4日目  観音崎ー城ケ島


 四日目の朝を迎えた。

 リゾートホテルみたいな感じなので、まるで異国にいるみたい。

 思えば遠くまで来たものだ。……って、電車で換算するのは昨日の反省で止めておくけど。

 

 というわけで。まずは今日の目的地を検索する。

 今いる場所は三浦半島の一番東側。長靴で言ったらかかとの部分だ。距離を考えると、ここからつま先の部分、三浦半島の最南端のその先、城ヶ島まで行けそうだ。

 約5時間ほどの道のり。休憩などを入れるとちょうどいいくらいの距離だ。

 よし。それじゃ、さっそく行ってみよう。


 ホテルを出て 海岸線を左手に見ながら歩く。空気も風も気持ちいい。遠くには灯台が見える。

 最初の分かれ道。左に曲がったら見えている灯台の近くに行きそうだけれど、今日は結構歩く予定なので、まっすぐ進む。

 海岸線を通っていた道がやがて山の中に入って行き、一日ぶりのトンネルを抜ける。すると今度は下り坂。

 上って下って時には山を突っ切って、進んで行く。

 この辺りは観音崎公園の一角のようだ。そのため観光客用の歩道になっているので、自分にとっては歩きやすくて助かった。

 その公園地帯を抜け、曲がり道を左に、久里浜浦賀方面に向かって歩いていくと、徐々に漁港っぽい感じになってきた。

 そして再び分かれ道である。

 標識を見ると、左がかもめ団地。右が浦賀となっている。

 道なりに歩くと右方向なんだけど、あえて海沿いを歩くため左の道に進む。

 歩いていると道路の右や左に、確かに団地っぽい白いマンションが何個も見えた。けどあまり人がいる感じじゃないなぁ。一昔前の団地といった感じだ。

 それでも、右の山沿いにも左の海沿いにも白い建物が多く見える。景観はすごくいい土地だ。このあたりの家賃って、高いのかなぁ。

 なんてことを考えながら歩いていると、右手に神社があったので軽くお参りして、ひと休憩。

 叶神社。叶う神社っていい名前だけど、最初は例の姉妹が思いついたのは秘密だ。


 さて、ここまでまだ一時間足らず。いいペースなのかな。

 再出発して進むと、思いっきり住宅街に入ってしまったけれど、まっすぐ歩いていたら海が見えたので一安心。さらに進むと、大きな通りが左右に伸びていた。

 地図を見て確認すると、先ほどの標識にあったかもめ団地と浦賀の分かれ道の、浦賀方面を進んだ先の道がこの大きな通りみたいだ。てことは、遠回りしてしまったってことかな。

 右に曲がったら戻ってしまうので、左へと向かう。

 やがて人通りが多くなってきて道もきれいになっていく。京急の浦賀駅だ。昨日から線路を見ていなかったので、駅のことをすっかり忘れていた。

 駅前らしい舗装された歩道を歩いていると右手に神社の鳥居。

 って、あれ? また叶神社だ? 

 さすがに、同じ場所に戻ってしまったわけじゃない。調べてみるとこの神社、浦賀港を挟んで東西二つあるのが特長?みたい。渡し船で縁結びとか。何でも昔、浦賀村が東西に二つに分かれた際、神社が無い方の土地にも欲しいってことで、二つになったとのこと。

 ちょっと面白い発見をしつつ、とはいえ神社には寄らず先を進む。海の向こう側に白い建物が見えた。あれがかもめ団地っぽい。どうやら入り組んだ海沿いを歩いていたみたい。

 また山沿いに入って、トンネルを通る。今迄で一番長かったかも。車に乗っていても息はやばそう。

 トンネルを抜けると、また海が見えてきた。その先の海の向こうには工場地帯みたいなものが並んでいる。歩きやすい海沿いの道を進んでまっすぐ行くと、ペリー公園、フェリー乗り場の看板が見てきた。

 そっか。このあたりが久里浜か。神奈川の久里浜から千葉の金谷を繋ぐ東京湾フェリーがあるところだ。一度フェリーに乗ったことがあるんだけど、そのとき通った道がこの先の道なんだ。

 知っているところを歩くと、ちょっとうれしくなる不思議。

 やがて右側に、でっかなペリーの碑が立っている公園が見えてきた。ペリーさん上陸の記念碑だ。そのすぐ横に、小さな記念館もあるんだけど、そこは以前行ってきたので今日はスルー。

 時計を見ると十一時。早いけれどそろそろ食事を考えていると、先にでっかなホームセンターが見えてきた。トイレ休憩に入ったら、小さなフードコートもあったので、そこで食事を取った。普通すぎるシンプルなうどん。これくらいのボリュームがちょうどいいかも。


 ひと休憩して、再出発。

 ペリーさんのでっかな看板を見ながら進むと、すぐに久里浜港のフェリー乗り場が見えてきた。

 そういえば日本一周には、船を使わないといけない場所もあるよね?

