49日目  伊勢長島ー尾鷲


 さて今日は早めに出発。

 今日通る国道42号線は、別名熊野街道とも呼ばれている。熊野古道を通る機会はあるかな。

 ちなみにいつ和歌山県に入るのだろうと昨日思って調べたら、この先の熊野市もまだまだ三重県だった。伊勢と熊野の両取りか。サーキットに和牛に真珠等々、三重って、意外と広い。


 さていきなりのトンネル。歩いては入れなさそうなので左の脇道へ。山の中に突入しそうな感じだったけど、少し進むとこちらもトンネルになっていた。古里歩道トンネルという歩行者向けのトンネルだ。こういうのはありがたい。長さ208m。それほどの長さじゃないんだけど、周りが小さいからか、長く感じられた。

 トンネルを出てそのまま歩いていると先ほどの国道42号の歩道に合流した。

 ちらほらと道路わきに建物がありながら、まっすぐ伸びる道は、何となく熊野っぽい。綺麗な道なんだけど、意外と車通りは少ない。北の方に紀勢自動車道というのがあるから、たぶんそっちに流れているんだと思う。

 綺麗な道だけど、徐々にまた山の中に入っていく。この調子だとまたトンネルがありそう……と思ったら予想通り。ただこちらにも脇に歩道用トンネルがあったので助かった。

 今度は308m。トンネルというよりは、ちょっと大きな水道管の中を通るような感じだ。トンネルを抜けるとまた山の中。

 けど道が山を通っているだけで、右方向の眼下には線路が通っており、三野瀬の駅や、住宅の屋根が並んでいるのが見えた。


 山を抜け下っていくと集落とともに、海が見えてきた。まだ周りに岬が目立つけれど、それでも海らしい広がりが見えるあたり、志摩を抜けたんだなぁって感じだ。ちなみにこの辺りの三浦海岸という名前である。

 さてこの先に、熊野古道のひとつがあるみたい。そこを通っても結局国道に戻るようなので、寄ってみることにした。


 始神峠江戸道。立てかけてある看板の説明によると、江戸時代から明治中頃まで使われていた道のようだ。古道って言うくらいだからもっと古いかと思っていたら意外と新しかった。

 まっすぐ天に伸びる幾千もの杉の木の間を通っていく。それにしてもこれって結構上っているような。もう山登りだ。所々にある石畳はその当時の物らしい。登った結果、展望台のようなところに出た。海に島がたくさん浮かんでいる光景は、かの有名な松島のようだ。

 それはいいんだけど、よくよく地図を見たら、合流できると思っていた国道は、トンネルになっていて、この真下だった。まぁトンネルだと歩きじゃ入れない可能性はあったのでこの道を選んだのは正解だったかもしれないけど、合流するまでには、まだまだ山道を通る必要がありそうだ。次は古道があっても普通の道を行きたい、とぐちりながら先を進む。

 この先は、明治道と江戸道と二つの道に分かれていた。距離の短い江戸道を進んでいくと、ようやく現代の建物が見えてきて、国道に合流できた。国道から外れて古道に向かった時は右にあった道が、トンネルの上から横切ったため左側にあった。古道の出口(入口)からは、古道を歩く人がいるためか、歩道が整備されていて助かった。


 尾鷲まであと15キロ。言い忘れたけど、今日の目的地だ。

 船津の駅までたどり着いた。小さい駅だけど、それなりに自転車は止まっているので、地元の人に重宝されている駅って感じだ。家もそれなりにあるし。

 町の標語に「津波からの避難は、より早く、より高く!!」とあった。海からだいぶ離れているような気がするんだけど、海沿いの町は津波をかなり警戒するようになっているのを感じる。

 地形的には山のちょうど間のような感じの平野が広がっていている。

 食事処を探していたらランチをやっている焼肉屋さんがあったのでそこで昼食にしよう。カルビ定食って書いてあったから、一人焼肉屋でも大丈夫……と思ったらその隣に中華そばのみせがあったのでそっちにした。いまだ小心者である。

