第8話女子高校生に特訓方法を説明される俺
「説明してくれるかな」
そう女子高校生に要求する俺である。すると、女子高校生はケラケラ笑いながら俺に説明しだすのだった。
「だから、特訓ですってば。『マジカルアタッカー』の操作の。うまくいきませんでしたねえ、おじさん。まあ、慣れないうちはこんなものですよ」
だが、そう説明されても、俺にはさっぱりわけがわからない。で、俺は女子高校生にいろいろ聞こうと思ったのだ。しかし、女子高校生はそんな俺の気持ちを察したのか、こんなことを言ってくる。
「あたしがやって見せたほうが早いですね」
そう言って俺のコントローラーを奪い取ると、女子高校生はスタートボタンを押してリトライし始めるのだった。
三度目のスライムとの戦闘画面だ。女子高校生はおもむろにメニュー画面を開いて何やら操作をしながら、俺に説明し始めるのだった。
「いいですか、おじさん。スタートボタンでメニュー画面が開きます。まだ序盤もいいところですから、あまりできることはほとんどありませんけど、とりあえず魔法のショートカットを設定できます。このスペシャルファミコンのコントローラーには、十字ボタンとスタートボタンとセレクトボタンの他に、右にA、B、X、Y、の四つのボタン、そして左サイドにL、右サイドにRの合わせて二つのボタンがついています」
コントローラーの形状の説明なんて俺には必要ないが、女子高校生がそのコントローラーをかちゃかちゃやりながら説明してくれるのに横やりを入れるのもあれなので、俺は黙って聞いていることにする。
「で、その右側の四つのボタンと、両サイドのLとRの二つのボタン、計六つのボタンにひとつずつ魔法のショートカットが設定できます。と言っても、始めたばかりのこの時点では初級の単体用回復魔法がひとつしかありませんが。とりあえずそれを設定したボタンを押せば発動できるようにしておきますね。対象は女剣士っぽい輪郭のキャラクターにします。効果が単体の場合は、対象も設定しておかないとだめですからね、おじさん。これをしないと、いちいちメニュー画面を開かないとその魔法を使えないんですよ。ここまでいいですか、おじさん」
そんなの多くのボタンに魔法のショートカットを割り振ったら、魔法以外が何もできなくなるじゃないか、と俺は思った。しかし、それを言うのはこの女子高校生の説明が終わってからでもいいだろう。そんな俺の内心を見透かしたように、女子高校生が俺の気持ちを推測してくる。
「おじさん。今、『そんなに多くのボタンに魔法のショートカットを割り振ったら、魔法以外が何もできなくなるじゃないか』と思いましたね。そうに決まっています。でも、それを黙っていたことはほめてあげます。話をとりあえず最後まで聞くことはいいことです」
俺は心境をズバリ女子高校生に言い当てられた。こうなっては、この女子高校生の話を最後まで黙って聞くしかないだろう。
「魔法のショートカットにこんなにたくさんのボタンを割り振ることができるのには、ちゃんとした理由があります。それは、実際のプレイを見たほうがわかりやすいですね」
そう言うと、女子高校生はメニュー画面を閉じてスライムとの戦闘に突入する。コントローラーで操作するということは、男の魔法使いを操作するのだろうか。実際、テレビの画面に女剣士のグラフィックはなく、女剣士と同じ輪郭だけを黒い線で表現したキャラクターが動き回っているだけだ。
で、その女子高校生が操作しているであろう魔法使いだが、俺の下手くそな操作でスライムの攻撃を食らいまくっていた一回目と二回目とはまるで違う動きだ。スライムの攻撃を華麗に回避している。そうやって魔法使いがスライムの攻撃を回避しているあいだにも、黒線輪郭のキャラクターがスライムに攻撃しながら、自分もダメージを受けている。
すると、その黒線輪郭のキャラクターが光に包まれたかと思うと、画面の下の部分に表示されている黒線輪郭のキャラクターのヒットポイントが回復しているのがわかる。どうやら、ショートカットで魔法を発動させたようだ。
「こんな感じで、スライムの攻撃を避けながら女剣士っぽい輪郭のキャラクターを回復するのが、この戦闘での魔法使い、つまりおじさんの役目ですね。ああ、あたしはスライムの攻撃に魔法使いを当てちゃうようなミスはしてないからいいですけど、魔法使いにスライムの攻撃が当たってヒットポイントが減っちゃったら、ちゃんと魔法使いのヒットポイントも回復してあげるんですよ、おじさん」
そう俺に、この『マジカルアタッカー』の操作方法について説明しながらも、女子高校生は器用にスライムの攻撃を避けながら、黒線輪郭キャラクターの減ったヒットポイントを回復していく。実に見事なコントローラーさばきだ。ほれぼれしてしまう。
「ちなみに、魔法は連発できませんよ。ショートカットボタンを押すなり、メニュー画面で選択するなりしたらすぐに発動するようになっていますが、発動したらその魔法に応じた魔法が使えない待ち時間があるシステムになっています。魔法を使おうとしても使えなかったら、その待ち時間中だと思ってください。それとマジックポイントもありますからね。使いすぎて魔法ごとの必要マジックポイントに足りなくなったらその魔法は使えませんよ」
そう女子高校生が説明してるうちに、スライムが倒されていた。お見事。
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