14日目 松崎ー土肥
さぁ今日も出発だ。
鉄道が近くを通っていない代わりにバス輸送が発達しているのか、結構な規模のバスターミナルを越えて北へと進む。だんだん町並みが減ってきて、上り坂になった。
さっそく山道かなぁと思ったんだけど、坂を上り終えると、目の前には山ではなく、海が広がっていた。位置的には海沿いを北上しているのだから海が見えてもおかしくないけど、昨日の後遺症か、珍しいことに思えてしまう。
道路わきに彫刻が見えてきた。90・60・30度の三角形ぽい彫刻の前に女性と子供の像が立っている。何の像かと思ってきたら「安全運転誓いの塔」と書かれていた。なぜ唐突に? まぁ徒歩の自分に安全運転は関係ないけど。
像の先は、右手に切り立った山、左手に海の道路。事故が起こりそうと言えばそうなのかも。なんて考えながら歩いていると、意外にも早く次の町に着いた。西伊豆だ。けど今日の目的地はさらに北上して、土肥までいく予定だ。
昨日の反省で、今日は海沿いの道を歩く。船が並ぶ港沿いを歩いていくと、海沿いに露天温泉があるみたい。温泉はさすがにまだ入らないけど、それとは別に、白岩山岩壁窟画というものがあるようなので寄ってみた。
丘をくりぬいて作られた岩窟の壁に、仏像の壁画が施されていた。歴史的価値は感じたけど、わざわざこれを目的に来るほどの物じゃないかな。穴場スポット的な感じだ。
さらに北に進む。今度は堂ヶ島という場所に着く。ここも有名観光地っぽいけれど、自分は初めて知った。さっき寄り道したので、ここはスルー。
それでも道沿いから左手に見える海に広がる島々は、日本三景の松島みたいな感じで絶景だった。
この辺りは観光地ということでホテルが点在しているから、道も歩道があって歩きやすい。
そんな道もホテルから離れれば、昨日のような山道に。まぁまだ家並みはあるかな。目の前に久しぶりのトンネルがあったけど、看板に「歩行者あり。スピード落とせ」と親切に書かれているので、自分のような歩行者もいるのだろう。
幸い車とすれ違うことなくトンネルを抜けると、港っぽい町並みが左手眼下に広がっていた。なるほど。確かに人は住んでいるんだ。
なんて失礼なことを思っていたらどんどん町並みが大きくなった。田子という場所みたい。海は湾になっていて現代的な光景だ。
それを眺めつつ、町を抜けると、海ではなく山の中に逆戻り。
トンネルを何個か抜けると、安良里という場所に出た。昨日と違って、ちょくちょく集落が点在しているので有難い。
国道を逸れてそちらに向かうと、お食事処があったのでそこで昼食。小さな食堂だったけど、港町らしく魚料理がウリみたい。アジのたたきは美味しかったです。
というわけで食事を済ませ出発。安良里の町を抜け、国道136号線に合流。
しばらく進むと、大きなトンネル。「歩行者・自転車に注意」の看板があるので歩いて抜ける。先が見えないほどの長さだ。トンネルを抜け出して振り返ってみると、黄金崎トンネルと書かれていて、その隣に全長964メートルとあった。おお。もしかして新記録? 道理で長いわけだ。
トンネルを抜けると、また集落というより街に入った。今度は宇久須という場所だ。標識に「土肥温泉」の文字が見えた。このまま国道を通っていけば今日のゴールだ。あとは人が歩けるかどうかだけど。
なんて思ってたら、さっそくトンネル。でも町中のおかげか、歩行者用の道があるので気楽に突破。距離もさっきのトンネルに比べたら短いし。
そしてまたトンネル。抜けたと思ったら道路はまっすぐ前方の山に向かっていて、またトンネルがありそうな感じ。
トンネル・またトンネル。ゲシュタルト崩壊。多少歩行者っぽい道があれば、どうどうと歩けるようになったくらい。
そして何個超えたか分からないとき。また観光地っぽいものが見えてきた。
恋人岬?
