1日目後半 彼女と俺の初めての夜

「そうだ佐倉。」

「何ですか?」

「帰宅部の顧問は俺だから俺も学校に泊まる。天野と変なことしようとしても無駄だぞ。」

「するかっ!」

この人頭の中思春期だろ!

もうすぐ40だろ?歳を考えろってんだ…

「天野も気をつけろよ。」

おいコラァ!なんて事いうんだこの先生は!

「あ、はい。でも大丈夫だと思いますよ。佐倉くん優しそうだし…」

「天野さん。」

良い人、本当に良い人だな。

「よし天野、風呂入れ。安心しろ。覗いたりはしない。多分な…」

チラリ 北野がこっちを見た。

「こっちを見ながら言うな!」

「え、えっと。」

「冗談だよ。」

ったく。冗談でもやめろってんだ…


「あ。あがったよ、佐倉くん。」

「あ、ありがと。」

寝巻き可愛いな。い、いかん、何を考えている。落ち着け俺。

俺もすぐに風呂に入り、二人で寝る場所だという保健室に向かった。

天野さんは待っててくれた。

マジでどんだけ優しいんだこの人は…

風呂場は学校から少し離れた別館にあった。

そこから保健室までは少し距離がある。

薄暗い廊下を、俺たちは二人で歩いた。

するといきなり、バンッ!

大きな音が響いて電気が消えた。

「きゃあああああ」

「おわぁあああ」

一つだけ言っておきたい。俺は彼女の声に驚いたんだ。だって女の子のホント悲鳴なんて初めて聞いたんだもの。なぁ、俺よりちょっと大人な人ならわかるだろ?わかってくれよ?


そんなこんなで俺は、彼女の女の子としての一面を知った。

多分クラスの男子で知っているのは俺だけだろう。

なぜなら彼女は学校ではいつだって完璧なキャラなんだもの。

な、なんか…ちょっと嬉しい。

そしてようやく保健室に到着。

なんかいつもよりも長かった気がする…

でも、とてもいい時間だった。


天野さんはベットに入ると

「佐倉くんなにかあったらよろしくね?」

そう言ってきた。

「う、うん。お、俺でいいなら。」

あ、よろしくなんだ。そういう心配はしないんだこの人…

まあ、そういうことは出来ないんですけどね…

女の子と話すなんて俺にとっちゃ廃課金に無課金で勝つぐらい難しいんだから。

ああ、ダメだ!もう寝よう。

シャッとカーテンを閉めて俺は電気を消した。

耳を澄ますと小さな寝息が聞こえてきた。

だがそれも、すぐに俺の心臓の音でかき消された。

心臓の音が聞こえるほどドキドキするなんていつぶりだろうか?

当然この夜、二人で過ごした初めての夜は、一睡もできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る