20日目  静岡ー吉田 →丸子


 さて今日の目的地は吉田である。 

 どこにでもありそうな地名だけど、吉田インターチェンジは何度か耳にしたかな。近くにビジネスホテルがいくつかあるので、そこを目標にした。

 というわけでホテルを出発。静岡駅周辺を歩いていると、改めて都会だなって思う。そんなビルが立ち並ぶ県庁から南西、県道208号線を通って安部川へ向かう。大きな道をまっすぐ歩く。標識によれば、この先は藤枝だ。

 薄緑色の橋が見えてきた。空が広い。さっきまで都会だったのに。

 安部川餅で有名な安部川だ。川自体は大きくないけれど橋は長かった。渡った後は、富士川のときと同じように河川敷沿いを南に進む。

 橋を二つほどくぐったところで、大きな道路が見えたのでそっちに合流。

 さすが静岡市。まだまだ道路もしっかりしていて建物も多い。川原通りを南へ進む。

 大きな道路の下をくぐる。上を走っているのは東名高速だ。今回の旅ではまったく関係のないだけど、ちょくちょくくぐったり並走したり上から見たりしている腐れ縁みたいな関係だ。

 歩きやすい道なのですいすい進んでいると道路標識。国道150号線がこの先左右に伸びているみたい。そして右方向には、「御前崎・焼津」の文字。

 けどそのまま150号線を横切って直進していると、前方に川が見えてきて、道路もそれに沿うように右折していた。地図には載っていないけど変なモニュメントのある、そこそこ大きな公園があった。そこでトイレを借りてひと休憩。

 西の方には山影が見える。山があるイメージじゃなかったけど、建物より自然の方が逆に歩いている感じがしていいかも。都会の方が歩きやすいんだけどねぇ。

 さて出発。川沿いを歩いて橋を見つけ、向こう側に。川は丸子川と書かれていた。そのまま南に行って広野海岸公園の方に向かう。おお。久しぶりの海だ。

 そして西に進むと、ちょっと地図を見て気になっていた湾だ。見事な真四角なのだ。用宗漁港。人工的に作られた港なのかな。

 そこを越えると、今度は海沿いの緑地を歩く。沼津・富士の間にあった防風林と堤防を思い出すよ。

 ベンチで休憩して今後のルートを確認する。うーん。意外と山沿いの道だ。大丈夫だろうか。再出発。堤防の道を歩いていく。久しぶりの海は気持ちいいんだけど、目の前に広がる絶壁のような山が心配だ。海沿いを抜けて、線路と建物にはさまれた道路に入る。

 そして……


 えっと……どうしよう。これ、歩いていけるような道じゃない?

 唯一の道路は、海の上を渡るように伸びていた。あとは断崖絶壁である。車専用の道路のようで、歩道はない。こんなところ歩いていたら轢かれても文句言われないような道だ。少しだけならって根性で進む手もありかもしれないけど、地図を見た限り、まだまだこんな道が続きそう。

 しかたない。

 いったん戻ろう。

 

 進むのを断念した県道416号線を東に逆戻りする。

 さっきまでは県道を使わず海岸線のルートを通っていたので、全く同じ道を戻らなくていいのは、精神的に助かる。

 しばらく歩いて用宗駅に到着。ていうか「もちむね」って読むのか。ずっと、「ようそう」って読んでたよ。

 駅前だから何か食べるところがあるかなって思っていたけれど何もなかった。とりあえずトイレを利用して、ベンチに座って考える。

 地図を確認すると、安倍川駅の西から国道1号線を通って内陸を進むルートがあった。こちらのほうがいわゆる江戸時代の東海道ルートみたい。峠越えの難所だそうだ。知っていれば、安部川を渡ったあと、川沿いを南に進まなかったのに。

 後悔しても遅いので、今日はあのあたりで休んで、峠越えに備えよう。

 幸いそのあたりの、丸子という場所に民宿があって、予約することができた。


 というわけで用宗駅を出発。住宅街を抜け、線路を渡って北へと進む。国道や高速の高架の下をくぐる。下から見ると壮観だなぁ。

 しばらく歩いて橋を渡る。丸子川って、あの公園のところを流れていた川だ。相変わらず川幅は控えめだけど、一級河川と書いてあった。基準を知らなくて調べてみたけど、よく分からない。まぁ重要な水系で国が管理しているのが一級で、それ以外の都道府県が管理しているのが二級、でいいのかな。

 とにかく安倍川駅はもう少し。

 長田街道と書かれた道をさらに進む。そこから右に曲がると、それなりに近代的な駅が見えてきた。安倍川駅だ。

 けれど住宅街の駅って感じで、ひそかに期待していた安倍川餅が売っているところが見つからなかったのが残念。ちゃんと探せばあったかもしれないけれど。

 仕方ないので喫茶店で食事をし安倍川餅はあきらめて、出発することにした。

 線路沿いを北に歩きながら、国道1号線に合流。この1号線との付き合いも長いよなぁ。

 標識の浜松・藤枝の文字を見ながら西へと進む。さすがに国道だけあって道幅広くて歩きやすい。近代的な東海道だ。

 しかし進むにつれ、峠越えっぽく山に向かっている感じがひしひし。

 そんな国道を右にそれてしばらく歩いて目的地に到着。普通の料理屋さんみたいだけど、本当にいいのだろうか? けど先に予約していたし電話で旅の目的や事情も話していたので、温かく迎えてくれました。

 なんかいろいろあって今日は疲れた。

 けどこういうハプニングも旅らしくていいかも。なにげに直前の目的地変更って、初日のラブホテル以来かな。って、今日向かう予定だった吉田のホテルをキャンセルしなくちゃ、って今頃気づくのだった。

 



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