 というわけで中華屋のまぜそばで腹を満たして出発。


 目の前に大きな山が見えて嫌な予感がしたけど、道はその山を迂回するように伸びていた。まだまだ街並みが続いている。この辺りはそれなりに栄えた土地のようだ。

 右側に切り立った山を迂回するように進む。左に見えるのは川か海か。

 尾鷲まであと8キロ。銚子川を渡る。橋の上は相変わらず広々としていて気持ちいい。

 そこから進むと、道路の上と左側にトンネルを三分の一切り取ったような、防波堤みたいな建造物があった。波というより、左の切り立った崖からの落石を防ぐようなものみたい。

 ちなみにごんべ洞門って名前があった。なんでも昔いた権兵衛さんにちなんだものらしい。大蛇と戦ったという伝説があるようで、その壁画があった。こういう各地の伝記を見るのも面白い。


 さてこの先は馬越峠って名前らしい。峠越えは勘弁だけど。

 なんて思っていたら、熊野古道馬越峠入口という看板が目に入った。

 さっきの熊野古道で懲りたので今回は無視したいところだけど、この古道の道も尾鷲に繋がっているようだ。しかも国道ルートも峠越えっぽく、歩道もなさそうだし。

 所要時間は3時間ほどとのこと。予定より少し遅くなるけど、せっかくだし迷った末に、本日二度目の熊野古道へと突入した。早めに出ていて良かったよ。


 国道わきに山の中に向かうように石畳の階段がある。これが馬越峠の入り口だ。

 登り。さらに登り。山道じゃなくて本当に山登り。石畳はあるけどこれは現代の物か古道のものか。汗を拭きつつ前かがみに歩いていると、標識が見えた。夜泣き地蔵尊。哺乳瓶がお供えされていた。

 さらに登っているうちに、周りの杉の木を下に見るようになってきた。あっという間に頂上かと思ったけどそんなに甘くはない。

 ちなみに一本道だと思ったら、古道を横切るようにアスファルトの道が伸びていた。楽をする人はここまで車で来てから古道に入るのだろうか。

 さらに登ること何十分だったかわからなくなったころ、小屋が見えてきた。どうやらここが馬越峠の中間点のようだ。昔はここに茶屋があったとか。ちなみにあの小屋は名残ではなくただの休憩所。そしてここが尾鷲市との境でもあるようだ。さああとちょっと。


 ここからは下りが始まる。有難いと思う一方で、足には結構つらい。

 石畳の説明が途中あった。敷設されたのは何時なのか不明で江戸時代頃と推測されているとのこと。降雨地方であるため、谷川に雨水を流せるよう排水溝もあるようだった。

 頂点からは下っているけれど展望台があるようなのでそちらにいってみた。

 おお、凄い景色だ。屋根と椅子付きの建物が一つあるだけの展望台だけど、眼下には大きな町並みが広がっている。これが尾鷲市だろう。広い道路に住宅がさぁっと広がっていて、久しぶりに都会の光景を目の当たりにした気分だ。


 展望台を後にしてしばらくして、古道の反対側の入り口に出た。

 住宅が早速見えるけど、まだ中心部は先。ここからはアスファルトの上を歩く。久しぶりの固い地面に戸惑いつつ、ついに対向車線付きの道路にたどり着いた。


 途中、道脇にあった尾鷲神社でお祈りして、尾鷲駅へと向かう。

 しばらくしてたどり着いた尾鷲駅は、ちょっと情緒漂う平屋建てだった。寂しいというより、町全体の高層ビルのない街を再現して、あえてそういうデザインにしたような感じの駅舎だった。

 さすがに熊野古道×2は疲れたので今日は、このままビジネスホテルに直行して、もう休みます。お疲れさまでした。



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