23日目  御前崎ー浜松


 今日は早目の出発。一気に浜松を目指す予定だけど、グーグルマップで調べたら8時間ほどかかるからだ。山道じゃない分多少は楽だろうけど、久しぶりの長距離である。


 まずはホテルから南に向かい、昨日の国道150号線に戻る。そしてそこからひたすら西へと向かう。

 しばらくはロードサイドによるあるような店が並んでいるのだろうなと思ったけど、ちょっと歩くと、すぐに店はなくなって緑が並ぶようになった。緑と言っても山の樹木ではなく、平野の畑。

 うーん。道的には迷うことなく歩道も広くて歩きやすいんだけど……すでに退屈。国道の周りには畑の緑が延々と広がっている。そういえば静岡って言ったらお茶どころだけど、お茶の木はまだ見ていないなぁ。単純に見逃しただけかもしれないけれど。

 なんて歩いていたら急に道が狭くなった。国道であってるよね? 一車線になって歩道も消えたし。路肩の緑に足を乗せるようにして歩く。車通りはそこそこなのに。じゃまな歩行者ですみません。

 やっぱり国道は歩きにくいので右に曲がって、北側で並行するように伸びている県道372号線に向かうことにした。まずはエポックと書かれた会社の所を右折。これってゲームのエポック社じゃないよね?

 左右に広がるのは、畑か林かという小道を進む。道幅は狭くても国道と違って車通りはほとんどないので大丈夫。あ、お茶畑発見。

 住宅も見えてきてほっとする。ひとつの大きな通りを渡って、さらに進んで県道372号線に入った。

 ……んだけど。

 結局、道幅狭いし歩道ないし。

 今までの経験上、車の国道、歩行者自転車の県道、というイメージだったんだけど、これなら国道の方が良かったかも。


 仕方ない。少しだけ県道を進んで、すぐ左折。国道から来るときに渡った、一個前にあった大きめの通りに戻る。

 こちらは綺麗な道で歩道もしっかりしていた。新しくできた道なのかな。地図だけ道の状態はわからないから、面白い。

 住宅と畑と緑とビニルハウスに囲まれた道。車通りもほとんどなく静かな道を進む。歩いていて気持ちのいい道なんだけど、地図を見ると、このまままっすぐ進めば、また例の国道に合流する流れみたい。まぁ国道に入ってからその先のことは考えればいいかな。今回は長い距離を歩くし、あまり寄り道できないから、まっすぐ歩かないといけないし。

 それにしても空が広い。左手にはさっきからずっと風車が見えている。風力発電にしたらずっと東西に長く伸びすぎているし、なんなんだろう。まだまだ続いている。


 そんなこんなで再び国道に合流。すこし進むと橋が見えてきた。

 菊川だ。左手の南に目をやると、本日初対面の海が遠くに見えた。海沿いの道が歩けたらいいんだけど、工場地帯っぽいし、難しいのかなぁ。

 歩道はあったりなかったりだけど、路肩が広いので車の邪魔にならずに歩いて行ける。あ、ラーメン屋発見。まださすがに早いけど、どこかで食事も考えないと。――って、さすがに今日はラーメン以外がいいかな。


 久しぶりに、道路の上にある青い標識を発見。

 あと何キロ表示はないけれど、このまま進めば目的の浜松だ。右手に曲がると掛川市街になっている。市街っていうことはいつの間にか、掛川市に入ってしまったようだ。最近市境が分からなくて適当なのがちょっと残念。

 高天神城跡の看板だ。歴史的に今日のあるお城なんだけど、進行方向とは別方向で6キロは辛いのでスルー。目的地だけじゃなくて途中の余裕も欲しいかな。

 なんて思いながら歩いていたら、浜松までの距離表示があった。って33キロ? まだこんなにあるのか。平たんな道だけど、大丈夫かな。

 左右に背の低い木々に囲まれた、ずっと一直線の道。なんとなく北海道を思い起こさせる道を進む。歩道もないので路肩に足を半分。アスファルトに比べ足への衝撃は少ないからって自分に言い聞かせつつも、疲労度はずっと高い。


 周りに店も民家もないから、徒歩の自分は滅茶苦茶浮いている。精神的には、国道は歩きにくいかなぁ。というわけで、結局次の信号で右に曲がり、ほとんど畑道のような道を進むことにする。

 このまま国道を進めば「赤ずきんちゃんのおもしろ農園」という、名前的に面白そうな施設があるみたいだけど、まぁ農園だしそこはスルーして畑道(田んぼ)を進む。やっぱり気分的にはこっちの方が車も通らないので楽だ。

 けど畑道も飽きたのでさらに右折して、これまたさっきも通った県道に戻ってみた。久しぶりの歩道だ。民家も適当に並んでいていい感じ。

 しばらく歩くと右手に小学校が。なるほど。それで歩道なのかな。

 小学校を越えた先は歩道があったりなかったりだけど、そのまま進む。


 さてそろそろ食事も考えないと……って思ったら、左手前方に茶色い建物。そこにオレンジ色で書かれたアルファベットの文字が。「OIMOYA」……おいも屋?

