ちょっと変わった短編恋愛ものです。いきなり主人公が失恋してしまうのですが、その振られ方がなかなかに酷い（笑）。その後の陸の言動も結構酷く、だからこそ主人公の不憫さが際立ちます。

心情描写は細やかで、大げさな起伏がある物語ではないのですが、桜乃の心の変化の模様を楽しめます。普通の恋愛ものと違い、冒頭が一番気持ちが高まっていて、それがだんだん醒めていくという、ちょっと他にはない恋愛ものです。

その「恋する気持ちが醒めていく」のを描くのが目的であれば、なるほど陸の酷い描きようも、目的に適ったものなのかも知れないと感じました。それにしても、もうちょっとなんとかならないものかとは思いましたが（笑）。

変化球ではあるのですが、こういう恋愛の描き方もあるんだなと感心しました。