51日目  賀田ー新鹿


 さぁ今日こそ熊野。

 って思ったんだけどこの辺りの地形は複雑すぎた。でこぼこに飛び出た海岸線の道は通れないし、突っ切る国道はトンネルだし、結局今日も熊野古道のお世話になりそう。その結果、微妙に歩行時間が長くなってしまう。急ぐわけでもないので、半分に分けることにした。

 それにしても好んで熊野古道をゆくパターンもあるけど、それしかないのはある意味凄い。もともとこの古道は、伊勢神宮と熊野神社を結んでいた道なのである意味正しいんだけど。


 というわけで。今日も古道山越えである。

 宿を出てすぐに登山道入り口に着いた。矢印に従っていたら墓地に入ってしまって、あれって思ったけどその中の先に山へと続く道があった。

 さて今回通るのは、曽根次郎坂太郎坂である。

 甫母峠頂上1300m。昨日よりは楽なはず。鹿や猪による食害から守るため住民たちが独自に作った石垣が残っているとか。

 道は昨日より広め。まだ上り始めだからだろうけど、空に伸びる木に交じって電柱柱があるのは面白い。少し歩くとベンチがあったので休憩。この辺りは石切り場でもあったみたい。


 順調に歩いていると看板。行き倒れ巡礼供養碑とあった。健康に歩けることに感謝して進む。一里塚を通過。のぼりもきつくなくまだ大丈夫。

 それにしても結構上ったのにまだたまに電柱を見る。

 屋根に囲まれた休憩所が見えてきた。ほうじ茶屋跡。昔はここが街道みたいな扱いだったんだろうな。

 分かれ道を二木島方面へ向かう。楯見ヶ丘という、ベンチがあって景色が見られる場所があった。山々の木々の先に海も見える。なかなかの眺めだ。丘みたいになっているけどもう頂上だといいんだけど。

 近くの「←→」に二木島駅・曽根側登山口とあって、距離はどちらも2キロちょいだった。つまり半分ってことでいいのかな。

 下りが続いていたので登り切ったと思ったらまた登りが復活。それを繰り返してやや平たんになった道を進む。地図的には、紀勢本線の線路が下を通っている場所だ。

 それからかなり歩いて久しぶりの看板。猪垣とあった。入口の所に書いてあった食害防止の石垣だ。山に溶け込んでいて最初は気づかなかったけど、本当にお城のような2mくらいの石垣だった。ちなみにこの近くに猪落としという3m深さの落とし穴があるそうだ。怖い。

 そこからしばらく歩くと山を抜けた。おお。その途端眼前に広がったのは海。

 国道沿いから階段を上って登山道に入るようになっているんだけど、逆にその登山道入り口からは国道を見ると、眼下に伸びる国道と二木島湾の絵が映えていた。


 そこから国道311号線をヘアピンのようにくねっと歩いている。二木島駅方面には向かわずそのまま国道を進んでいると、さっきと同じような感じで、道路の右側に階段が見えてきた。ここが次の熊野古道、二木島峠・逢神坂峠の入り口だ。こちらも通っていく予定。

 入口への階段を上って振り返ると、やはり先ほどと同じような景色。それをじっくり見てから背を向けて、山の中、古道へと入る。

 こちらの山にも先ほどのような1mほどの石垣があった。同じものかな。案内板によれば二木峠まで700m。今までに比べると短めだ。

 しばらくはなだらかな日当たりのよい道が続く。有難い。

 そんな歩きやすい道を進んでいたら、いつも何か逢神坂峠の文字が。いつの間にかついてしまった。二木島峠・逢神坂峠と書かれていたけれど、繋がっているようだ。


 反対側の入り口、自分にとっての出口である新鹿側登り道までは、標識に6kmとあって、えっ? っとなったけど、よく見ると6のまえに「.」が見えた。前が消えているけど小数点だろう、たぶん。

 ジグザグとした道を一気に下っていく。そしてだいぶ下ったなと思ったら木々の隙間から平地が見えるようになってきて、無事反対側の登山口に到着。

 住宅地の隙間から急な階段が伸びているのは長崎っぽい。そこを抜けると、荒れた駐車場だった。あまり風情がないのがちょっと残念。

 再び国道311号線に合流して、新鹿に到着。海水浴場もあるようだ。歩いていて砂浜が見えた。

 というわけで、今日はこの町の民宿に宿泊。まずは遅いお昼を食べられる場所を探そう。明日はいよいよ熊野だ。



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