第12話ひとりで操作方法を確認する俺

「魔法のショートカットは設定できるって言ってたな。どれどれ……」


 魔法使いのグラフィックのあたりに指マークがある。十字キーの左右のボタンを押すと、その指マークが魔法使いと輪郭の女剣士を行ったり来たりする。俺は少しの間、魔法使いと輪郭の女剣士で指マークを行ったり来たりさせた後、輪郭の女剣士を選択する。


 すると画面がまた切り替わる。左半分に輪郭の女剣士のグラフィックがあるが、右半分は何も表示されていない。十字キーを操作すると、画面の右半分で四角形のカーソルが行ったり来たりしている。Aボタンを押しても何も起こらない。あの女子高校生が『序盤だからほとんど何もできない』と言っていたが、『マジカルアタッカー』のストーリーが進むと何かできるようになるのだろうか。


 で、一回キャンセルして魔法使いと輪郭の女剣士が表示されているメニュー画面の戻って今度は魔法使いを選択する。


 すると、さっきと似たような画面になった。こんどは左半分が魔法使いのグラフィックで、右半分に『まほう』という選択肢だけ表示されている。他にも選択肢が増えていきそうだが、ゲームを始めたばかりなのだからまだ一つだけなのかもしれない。


 その『まほう』という選択肢にカーソルを合わせAボタンを押すと、また画面が切り替わる。今度は『ヒール』という選択肢だけ画面の左上にぽつんと表示されている。これまた『マジカルアタッカー』のゲームを進めていくと使える魔法が増えていきそうである。


 それでもって、画面の右端に『Aボタン』、『Bボタン』、『Xボタン』、『Yボタン』、『Lボタン』、『Rボタン』と表示されており、『Aボタン』にだけ『ヒール(女剣士)』と設定されている。


「なるほど、これがあの女子高校生が言っていたショートカットボタンか。

だったら、魔法使いにもショートカットで回復魔法をかけられるように設定しておくか」


 俺はそう思って、『ヒール』をAボタンで選択すると、『単体の対象を回復させる(効果小) 消費MP 3』というメッセージが表示され、その下に『ターゲット 女剣士』とも表示される。十字キーの下ボタンを押すと女剣士の部分が魔法使いに変わった。下ボタンをもう一回押すと、今度は魔法使いの部分がスライムになった。


「ああ、敵にも回復魔法をかけられるようになっているのか。これは後になってこのシステムを利用した戦い方ができるようになるんだな。最初のスライムとの戦闘ではそんなことは必要ないだろうけど」


 そんなことを考えながら下ボタンを押していくと、そのたびに女剣士と魔法使いとスライムとが入れ替わって表示される。


 そして、『ターゲット 魔法使い』と表示させた状態でAボタンを押すと、『つかう ショートカット』というウインドウが新しく画面にあらわれて、『つかう』の選択肢にカーソルが合わさっている。おそらく、ここで『つかう』を選択すると魔法使いに『ヒール』が発動するのだろう。で、戦闘中にいちいちそんなことはしていられないと言うことで、ショートカット機能が備えられていると言うことなのだろう。


 そういうことで、ウインドウの中の『ショートカット』の選択肢にカーソルを合わせてAボタンを押すと、『ショートカット機能を設定したいボタンを押してください』といったメッセージが示される。俺は少し考えてBボタンを押すと、『単体の対象を回復させる(効果小)』や『ターゲット 魔法使い』のメッセージと『つかう ショートカット』のウインドウが消えて、その代わりに画面右端の『Bボタン』と表示されている部分に『ヒール(魔法使い)』と設定されている。


 多分これで戦闘中にBボタンを押すと、魔法使いに『ヒール』がかけられるのだろう。そう思いながら俺は再び『ヒール』をAボタンで選択し、ターゲットを女剣士としてまたAボタンを押し、『つかう ショートカット』のウインドウのショートカットを選択してAボタンを押す。すると、『ショートカット機能を設定したいボタンを押してください』といったメッセージがふたたび表示されたので、今度はXボタンを押す。そうしたら、メッセージやウインドウが消えて、画面右端の『Xボタン』と表示されている部分に『ヒール(女剣士)』と設定されている。


 やっぱりそうだった。これでショートカットの設定の仕方はマスターできたようだ。そして一回Bボタンを押してキャンセルすると魔法使いと輪郭の女剣士が表示されているメニュー画面に戻る。もう一回Bボタンを押すとスライムとの戦闘画面に戻る。


 戦闘画面に戻ってBボタンを押すと、魔法使いが光に包まれる。ショートカットで『ヒール』の魔法が発動したようだ。と言ってもダメージを受けていたわけではないので何か効果があったわけではないが。そして、もう一度Bボタンを押してみたが何も起こらない。あの女子高校生が言っていた通り、魔法を使った後の待ち時間みたいなものがあるらしい。


 俺は戦闘画面を見渡すと、下のほうに魔法使いと女剣士のヒットポイントとマジックポイントが表示されている。女剣士の表示が画面左の下のほうに、魔法使いの表示が画面右の下のほうにあり、それぞれに現在のヒットポイントとマジックポイントと最大ヒットポイントとマジックポイントが表示されている。こんな感じだ。


  女剣士  28/ 28    魔法使い  20/ 20

        5/  5          15/ 18


 しっかり『ヒール』を消費したぶんが減っている。上がヒットポイントで舌がマジックポイントみたいだ。


 だいたい操作方法はわかった。とりあえずはこれくらいで十分だろう。となると、いったん休憩して本腰を入れて練習を始めるとするか。そう考えた俺は何か食べ物でも買ってこようと思い、机の上の何枚かの一万円札に目をやる。少しのあいだ俺は考え込むとその数枚の一万円札に重しを乗せ、自分の財布を手に取って部屋の外に出るのだった。

 

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