 このまま西に向かうつもりだったけど、今フェリーに乗って千葉から東へ向かうという展開もありじゃないかなって。行き当たりばったりな感じだけど、そこがまた旅っぽくって、すごく魅力的。

 でも城ヶ島の宿の予約もしてしまったので断念。

 その代わり、ずっと西まで行って、山陰北陸北海道を回って三陸から千葉まで戻ってきたら、向こう側からこのフェリーに乗って、ここまで戻るというのも面白そうだ。果たしてそれがどれくらい先になるのかわからないけど、そういう目標があるのはいいことだ。

 というわけで。日本一周もそろそろ終わるという場面を思い浮かべながら、フェリー乗り場を後にした。


 きれいな通りをまっすぐ進む。看板を見たら、ここは「ペリー通り」というみたい。なんでもペリーつければいいってもんじゃない気がする。

 トンネル抜けると海岸線を通る歩道。気持ちいいけど、ちょっとまぶしい。ずうっと長い一直線の道だ。代わり映えしない道を歩いているのに、海を見ていると退屈しないのが不思議。

 海風を感じながら歩いてやがて街中に入っていって、T字路の分かれ道。地図的には左に行くのが正解だけど、右側の「尻こすり坂通り」が気になってしょうがない。

 調べてみると、この奇妙なネーミングは、かって荷車で下るとき坂があまりに急こう配のため、荷車の後部を地面に擦るようにしていたからとのこと。かなりの傾斜で、壁のような急こう配の坂のようだ。

 とはいえ。方向違うし登るのも疲れるので、そちらには行かず、左に曲がって進む。

 目的の城ヶ島まで、あと11キロ。あと三時間くらい? 当初の目的時間だとちょっと遅いペースだけど、時間的にはまだまだ余裕。

 国道を逸れ海沿いを進んでいくと、三浦海岸の海水浴場が見えた。当然今は人気のない浜辺を横目に進む。

 さっきまでの国道と違うせいか、やがて道幅が狭くなってきて、歩道もなくなってしまった。とはいえ自転車はともかく徒歩の人なんて自分以外にほとんどいない。なのでたまに大きな歩道があるとほっとする。

 しばらくすると、海が見えなくなって坂道になってきた。久しぶりの上り坂がちょっとつらい。前傾姿勢で坂を上りきると、今度は左右に畑がある道になっていた。ちょっと前まで海岸沿いを歩いていたのに。日本の地形って面白い。

 海が見えたと思ったら、トンネルを抜け、今度は畑に囲まれた山道。かと思ったらまた海が見えてきて。それを繰り返して山が迫った海岸沿いをくねくね進んでいく。

 目の前に大きな風車が見えてきた。風力発電だろうか。

 近くには標高35メールとの表示があった。どうりでたまに見える海が、眼下に見えるわけだ。

 

 そろそろ日が暮れ始めるころ、無事城ヶ島へと向かう橋が見えてきた。

 って料金所?

 橋の入り口には高速道路みたいな料金所が設置されていた。有料の橋みたいだ。

 えっと、徒歩の料金はどうなるんだろう。書かれていないけれど……

 と聞いてみたら、徒歩は無料みたい。

 自分のように徒歩で日本一周してなくても、普通に徒歩で渡る人もいるみたいなので、気分的にもほっとした。

 意外と長い大橋。全長は575メートル。つなぐ陸や島よりも海から高い位置に設置されているので、景色がすごくいい。これなら有料も悪くないけど、自動車じゃすぐについちゃうだろうな。

 ゆっくり十分くらい歩いて、目的地の城ヶ島に上陸した。

 と言っても、目的地の宿は西端にあり、もう少し先。

 そこまで向かう間に、観光地っぽいお土産屋とともに食事処もたくさんあった。まぐろが名物みたいだし、今日の夕食はマグロにしようかななんて考えつつ歩いて、意外にも早く目的の宿に到着した。

 とういわけで今日はここまで。お疲れ様でした。



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