名前も、日本一短いも本当のことだった。まさかの激レアだった。まぁ、見た目はちょっとした水路にしか見えないんだけど。


 川を後にして国道に合流。しばらく歩道がないけど、車通りも少ないし他に道もないので早歩きで歩かせてもらう。線路や海を左手に見ながら進んでいると、途中に「浜松から292キロ」という立札があった。なぜ浜松? って思ったけど国道42号線の看板にくっ付いているので、浜松にもあったのかな42号線。浜名湖を歩いたのがずいぶん前の気がする。

 紀伊浦神駅前を通過。駅舎は見えなかったけれど、おそらく小さな駅だと思う。けれど駅前だけあってそれなりに住宅もある。

 しばらく歩くと今度は那智の滝柳池大社の看板があった。けどさすがに23キロは遠すぎる。


 歩道のない国道を気まずく進みつつも、ついに「串本町」に入った。本州最南端の町だ。といっても何が変わるわけでもなく、ひたすら山の中を突っ切る道が続いている。

 堂道橋の交差点を越えてようやく歩道復活。そろそろ町が近いかな。

 それにしてもよく「那智黒」というおみやげの看板を見かける。黒あめのようだけど、三重県でやたら「赤福」の看板を見ていたことを思い出す。別に赤と黒で対抗しているわけじゃないだろうけど。

 左手に運河のような川を見ながら進む。田原川というらしい。もうかなり町並みに入ってきた。川を渡ると今度は海岸線沿いを歩くようになる。海を見ながら歩ける歩道って久しぶりだ。


 海霧撮影場という看板があった。発生時期が12月~3月と冬限定だけれどこうやってわざわざ看板があるくらいだから、綺麗なんだろう。

 そこからしばらくはまた車道を歩く羽目になる。途中ちょっとした脇道があったので、国道を逸れてそっちを進んだりもした。車の心配がないだけで、だいぶ気分が違う。

 再び国道に戻ってまた歩道を歩いていたけれど、目の前に大きな橋が。

 これはちょっと無理そうなのと、迂回路もあったのでそっちに向かった。遠回りだけど。

 それなりの住宅地を抜け、県道228号線の橋を渡る。大きな川で古座川というようだ。そして川を越えたら、古座の名前の駅もあった。


 駅前から県道を南に進んで、再び国道に合流する。正面に見える海がきれい。

まだ抜けたわけじゃないだろうけど、高い山が周りになく、空が広く見えて開放的だ。

 姫駅前を通過。って看板を見ただけで駅前を通ったわけじゃないけど、「姫」の一文字ってすごい名前だ。

 そのまま国道を通り、ちょっとした坂を超えると、眼下に海と街並みが見えてきた。ようやく串本の中心が見えてきた。


 その串本中心はまだ先なんだけど、もう観光地っぽい町並みが広がっていた。

 国の天然記念物、橋杭岩だ。道路わきに駐車場とお店が立ち並んだちょっとした道の駅みたいなところがあったのでそこで少し遅めの昼食を摂った。

 橋杭岩とは、海から突き出た大小さまざまな形の岩が、海岸線沿いに一直線に並んでいるもののこと。確かに橋の杭のようにきれいに並んでいる。なかなかの光景だ。東側だから朝日に映えそうだ。

 ここからはもう観光地。歩いている人もたくさんいるし。お食事処も選び放題。車も渋滞しているし。ようやくたどり着いた。

 トルコ友好の町って書いてあって不思議に思ったけど、そういえば江戸時代に難破船を助けたことがあったんだっけ。今もそのつながりが残っているようだ。

 こうして串本駅に到着。しっかりと本州最南端の駅と書かれていて、リゾート地の入り口って感じだった。

 本当の本州最南端は駅のまだ先だけど、行くのは明日にして今日は駅前近くのホテルで休みます。お疲れさまでした。



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