11日目  熱川ー下田


 さぁいよいよ今日は、伊豆半島の最南端、下田を目指します。

 地図で見ると伊豆半島って意外大きく、今日もそれなりに歩かないといけない。

 伊豆熱川の駅の反対側に出ると、仮面歴史館というまた気になるものがあったけど時間がないし、まだ開館前なのでスルーして出発。坂を下って海沿いの県道113号線に出る。今日はここを進んで行く予定だ。

 車どおりも少なくて楽な道。ずっとこれならいいんだけど、そうもいかないんだろうなぁ。庭園みたいなところを抜けると大きく開けて海、じゃなくて川が眼前に広がった。白田川である。橋もなく先に渡れないので、右折して川の上流方向に進み、橋を見つけてそこから川を渡る。

 そのまま歩いていたらもう次の駅、白田駅が見えてきたけど、まだ早いので特に寄ることもなくスルー。線路の下をくぐるようにして通過して、再び国道135号線、東伊豆道路に出た。これをまっすぐ行けばいいんだけど、車どおりがあるのと歩道がない場合が多いのが問題なんだよなぁ。

 今はちゃんと歩道もあるので国道を進んでいたけれど、予想通り歩道はさっそくなくなってしまった。狭いトンネルも見えてきたけど、根性で入り、光らせたスマホを手に持ち振り回しながら早足で抜ける。そしてトンネルを抜けたら、さらに山奥だった。予想通り……。

 けど意外なことに、すぐに建物が見えて開けてきた。

 右手に大きな駐車場のあるひものやさん。気になるけどさすがに旅に持ち歩けないのが残念。近くに高校もあるみたいで生徒たちの声も聞こえる。下田までずっと山道覚悟していたけど、これならしばらくは大丈夫かな。

 相変わらず歩行者に優しくない道なので、地図を見て住宅街を通っていけそうなルートを見つけて、そっちを進む。近道かもしれないし、車もないのはいいけれど、くねくね迷わないように歩くのは、それはそれで大変。

 そして国道に合流してやっぱ国道は歩きやすいなぁとおもう、の繰り返しだ。

 やがて「これより河津町」の看板。けど河津町を知らないのであまり感慨ない。すみません。やたら温泉までの距離が書かれているけど、下田はのっていない。やっぱりまだまだ遠いんだろう。

 道の駅があったので一休み。伊豆オレンヂセンター。「ジ」じゃなく「ヂ」なのが特徴だ。本来車旅の休憩所で、徒歩で来る人は珍しいと思うけれど、道路沿いにある分、自分としては鉄道の駅より利用しやすいかも。ミカンジュースは月並みだけど、甘くて柑橘の香り高く、美味しかった。

 休憩も出来て再出発。しばらく歩いてまたトンネルがあったので、迂回路を通る。するとちょっとした平原が広がっていて、今までの伊豆らしくない雰囲気になった。高原の避暑地みたいな感じだ。同じ風景ばかり見ていたのでこれは新鮮。住宅街なので歩きやすい。児童に注意ということは近くに小学校もあるみたいだ。

 そこを抜けると海も見えてきた。海沿いを通る道のようだ。

 植えられた木々の隙間から海を見ながら歩いていたら、岬の部分がちょっとした公園のようになっていてベンチもあったのでそこで休憩。今井浜という石碑が建てられていた。そこには竜宮伝説の地って書かれているけど、詳しい説明はない。たぶん、日本各地に主張しているところがあるんだと思う。竜宮伝説。

 さて、ここまで三時間ちょい。そろそろお昼時だ。海沿いを沿うように進んで国道に合流する。右に曲がれば今井温泉の駅前だ。ただ少し逆戻りになる。もう少し先に河津駅もあるみたいなので、そこまでがんばってみることにした。

 というわけで国道を進む。この辺りは歩道も整備されているので楽。トンネルは歩行者用の迂回路を通って突破すると、そこそこ整備された町並みが広がっていた。国道からT字路を右に曲がって、河津駅まで向かう。この町並みは人間国宝館にいったときと同じ感じ。海沿いを通る国道からちょっと内陸に入ったあたりに駅があるのだ。

 河津駅は高架の上にあって、都会っぽい雰囲気だった。駅近くの店で、海鮮丼のランチをいただく。海鮮丼を食べると何となくその地域の食事を満喫している風に思える不思議。実際、仕入れ先はどこも豊洲かもしれないけど。

 赤い手すりの橋で河津川を渡って左折。再び国道に合流して南下する。

 けれど相変わらず歩道はなく、ときおり、歩きはこっちと、示すようなわき道が何個か見える。その中の一つが、地図を見ると一応、下田までつながっている。

 少し考えて、そっちの山道っぽいルートにした。


 本当に山道だった。

 アスファルトで舗装されているけれど、道幅は狭く、右にも左にも生い茂った木々が小さな道路を埋め尽くすように伸びている。

 そんな小道を上ったり下りたりくねくね曲がったりしながら歩いていると、少し開けたところに出た。ちょっとした高原みたいで悪くはない。

 ときおり民家が見えるけど安心するというよりは、こんなところを歩いていて不審者に思われないかの方が心配だったりする。

 さて再び分かれ道だ。左に曲がれば再び国道136号線。白浜を通って海岸沿いに下田に向かうルートだ。一方で右に曲がれば、このまま山道を突っ切って国道414号線に出る。こちらでも下田駅までいけるようだ。

 日本一周といいながら、海岸沿いだけ回って内を歩かないのももったいない気がしたので、右の国道414号線ルートを選んだ。

 相変わらずの山道。それでも少し道幅も広くなって道もきれいになったみたい。時折休んで汗を拭いて水分補給しながら歩く。

 落石注意の看板。それはまぁ山道なので問題ないけどその下にさりげなく「下田市」と書かれていて、感動とともに微妙な気持ち。また境目を知らずに次の市に入ってしまっていた。

 しばらく山道を登って下って、一気に大きな立派な道路に合流した。そこから少し直進し、ようやく国道414号線、別名下田街道に合流した。

 内陸部を流れる稲梓川に沿うように伸びる道を南下するたびに、建物がどんどん増えてきて、ゴールが近いことを示してくれる。

 前方にきれいにとんがった山が見えた。その気になる山を目印に歩いていると、大きな住宅街になってきた。この規模はさすが下田である。

 こうして無事、下田駅に到着。駅自体は一階建てだけど広く、ロータリーも大きくて、そこかしこにヤシの木が植えられていて、終点の最果て、南国のリゾート地って雰囲気を醸し出していた。伊豆半島思った以上に長かったよ。

 というわけで、観光は明日にして今日はここまで。お疲れさまでした。



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