2日目 彼女の素顔

「ふぁ〜っ」思いっきり背伸びをする。

普通、この声は起きた時に言うものだが、俺は寝ていないので、教室で言うことになった。

「おい、昨日どうだったんだよ?」

「一睡もできなかったよ。」

言ってから気づいた。絶対誤解されるパターンだこれ。

「マジかよ〜」

ほら始まった。

「佐倉、昨日寝られなかったってよ。」

「ええっ?」

「きゃああっ」

そして聞こえる女子の声。

男ならわかると思うが、男子が男子のからかいをする時、女子に聞こえる声で言うのはマジでやめてほしい。

初めて青春漫画の主人公の親友キャラのウザさがわかった気がする。


一つ気づいた事がある。

俺と天野さんは、普段は絶対話さない。

いや、話せないと言った方が正しい。

俺が女子と話す事自体が無理なのである。

ああ、自分で言ってて情けない…

そして今日の午前の授業を受けた後、昼食を終え、昼休みになると、

「佐倉くん。昨日は助けてくれてありがとう。」

「えっ?お、おう。」

佐倉翼 男友達がいる前での、(記憶の中では)人生初の女子との会話だった。

「お、お前、何やったんだよ?」

「な、何にもしてねーよ!」

思い当たる節が多過ぎる。

ほら、あんな事やこんな事…

ダメだ…何言っても死ぬ気がする…

「今日の授業はここまでだ。気をつけて帰れよ。」

いや〜、1日が長い…

「じゃあな〜」

「バイバ〜イ」

みんなが帰っていく…

俺だって帰りたいのにさ。

天野さんは教科書で勉強している。

マジで偉すぎるだろこの人…

真剣な横顔に見惚れていることに俺は気づいていた。

だけど、気づかないふりをしていた。


今日も天野さんとの夜が始まる。あっ、よ、夜って変な意味じゃないぞ。

誤解しないでよな。頼むぞ、マジで。

テスト前だということで勉強を教えてもらった。

ものすごくわかりやすかった。学校の先生とは比べ物にならない。

教師にでもなるつもりなんだろうか?

いつもより集中していたのか、あっという間に風呂の時間になった。

当然、先に入るのは天野さんで、その次は俺のはずだった。


そう、彼女が風呂を出た時、事件(事件っていうほどのことじゃないけど、俺にとっては大事件)は起こったのだ。

「佐倉くん。いいよ。」

「ありがとう。って、ええっ?」

彼女が眼鏡を外していた。元から大きいと思っていた目はさらに大きく見えきめ細かな肌がよく見える。ものすごく綺麗だ。

「あの、眼鏡どうしたの?」

「あっ、置いてきちゃった。どうしよう。」

「俺がとってくるよ。」

「いいの?ごめん、ありがとう。」

「でも」

「何?」

「眼鏡ない方が似合ってると思うよ。」

しばらくしてから気付いた。俺は何を言っているんだ。

「そ、そうかな」

「ああ、俺には眼鏡属性ないし。」

な、何を言っているんだ俺は、ここは三次元だぞ。

俺の口が止まらない。たすけてくれ。

「眼鏡属性?」

ああ、言ってしまった…

「なんでもない、気にしないで。」

ほんと、お願い!ね?

「う、うん。わかった。」

物分かりのいいことで・・・助かります。

わかっちゃいたけどやっぱり天野さんは可愛くていい人だ。

改めて実感した。

この日は、風呂に入り、そのまま寝た。

 と、ここまでは俺、佐倉翼の性格と天野さんの可愛さが伝わればいいと思う。(伝わってなかったらすいません)

俺は、天野さんを清純な人だと思い込んでいた。

そのイメージが壊れたのは、次の日のことだった。

多分、絶対忘れない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰宅部部活停止中 工藤銀河 @heart-of-time

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