5日目  城ケ島ー鎌倉


 今日は少し早めの出発だ。というのも一気に鎌倉まで向かう予定だからだ。

 さっそく昨日の大橋へ。そういえばこっちには料金所がないんだけど、出口は一つだから一緒か。料金所のおじさんに挨拶して本州に戻ってきた。

 早い時間だけあって空気が心地いい。こういうのもたまにはいいかも。


 三浦半島の南端まで来たので今日は北方面へ、しばらくは普通の住宅街を歩く。

 そこそこ歩いていると、道路標識に「鎌倉」の文字が。あと何キロと書いてないけれど、その文字を見ただけでも近づいてきた印象だ。

 県道26号を北へと進んでいく。イメージ的には昨日より田舎の山道を歩くのでは……って思っていたけれど、さっきからずっと街並みを歩いている。

 三崎警察署前の交差点をさらに直進してしばらくすると、標識に「葉山・鎌倉」の文字。あ、そっか。三浦半島のこっち側って、あの高級っぽいイメージの葉山があるんだっけ。田舎扱いして申し訳なかった。道路がしっかりしているのも納得である。

 ちなみに鎌倉までは22キロ。……まだまだ先だ。


 畑が多くなってきた道を直進していると、人の数が増えてきた。

 京急の三崎口駅だ。京急は何度も利用しているので聞いたことのある駅。崎っていうくらいだから海の近くにあると思っていたけれど、畑の真ん中にあったのはちょっと意外。

 三崎と言ったらマグロだけど、昨日食べたのでそれはまぁいいか。昼食にもまだ早いし。

 それにしても京急の終点三崎口。横浜駅から特急を使っても一時間くらいはかかるはず。相変わらず電車に比べて薄い人生を送っているけれど、分と時間じゃ、イメージも違う。

 ようやく遠くに来たものだ。

 と感慨深くしていたけど、調べてみたら微妙に一時間掛からない距離だった。


 駅を後にしても少し歩いて坂を下ると、街並みが見えてきた。こっちの方が駅前より栄えているのが不思議だ。

 国道134号線を直進。コンビニでトイレを借りてふと看板を見ると、横須賀市になっていた。

 あれ戻っちゃった? でも半島の地形を考えるとそれが正解なのかな。

 さらにすすむと、左手に道の駅っぽいのが見えた。そこにはJA葉山の文字。ついにセレブ御用達の葉山である。

 陸上自衛隊の駐屯地を通り過ぎる。自衛隊に関係あるのか分からないけど、歩道の幅がこの辺りは大きくて歩きやすい。

 道路標識に「葉山9キロ」の文字。あそこは葉山の野菜が置いてあるだけで、まだ葉山じゃなかったのか。

 なんてことを考えつつ歩いているとまた自衛隊武山駐屯地の看板。それを見て、いままで左手にあった公園みたいなのが、全部駐屯地だったんだことに気付いた。広い……。

 そしてその前を過ぎると歩道が一気に狭くなった。やっぱり自衛隊関係あったんだろうか。

 川を二つぐらい渡ったところにファミレスがあったので、そこで休憩も兼ねて昼食。せっかくの三崎だけどそこはあまりこだわらない。

 このあとすぐ、本マグロと書かれたお店があって少し後悔したけど。


 北に向かっていた国道は、三浦半島の形に添うように北西に方向を変えた。小さなアップダウンを繰り返しているうちに、徐々に道幅が狭くなってきて、前方には山が見えるようになってきた。

 国道は正面の山を西から迂回するように伸びている。その通り進んでいると、左手に海が見えてきた。久しぶりの対面に心も弾む。右側にはさっきまで正面に見えていた山があり、そのふもとには、一戸建て(といっても小さな家なら二三軒建てられそうなほどの大きさ)の家々が、綺麗な建物が並んでいる。いよいよ葉山! って感じだ。

 少し内陸を通って再び海の傍へ。関根海岸沿いの道は海岸に沿うように遊歩道が設置されているので歩きやすく気分も楽だ。

 そんな海を正面に見るかのように立ち並ぶ家は、みんな立派なものばかりで、ザ別荘!みたいな感じだ。もしかして有名人の家もあるかも。ちょっと自分の場違い感がつらい。

 それでも道が再び内陸部に入っていくと、周りの住宅も庶民的な感じになってきて、ちょっとほっとする。

 なんて思っていたら左側に公園のような緑が生い茂った敷地があった。なぜか警察官が門の前に立っている。何だろうと何気なく見てみたら、あの葉山御用邸だった。庶民的って言って、ごめんなさい。

 それでも、国道134号線を逸れて県道207号線を通るようになったからか、こじんまりとした建物も目立つようになってきた。

 かと思ったら、大きな塀に囲まれた美術館のような家もあるし……って思ったら本当に美術館だった。

 そんな感じで海を横目に見ながら歩いていたら、県道はいつの間にか住宅街の間を抜けるような小道になってしまった。対向車線もなくなっちゃっているし。

 それでもちょっとした商店街っぽいところまで出ると、ほっとする。とあるお店のシャッターにはドクタースランプあられちゃんのでっかな絵がシャッターに描かれていた。かなり上手な絵でびっくり。大正屋って書いてあるけどシャッターが閉まっているわけで、何のお店かは分からなかった。

 商店街を抜け、海が見えるコンビニでひと休憩。

 それからしばらく歩いて、逗子市に入った。

 市を境に道路の舗装度が変わるって聞いたことあるけど、逗子市に入ったら心なしか道が綺麗になった感じがする。テレビで逗子vs葉山論争を見たことあるけど、この点では市である逗子の方が上かな?

 なんてことを考えつつ進んでいると、御用邸の辺りでいったん別れた国道134号線と合流。一樹に車通りが多くなってきた。長かった三浦半島を突破したのだ。

 道路標識に、鎌倉まで4キロの文字。あとちょっと。


 左に広がる海岸は、逗子海岸海水浴場。夏になったらテレビに映るように、人がたくさんいそうな雰囲気の大きな砂浜だ。

 すぐ左に海があるのに左右を山に囲まれた訳の分からない道を歩いていると、今日もトンネルだ。伊勢山トンネルと書いてある。

 ちなみに歩道がトンネルの入り口で途切れていて、不安になるけど、他に道もなく戻るわけにはいかない。いちおう歩く部分もあるので、携帯電話を光らせ、身体をトンネルの壁に引っ付けるようにしながら恐る恐る歩く。車が通るたびにドキドキするけど、車が通らないとライトの光がなくて暗いからそれはそれで怖い。

 今までで一番長く感じたトンネルを抜けてほっとする。出たらまた歩道が復活したから、通って大丈夫だったんだよね?

 相変わらず歩道らしい道があったりなかったりだけど、たまに自転車に乗ったおばさんや、ランニングしている人とすれ違うと自分も許された感じがして嬉しかったりする。

 そして再びトンネル、飯島トンネルを抜けると、目の前にきらきらと光る海が広がっていて、思わず声が出そうになった。海なんて何度も見ているけど、山の中のトンネルの暗い道からこれを見ると、なかなかの感動物だ。

 そして小さな標識に「鎌倉市」の文字。ついに鎌倉まで歩いて来たのだ。

 道路の左に延々と広がるのは、これまたよく聞く由比ガ浜海岸だ。さすが有名な地だけあって、広がる海岸は、すごい開放感。

 今日はその先にあるホテルが宿泊地だ。海岸を真正面に見るように立っているので、景色も楽しみだ。

 というわけで。今日はここまで。お疲れさまでした。


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