53日目  熊野ー新宮


 さぁ出発。今日は久しぶりに平野を歩けそうで気持ちが楽だ。

 熊野市駅から国道42号線に向かう。まっすぐ伸びる国道の向こう側には堤防が見える。そこに登ってみると、大きな海岸。広がる砂浜。久しぶりに大きな海岸を見た。せっかくなので、砂浜を歩いてみた。

 しばらく歩いていると、砂浜に巨大な岩山が見えた。獅子岩といって、これが一つの岩みたい。高さ約25mとのこと。その迫力は凄い。

 海岸砂浜は果てしなく続いている。砂の道は歩きにくいので、やっぱり国道に戻ることにした。


 国道は綺麗に整備され、南国のような街路樹も見える。横須賀の海岸線を歩いたときもこんな感じだったかな。こういうなだらかな海を見て歩くのは久しぶりだ。

 しばらくして道路上の標識に、「世界遺産 花の窟」200mとあった。

 今日は余裕があるし寄ってみよう。というわけで右手に曲がると、花の蜜神社とあった。

 初めて聞いたけれど、日本書紀にも載っている日本最古の神社といわれているようだ。普通の神社と違って、岩がご神体になっているみたいだけど……って見に行ったら、でかい。その高さは約70m。さっきの獅子岩の大きさにも圧倒されたけど、その三倍だ。これは確かに霊的な物を感じるかも。

 旅の無事を祈願して、神社を後にする。


 相変わらずまっすぐで平坦な道が続いている。左手の海側は林がずっと続くようになって海が見えなくなった。防風林だろう。確か沼津と新富士の間にもずっと並んでいたっけ。土地が変わっても風習は変わらないものだ。

 新宮までは19キロ。今日は国道をずっと行くルートなので、素直にあと19キロ。これを楽と思ってしまう自分が不思議。

 左手には防風林。右側には様々なロードサイド店が立ち並んでいる。あの靴のお店は、神奈川でも三重でも「東京」靴流通センターだ。

 その後、熊野市街地から離れていくと、商業施設も減ってきた。けれど、それでも工場や住宅やら、建物が途切れることはない。そして左側はずっと防風林。たまにそこに入ってみると、いつでも砂浜に出られる。


 志原川を越える。このときは国道に歩道がなかったので、別の道で橋を渡った。

 新宮まで15キロ。左側にも防風林がなくなって住宅が目立ってきた。それでも砂浜沿いの道らしく、相変わらず平坦な道が続く。

 たまに上り坂があるとしたらそれは河口へとつながる川の橋である。市木川だ。やはり歩行者は別の橋を渡って、再び国道に合流。戻ると防風林が復活していた。


 どこまでも続くよ、道路は。

 なんて感じで気持ちよく歩いていると、右手にちょっとした公園とオブジェが。そこには「年中みかんのとれるまち 御浜町」って書いてあった。熊野市から出たのかな。それにしても、伊豆にしてもこの辺りにしても、みかん頻度が高い気がする。

 しばらく歩くと、「みかんパーク七里御浜」という道の駅。建物の壁にもみかんの絵。ミカン押しである。モールとの複合施設になっているようで大きい。せっかくなの、そこで休憩&昼食にした。みかんは食べなかったけど。

 道の駅を出てすぐの道路わきに「紀伊半島一周道路の早期整備を!」という看板があった。歩く身としては賛成である。ちなみに、そのすぐ横に「東紀州をひとつに!」っていう看板もあったんだけど、東くくりだったら一周ではなく半周じゃないのかな。


 この辺りは防風林が消えて海が直接見えるので、そちら側を歩いてみた。やっぱり海は気持ちいい。けれど、また橋があったのでやはり住宅地側から川を越えて、国道に合流したあたりから山が目立ち始めてきた。そろそろ終わりかな。

 紀宝町に入った。こちらはみかん押しではないようだ。代わりと言ってはなんだけど、道の駅は「ウミガメ公園」だった。ウミガメ産卵場所みたい。ウミガメとみかんだったら、みかんの方が良いかなぁ。

 というわけじゃないけど、道の駅はスルーして海岸線の道を進む。いつのまにか道路のすぐ隣が海になっていた。新宮まであと6キロ。


 国道から県道35号線に移って進む。鵜殿駅前を通過。周りの住宅に比べると質素な駅だった。

 道は右に曲がって海から離れていく。代わりに町並みが増えてきた。道が曲がった理由は、正面を流れる熊野川があるからだ。川幅が大きく、志摩で見た島々と陸の距離くらいの間隔だ。それを左手に見ながら川上の方に進んでいく。橋がないので、なかなか向こう岸に渡れない。

 それでも川に沿って歩くことしばし、ようやく大きな橋にたどり着いて熊野川を渡ることができた。


 熊野川を渡った先が、今日の目的地、新宮だ。高いビルも目立ち、熊野とは違った方向で栄えている印象だ。

 駅に行く途中、新宮城の跡があるみたいなので寄ってみた。江戸時代に作られたお城みたいで、天守閣はなくなっていたけど、石垣は本格的。登るのに苦労したけど、そのぶん上から見る新宮の町の景色は壮観だ。ちなみに、続日本100名城のひとつとか。微妙な立ち位置だと感じるのは自分だけだろうか。


 お城跡を後にして先に進む。線路を渡って交差点を右折して歩いていると、すぐに新宮駅に到着した。白い駅舎はちょっと古い印象を受けたけれど、それなりに大きかった。

 というわけで今日はここまで。お疲れさまでした。

 

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