3日目  横須賀ー観音崎



 三日目の朝を迎えた。

 朝の食事はホテルのバイキング。出発してから一番豪勢な食事かも。

 一日ぐらいはゆっくりしようかなと、チェックアウトまでギリギリのんびりしつつ、ふと思って、充電中の携帯でどれくらい歩いてきたか検索をかけてみた。

 横浜-横須賀中央間は…… 京急本線快特で28分! 30分未満だ。

 そんな距離を自分は二日かけて歩いてきたと。


 ちょっと換算してみた。48時間と30分ということは……今の自分は電車の、96倍の薄さで生きているのだ! あれ? 逆に濃いのかな?

 まぁいいや。さてそろそろチェックアウトの時間。

 そこでちょっと早いけどお昼を考える。

 昨日の夜はカレーだったので、やっぱりお昼は横須賀バーガーだ。おお、横須賀を堪能している!

 駅前の大型店で少し時間をつぶして、ネットで調べた横須賀バーガーの店へ。って、もう並んでいるし? それでもそれほど待つこともなく無事ハンバーガーにありつけた。さすがアメリカっぽさが良い。マックとは明らかに違うすべてがビックサイズを堪能しつつふと思う。

 今日はのんびりするつもりだったし、先を急ぐ必要もないんだけど、せっかくなので少し歩いて先に進もうかなと。なんか止まったら死んじゃう生物になったみたいだと、自分を笑ってしまう。

 まぁ無理しない程度に進んでみよう。

 というわけで検索。

 ちらほらと昨日から標識にあった観音崎に泊まれそうなホテルがあるので、今日はそこまで行くことにした。徒歩検索で2時間ほど。

 よし。それじゃ、軽く歩いてみよう。


 というわけで出発。

 ちなみにさっき駅前の大型店でウォーキングシューズを買って履き替えたんだけど、それが良い感じ。靴擦れしている感じもないし足への負担も段違いで減っている。これまでは何も考えず、いつもの靴で歩いていたけれど、やっぱり装備って大事だ。ちょっとしたRPGな気分である。

 横須賀中央駅から伸びる大きな通りに入って、そこから東、海の方へ向かう。昨日お世話になった国道十六号に出るけれどせっかくなのでそのまま素通り。もう少し先の海側に並行して伸びている、横須賀海岸通りまで行って、そこから観音崎を目指してみた。こちらの道も大きくて、歩道もしっかり整備されて歩きやすい。

 しばらく歩いていると、左手に海が見えてきた。おお、海だ。

 なんだろう。街中を歩くのと違って、こうやって自然が見えると、日本を歩いている感じがする。しかもこの道、広くて一直線で、やしの木も並んでいて、まるで南国を歩いているみたい。

 つい昨日まで狭い山の中のトンネルをくぐっていたのが嘘のようだ。

 海側に面したうみかぜ公園で軽く休憩を取って再出発。心に余裕があるからか、物流倉庫や大きなお店や建物が並んでいるのを見て歩くだけでも、新鮮に感じられる。

 しばらくして国道16号と合流しても、海を横目に歩く。だんだん建物はなくなってきたけれど、田舎になったというわけでなく、広々とした開放的な感じ。たまに海沿いの堤防みたいなところを歩けるので、国道を右目に見ながらそちらの道も歩いてみたりする。圧倒的な開放感だ。空も広いし海も広い。

 海風を感じながらゆったり歩いていると、「うみかぜ画廊」という文字が。気になって国道沿いに戻ってみると、さっきの道と国道の間の花壇の壁に、いろいろな絵が描いてあった。

 1、2、3……と十何個の絵が並んでいる。地元の高校生が作成したものなのかな。落書き防止の目的もあるようだけど、面白い試みだ。

 ゆったりと壁画を楽しみながら歩いているうちに、徐々に前方の山が近づいてくる。左には海が見えるけれど、右は山の斜面になって、今までの開放感が少なくなってきた。

 そして先に見えるのは、上り坂だ。今日は海岸線をゆったり歩くだけだと思っていたので、ちょっと気が重い。

 それでも坂を上ったら、左手に並んでいる家の屋根を上から見るような感じになって、その先に広がっている海の光景も含めてすごく見晴らしがよく、綺麗だった。けど、上り坂はつらい。

 そのうち道路は歩道がなくなってしまったので、徒歩の自分は下の道を通る。そもそもこんなところを歩く人なんて自分以外いないし。

 不安に思いつつも、住宅地を抜け再び国道に合流。

 景色は、おしゃれな海岸から、すっかり漁港みたいな感じに変わってきた。

 それでも標識には「観音崎1キロ」の文字。ついに到着だ。


 しばらくして、目的のホテルに到着。

 まだまだ時間に余裕があったので、向かいの美術館をのんびり回って、特に目的もなくふらふらしてから、チェックイン。

 いいホテルなんだけど、逆にお一人様で泊まるのがちょっとつらいかも。

 やっぱりビジネスホテルくらいがちょうどいいのかな、なんて思いつつも、部屋に入ったらそんな気持ちも吹っ飛んで、十分堪能してしまった。

 というわけで今日はここまで。お疲れ様でした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る