48日目  南伊勢ー伊勢長島


 さぁ今日も元気に出発。

 せっかく少し進んだ位置にいるので、北にある国道まで戻るのではなく、住宅街を通って、直接海沿いの道を西に進むことにした。どのみち、その先は同じ国道と合流するようだし。

 まずは漁港を左手に見ながら進む。少し山の中に入っていくと神社があった。北野神社。どこにでもある名前の神社だという罰当たりな感想を抱きつつ、軽くお祈りして進む。

 すぐ横が海なのに、上り坂になった。海に面するように山があって、その横を回っているような感じ。国道方面はどうだったのだろう。

 道の脇に、津波一時避難場所と書かれていた。登るのは大変だけど、こういう利点もあるのか。それにしてもこの旅をして、津波や海抜などの標識が多いことに気付く。

 たまに見える海がずいぶん遠く小さくなっている。見晴らしがいいな、なんて思っていたら、ちょうどニラヤマ展望台というものがあった。ちょっとした屋根とベンチが置いてあるスペースがあるだけだけど、そこで少し休憩。ずいぶん無駄に昇ってしまった印象だけど、そのぶん、景色はすごくきれいだった。


 その後も山の脇をくねくねと道が進む。やがて下り坂になって新たな建物が見えてきた。ようやく国道と合流だ。対向車線がある道が懐かしい。道路には鹿飛び出し注意の看板があった。そういえば奈良で鹿を見なかった。

 しばらく歩くと左側に見えていた海が川に変わった。しばらくはまた内陸を通る道だ。


 最短距離を通っていたらまた国道から逸れてしまった。今度は山道ではなく、川沿いを進むルート。山の中の盆地を進んでいる感じ。のぼりがないのは助かる。その後道はくねくねとS字を描くように曲がりながら上り坂になって、国道に再び合流。結局、上り坂を一気に登るか徐々に登るかの違いだったかな。国道はまだきれいで、歩道も整備されていた。


 紀勢南島トンネル。かなり長いトンネルだ。

 トンネルに入ってだいぶ歩いてもまだ先は見えない。途中、非常口の灯りのところに距離が書いてあった。ここから進むと1100m。戻ると400m。つまり全長は1.5キロぐらいあるのか。ていうか、歩道だと思って歩いているけど、ようは非常用の徒歩道なんだよなぁ。ようやく向こうの光が見えてきたけれど、まだまだ長い。そういえばトンネルの「紀勢」って、紀伊の国と伊勢の国だよね。もしかして和歌山県に入った?

 と思って調べてみたけれど、まだ三重県だった。三重県、意外と長い。


 トンネルを抜けても何が変わったわけでもなく山の中。分かれ道があったので、左へ。錦って書いてあるけど、地名なのかな。

 また山の中の道だけど、ずいぶん高くまで昇っているのか、空が広く見える。右に流れる川も下の方に見える。

 少し下って今度は短めのトンネル。錦トンネル。さっきの錦だ。そのトンネルを越えるとようやくぽつぽつと民家が見え始めてきた。

 ちょっとした公園のようなスペースに、時計台のような(時計は付いていない)モニュメントがあって、「ようこそ美人の町 大紀町錦へ」と書かれていた。なぜ美人の町なのか説明は書いていない。大丈夫なのだろう、これ?

 それはさておき、ようやくそこそこ大きい町並みだ。コンビニもあったので、トイレを済ませ、食べ歩ける昼食を買った。


 けどこの町でそれ以上何をするわけでもなく、国道を通ってそのまま通過。

 また山の中だ。そんな中、ぽつんと建物発見。どうやら喫茶店だったみたい。みたいと過去形なのはもうやっていないっぽいからだ。やっぱり山の中じゃ営業できないのかなぁ。

 歩道が小さめなので歩くのが大変。トンネルを何個か越えているうちに、ふと気づいたら周りの山々が同じ高さに見えるくらいになってしまった。景色は良いんだけど、それだけ登っているという事実を突きつけられた印象。


 そのあと県営のレクレーション施設を通過してようやく建物が見え始めてきた。そして久しぶりの信号付き交差点。ここを直進しトンネルをくぐった次の交差点を左に曲がる。ついにここで国道260号線とはお別れだ。

 右側に見えたのは海ではなくて、片上池というらしい。ベンチも置かれていて人が休んでいる。そういえば車に乗っている以外の人も久しぶりに見た。


 池沿いを歩いてついにこれまた久しぶりの駅にたどり着く。紀勢本線の紀伊長島駅だ。一階建てだけどちょっとしたロータリーもあって周りにも建物が目立つ。山の中の無人駅とは明らかに違う駅だ。

 とはいえ、今日の宿泊地はもう少し先。あと一時間ほどの距離だ。

 どことなく歴史を感じさせる道のりを進んで、赤羽川にかかる長島橋を渡る。

 海も近く川幅も大きい橋の真ん中に立つと、久しぶりに空が大きく広がる。うーん。気持ちいい。

 橋を渡った後は正面にある山を迂回するように南側を進む。県道は北側を通っているようだけど、トンネルがあるからこっちの道にする。

 ちなみに正面の山にはかって、長島城があったようだ。長島城といっても、織田信長と本願寺が争った城ではなく別の城みたい。紀伊長島というのも、伊勢長島と区別しているんだろう。けど、伊が被るからややこしいかも。そういえば、伊勢長島は岐阜・京都・奈良と迂回したため歩かなかったなぁ。さすがにすべてを網羅するのは無理だけど、ちょっとさびしい。


 それはともかく、山の南側はかなりの住宅密集地だった。ずっと山道ばかりだったから、すごく都会に見える。

 そこを抜けて県道に戻り、右手に線路、左手に港を見ながら進む。港はドッグになっているのか、結構大きなクレーンがある。

 しばらくすると上り坂が見えて山道になってきた。けど切り開いてできた山道といった印象で。意外と広々としている。

 それでも歩道はなくなってきて、そして長いトンネルである。

 さすがに歩けなさそうなので、迂回路を使う。けどこっちもトンネルだ。歩行者用の車一台がぎりぎり通れるくらいの幅のトンネルだ。結構長くて怖かった。


 そこを抜けると左手に海と家々が見えてきた。少し上ったおかげか、景色がいい。そして少し進んだ先が今日の旅館に到着だ。

 ちなみに周りにも民宿が多いなと思ったら、「歓迎、古里海岸民宿村」という看板があった。民宿村ということで、民宿が集まっているみたい。

 少し余裕があったので、海まで行ってみた。

 堤防を上ると砂浜が広がっていた。特筆する何かがあるわけじゃなかったけど、砂浜から見る海は、高台から見る海と違って、風情が感じられた。おそらく海水浴の時期にはここが人でいっぱいになるから、民宿が多いのかも。

 というわけで、旅館に戻って今日はおしまい。お疲れさまでした。

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