9日目  熱海ー伊東


 横浜を出て九日目。

 一晩寝てだいぶ体力回復したけれど、やっぱり身体が重たい。足もけっこう痛いし。今回はビジネスホテルに泊まったけど、今日の目的地である伊東は温泉宿に泊まろうと決意した。

 というわけで出発。一昨日の反省から、多少歩きにくくても国道135号線沿いを歩く方向性で。

 さすがに駅前はしっかりと歩道も整備されていて歩きやすそう。

 伊豆半島に来る前は、熱海の次は伊豆半島南端の下田、なんて考えていたけれど、標識によれば、下田74キロ 伊東21キロ。思ったより遠かった。というわけで、まずは素直に伊東を目指していこう。

 さすがに熱海も伊東も有名リゾート地とあって、その間をつなぐ道も立派だ。

 それでも、まっすぐ歩いていると坂道になり、目の前に山が迫ってきた。昨日の悪夢がよみがえる。けど幸いなことに山を登ることなく、トンネルになっていた。

 これはこれで不安なんだけど、歩行者用の道があるので、恐る恐る左に寄りながら抜ける。

 しばらくしてまたトンネル。今度は歩道がないけれど、左に迂回路があるのでそっちを歩く。そして何気なく後ろを振り返って驚いた。

 山の上に、なんとお城が建っていた。

 熱海城? そんなお城あったっけ? これでも歴史に詳しい方なので疑問に思って調べると、歴史的なものじゃなくて観光施設みたい。あの有名な秘宝館もあそこにあるようだ。けど通り過ぎてしまったので、また今度。それにしても一昔前の昭和感が出ていて、いかにも熱海っぽい感じだ。

 迂回路から、また国道に合流。しっかり歩道があって安心だ。もしかして昨日もこんな道だったかなと、ちょっと後悔。

 またトンネルがあったので、今度も左の迂回路を歩く。海が近くて綺麗だ。迂回路は車もほとんど通らないので、歩きやすくて気持ちも楽だ。

 国道に戻ってまた進む。歩道付きだ。少しずつ建物が増えてきて、しばらくすると漁港が見えてきた。道幅も大きくなって駅が近づいてきた感じ。

 実際地図を見ると、伊豆多賀という駅が右手にあるようだ。

 でもまだ大丈夫そうなので寄らずに直進する。

 道路のすぐ隣には砂浜が広がっている。せっかくなのでそっちを歩いてみたけど、やっぱり砂浜は歩きにくいので、すぐ戻った。

 それでもこの海沿いの道は、しばらくこんな続いているっぽい。

 それにしても、同じ海なのに三浦半島や湘南とは違った感じの海なのが凄い。海の写真検定みたいなものがあったら受けてみたい。

 伊東まで14キロの標識。たしか前回が21キロだったから……ちょうど三分の一を歩いたということかな。

 昨日のような限界には挑戦したくないけど、時間的にもちょっと余裕があるし、寄り道してもいいかも。

 というわけで国道から右に曲がって、住宅街に入り、そこを抜けて網代駅に到着した。こじんまりとした駅だった。あじろ温泉って看板があったけど、熱海や伊東に挟まれていると知名度的にどうなんだろう。温泉がデフレしているよ。

 とりあえず駅前の喫茶店で一服。昼食代わりに軽い食事をとって、再び国道に戻って、伊東を目指す。

 さっそくまたトンネル。新網代トンネルって書いてあってその横に525メートルとの表示。地図を見たらこれも住宅街を通って迂回できそうだったのでそっちを進む。

 住宅街を抜け国道に戻ったとおもったら、またトンネル。歩道があるのでトンネル内へ進む。車が通るたびに、精神的には削られるけれど山道よりはまし。今回は迂回路ないし。慣れてくれば、大丈夫。

 トンネルを抜けると地味な上りが続く。気づくとさっき砂浜を歩いていたはずの海がずいぶん下に見えていた。やっぱりけっこう上ったみたい。

 しばらく左に海・右に山な道を歩いていると、不意にその右側に白い大きな建物が見えてきた。ホテルかなと思ったけどマンションのようだ。海が正面にあって景観はいいんだろうけど、ずいぶん不便そうなところに作った気もする。

 マンション以外にも、あじろ食堂と大きな看板があり、昔ながらの昭和っぽい白い角ばった建物からロッジ風の建物までいろいろと並んでいた。道の駅というより、ぽっかり温泉街に入ったような感じだ。駅からずいぶん離れているけど、ここが「あじろ温泉」なのかな。

 せっかくなので休憩がてら、お店に入って海鮮丼をいただいた。もっとも、看板にあった、あじろ食堂だと思って入ったら、別の店だったけど、まぁいいか。

 休憩を終え出発。

 しばらく進み、「伊東市」の標識を発見。特に何の境があるわけじゃないけど、無事静岡県二つ目の市に突入だ。

 しばらく歩いていると、またトンネル。御石ヶ沢トンネルである。さっきより長い536メートルとなっている。いちおう迂回できそうな道もあるんだけど、入口からして獣道のような感じだったので、中を通らせてもらった。歩ける場所もあるのでそこを進んだけれど、何となくこれって、歩いて抜けるための道じゃなくて、非常時のための道のような気がする。

 肩身の狭い思いをしてトンネルを抜けたと思ったら、またすぐにトンネル。今日何個目だっけ。横須賀に向かうときの記録を越えたんじゃない? それにあっちに比べ、こっちは一個一個の全長も長いし。

 しかも今度のトンネルは、新宇佐美トンネルと言って、全長は710メートルとなっていた。幸いこっちには車一台くらいは通れるアスファルト敷きの迂回路があったので、そっちを進む。

 ちょっと上りだけど、車の通らない静かな道はやっぱり気持ちいい。しばらく歩いているうちに、釣具店が見えてきた。まったく人気が無いとそれはそれで怖いので、建物が見えるとホッとする。車通りも建物もほどほどが一番だ。

 釣具店の先に進むと、無事国道に合流。しばらく歩いているうちに、ようやく集落が見え始めてきた。

 地図で確認し、国道から逸れて、宇佐美駅に向かう。駅への途中の住宅街は思ったより栄えていたけど駅は質素な感じだった。もちろん電車には載らず、トイレ休憩をして、また海岸線沿いの国道へ戻る。

 この辺りの海岸は海水浴場になっているようで、砂浜が広がっており、サーファーの人も見られた。山の中の海岸絶壁の上と違って、こういう道は歩きやすいので大歓迎だ。

 その後、砂浜は無くなっても歩道は綺麗に整備されていたのでストレスなく進んでいくうちに、伊東まであと2キロの表示を目にした。先にある海沿いに白いホテルが立ち並ぶ姿はいかにも観光地っぽい。

 標識に従い、伊東駅を目指しY字路を右に進む。海から少し離れ、JRの線路を右手に見るようにして、並行して歩く。けれどまだあまり伊東って感じがしない。ちょっとさびれた住宅街だ。

 それでも徐々に建物が目立ってきて、ようやく伊東駅に到着。もっとも、思ったより駅が小さくてちょっと意外だった。

 けれど単に駅の北側は寂しいだけみたいで、駅をこえてさらに南へ歩くと、一気に「伊東」らしくなってきて、目的の温泉付きホテルに着いた。

 よし。今日は本気でゆっくり休むぞ。

 というわけで、今日はここまで。お疲れさまでした。


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