一人旅の自分が近づいちゃいけない気がしたけれど、好奇心で寄ってみた。
なんか結ばれた感じの手の彫刻と、駅の標識みたいなものがあった。ここの駅名と上り下りの駅が左右に書かれているアレだ。その標識には、ここが「恋人岬」で左に「といおんせん」右に「けっこん」って書いてあった。
って土肥温泉の位置が逆じゃない? ていうか、「どひ」じゃなくて「とい」だったんだ。今初めて知った。
ここから見える海の景色は綺麗だった。恋人と思われるカップルが何組か見えた。一人だと精神力を削られそうだったので、これくらいにして恋人岬を後にした。相手がいる人にはお勧めのスポット、かもしれない。
再び国道に戻るとさっそく山道。恋人らしさはあっさり消えた。
さて歩こうと思ったら、また気になるスポットが出てきた。
今度は日本一のだるま寺、とか。
なにこれ面白そう。歩き始めたばかりだけどまた寄り道。土肥達磨寺の境内の中に入っていくと……あれ? 達磨発見。お賽銭箱の上にあるんだけど……思ったより小さい?
かと思ったら、日本一の達磨の方は本堂の方にいるみたい。というわけでさっそくそっちも見に行った。おお。確かにでかい。
選挙で目を入れるような、よくある大きさの達磨に囲まれるようにして、奥に大仏のような達磨が鎮座していた。丸さがないので、達磨というより大仏みたいだったけど、まぁこれはこれで味があるかも。
この寺の境内からは、天気がいいと富士山が見えるようだけど、残念ながらそれは見えないまま、最後にお皿を思いっきり割って(投げ皿祈祷というスポットもあった)お寺を後にした。
昨日はただ歩くだけだったので、こういう寄り道が出来ると楽しい。日本を回っている実感ができるのはいいよね。
さぁ、元気を出していこう。
しばらく歩いていると下り坂になって、その先にちょっとした街並みが見えてきた。先に広がる光景、街並みが綺麗。そこには、「ようこそ、伊豆市へ」の看板。あれ? じゃあ今までは何市だったんだろう。
ともかく、土肥温泉まではあと8キロ。
今日は食事もちゃんと食べられたし、昨日みたいにひたすら山道ということもなく、いろいろ観光地を見れているし、いいペースだ。
ここから先の国道は下り坂が多いから楽だった。観光客のためか歩道が自転車も余裕で通れるくらい広く整備されていて歩きやすい。普通に家並みもあるから気分も楽だ。
海沿いの道を抜けると、再び街並みに入ってきた。八木沢という地名だ。
しばらく歩いているとまた面白そうな看板が目に入った。この先に土肥金山という金山があるとのこと。金山なんて佐渡くらいしか知らなかったけど。そういえば「信長の野望」で北条氏をプレイしながら金山掘っていたなぁ、と思い出した。
ただその金山はまだ少し先。
八木沢トンネルを抜けるとちょっとした山道になったけど、すぐにそこを抜け眼前に海が広がってきた。そこには土肥の地名。ようやく到着だ。青い海。白いホテルに、綺麗な道路。まさに観光地って感じだった。
少し先にフェリー乗り場発見。ここから駿河湾を渡って、清水に行けるみたい。歩いて清水まで着くのは何日後だろうか分からないけど、清水まで着いたら、意味もなくフェリーに乗ってここまで戻ってこようかな、なんて思った。
フェリー乗り場には、例の金山の案内もあった。あと800メートルだ。
そこから町中を通って、土肥金山に到着。駐車場やお土産屋が広がっているだけで、金山っぽくないけど、たぶん奥にあるんだろう。もうゴールは目の前だし、寄ってみた。
テーマパークって感じで体験できるものも多く、家族と来るといい感じかな。
一人の自分はとりあえず坑道を巡って、世界一という250キロの金塊を見て触るくらいだったけど、十分楽しめた。自分のものじゃないのに、近くで見ているだけで金持ちになった気分になるから不思議だ。
というわけで、金山を出たらいい時間になってきた。
宿泊地はすぐそこなので今日はここまで。お疲れさまでした。
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