47日目  南伊勢(東)-南伊勢(西)


 さて今日の目標は、今いる南伊勢町にある旅館である。

 同じ町の、今いる東側から西端までゆくのだ。行程時間は8時間ほどとかなりの距離だ。最近は長く歩く癖が付いてぽんぽん市を渡っていたけど、最初の頃は一日一つの市ぐらいのペースだったんだよなぁ。

 それじゃ、そんなに余裕もないので早めに出発。


 ルートは昨日同様、国道260号線に沿って歩いていく予定。そういえば伊豆半島でも同じ国道にずっとお世話になっていたような気がする。そういうものなのかな。

 国道は住宅街に入って生活道のようになった。制限時速も30キロだし。

 けど小さな集落だから、すぐにそこを抜けて山道に入った。看板がないので時速は分からないけど。トンネルを抜けると時速は50キロの看板が見えた。


 志摩の道にしては珍しく直線が続く。そのぶん先の方が坂になっているのが分かる。けど上り坂になりつつも山の中に入るわけでもなく、左手に海が見えてきた。ていうか、すぐ向かいに陸が見えるので、海じゃなくて、川や湖のようにも見えるくらい。

 ある程度登ると今度は下り。この繰り返しは昨日と同じだ。違うのは海が近いことくらい。歩道が綺麗にあるのも有難いけど、何も建物もないのに歩道を作ってどうするんだろうと思ってたら、お店のような建物が見えてきた。

 道の駅ならぬ、里の駅「ないぜしぜん村」。看板はみかんだ。そういえば、三浦半島も伊豆半島もみかんだっけ。そういう気候なのかな。里の駅はお土産屋さんがある程度で、食事やトイレにも中途半端なので、先に進む。そういう観光地がある場所だからか、海が綺麗に見えた。


 また集落。今度は穂原という地名。失礼ながら、思ったよりも家があるという印象。

 気づいたら海が見えなくなって、左方向(南)にも山が見え、海が姿を消した。実際、地図を見ると海沿いの道ではなく内陸を通る道だ。さすがにくねくねしたリアス式海岸をいちいち通る道は大変。


 山の中を抜けると初めて見る看板があった。「屋外広告物 ←許可地域 禁止地域→」という看板だ。今まで歩いてきたのが許可地域で、この先が禁止ということなのかな。その看板がある道路の反対側に、はちみつ直売所の看板があった。ぎりぎり許可ラインだ。この後はこういう看板がなくなるのだろうか。

 そこから山の道は歩道がなくなって歩きにくい。しばらく山道をくねくね進んでいると、○○水産って書いてある看板を発見。禁止地域はもう抜けたのかな。西に向かっていたのに、いつの間にかヘアピンカーブして進路は東になっていた。

 ここから相賀浦という標識があって、町もちょっと復活してきた感じだ。そして再び左手に海が見えてきた。相変わらず入り組んだ湾だ。


 国道260号線は再び海から離れて、また内陸ルートを取る。もうこの国道とは一蓮托生状態だ。歩道があるのは有難いけど、本当に自分以外誰が歩くんだろう。

 相賀浦の長いトンネルを抜ける。地図を見ると脇に登山口があるので、ちょうど山の中を突っ切っているんだろう。

 トンネルを抜けしばらくすると、左側を通っていた歩道が右側に映る。そしてその右側には家々が見えてきた。また山を越え集落にたどり着いた感じだ。


 やがて久しぶりに海が見えてきた。相変わらずの狭い湾だけど、やっぱり海は良い。

 そこに地元の食堂っぽいところがあったので入ってみた。海が目の前にあるのになんか肉が食べたかったのでかつ丼を注文した。そういえば、子供の頃はよくそば屋でかつ丼食べてたなぁなんて思い出した。かつ丼は可もなく不可もなく、代り映えのない懐かしい味だった。


 食事を終えて再出発。

 トンネルを抜け、またトンネルを抜ける。同じ町のはずなんだけど、この辺りは道やトンネルが新しく感じる。

 久しぶりにコンビニを見つける。東宮という地名っぽい。大きな集落かなと思ったのに、また少し歩いたらまた山の中だ。と思ったら、ちょっとした公園と銅像があった。河村瑞賢……って誰? 説明を読んだら江戸時代の商人のようだ。ただの商売人というよりは、治水事業なども行っている地元の政治家みたいなイメージだろうか。なんとなくだけど、三重かるたがあったら名前に載っていそうと思った。

 ※ 後から調べてみたら、本当に載っていました。『航路を開発 瑞賢さん』


 さてその公園を越えるとまた小さな歩道のない道になってしまった。山の北側を反時計回りに迂回するような道だ。どうせなら、トンネル作ってほしかった。って迂回している道なのに、トンネルも二度ほどあったけど。

 それでもようやく山を抜けると、民家が見えてきて海もまた見えた。漁港だ。けどそれもまた抜けてまた山。今日はその繰り返し。


 それでも今日の目的地である、古和浦漁港がようやく見えてきた。

 宿に向かうため、国道から南に逸れると、かなりの住宅密集地だった。あっさり通過してきた集落も、国道から逸れればこんな感じだったのかもしれない。

 今日はその一角にある旅館に宿泊予定。近くに寿司屋もあるので夕食も大丈夫そう。というわけで今日はここまで。お疲れさまでした。

 


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