 面白そうなので寄ってみると、中は結構盛況。その名の通り、おいも屋で干し芋が名物みたい。旅のお供に、歩けながらつまめる小さめのを一つ購入し、あとアイスクリームをその場で食べた。うーん。おいしい。

 軽く腹ごしらえし、トイレ休憩もして再出発。

 ようやく少しづつ市街地に入ってきたのか、景色が畑から建物に変わってきた。歩道橋だ。久しぶりに見た。そこに地名が書いてあるんだけど、「掛川市横須賀」と書かれていた。横須賀って神奈川以外にもあったんだ。不思議な感じ。

 その先にあるY字路を左に曲がって進むとイオンがあった。

 ここで改めて休憩し、フードコートでカレーを食べることができた。これでカロリー的には大丈夫だろう。ちなみにここは大須賀店。横須賀繋がりだろうか。ここで、あと浜松までどれくらいかグーグルで確認してみた。「4時間44分」。運がいいのか悪いのか。

 時間的にはまだ余裕があるけれど、まだ5時間ほど歩くと考えるとちょっと辛いかな。なんか苦行になって本末転倒な気がするけど、今日一日だけと言い聞かせて出発だ。


 再び国道150号線を進む。不思議なもので、歩き始めの頃は左右に畑が広がる風景が退屈だったのに、再びその風景に戻ると、気持ちよく感じる。

 電柱の住所表示を見ると、いつの間にか掛川市から袋井市に変わっていた。

 そしておなじみの距離表示。「浜松22キロ・磐田12キロ」とあった。

 まだ22キロだけど、だいぶ近づいてきた感じ。でもそうか。浜松の前に磐田市もあるのか。市の横断。道理で長いわけだ。

 道はしばらくまっすぐ。国道らしくしっかりした歩道に時折並んでいるロードサイト店。歩きやすくていい感じ。もしかして掛川市より袋井市の方が道路にお金かけてくれているのかな?

 なんて思いながら歩いていると、大きな川が見えてきた。

 太田川というらしい。その看板の表示にさりげなく「磐田市」と書かれていた。いつのまにか袋井市を突破していたみたい。さぁ浜松まであとちょっとだ。


 橋を渡っても同じような道を進む。でも心なしか、さらにお店の割合が増えたみたい。そして浜松まであと16キロ。よし。ついに十代だ。

 今之浦川を突破。今の裏側? なんか面白い名前だ。

 国道をまっすぐ進んでいると、時折歩道が狭くなる道もあるけれどそれは山奥に入ったではなく、左右に建物が密集しているから。確実に都会(浜松)に近づいている感じ。あ、大判焼きの看板。そういえば今川焼ってこの辺りじゃなかったっけ。すぎちゃったかな。磐田と言えばジュビロの施設もありそうだけど、その標識もなかったなぁ。

 ちなみに後から調べたら大判焼きが今川焼のことみたいだった。


 ひたすら進んでいくと、白い大きな鉄橋が見えてきた。

 天竜川である。掛塚橋という橋を渡る。いつも新幹線から見て大きな川と河川敷だなぁって感心していたけれど、歩いてみるとやっぱり大きくて長い。これが氾濫することなんてあるのかな。

 そして橋を渡り切るとついに「浜松市」の看板!

 ようやくたどり着いた。本日4つ目(?)の市町村だ。

 ホテルは駅前なので、まだ歩くけど気分的にはもう着いたようなもの。イオンからはずっと直線的に国道を歩けたので、時間も思ったより余裕ある。

 浜松に入ると、道幅は小さくなったけれど、それはやはり建物が多く立ち並んでいるから。町中に入った証拠だ。


 浜松市街あと5キロ。さすがに足が棒になってきたけれどあとちょっとだ。

 住宅街の道を抜け大きな川を渡る。川沿いには大きなマンションが何個も立ち並んでいて、いかにも都会な雰囲気だ。さらに住宅街の中を突っ切っていくと大通りに出た。

 企業・証券系のビルが並んだオフィス街。浜松の中心地だ。伊豆の山奥から沼津に出たときを思い出すような光景だ。

 そしてホテル前に到着。このままあと少し北に進めば浜松駅だけど、もうそこまで行くのもめんどい。浜松の名物料理もいいから、コンビニで何か買って、倒れ込むようにホテルにたどり着きました。

 というわけで、今日はここまで。お疲れ様でした。

 

 



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