13話 連絡先交換

どうやら宮本は部屋番号がわからず入り口であたふたしていたクリスタに会って、怪しさを感じながらもマンションの管理人を呼び出し、クリスタを親戚と紹介して部屋へと辿り着いたということだった。


無論、対応は宮本がやったわけで、何より友也の名前が出てきたことで、そんなまさかと思いながらも友也とクリスタの大体の関係を聞き出していたのだ。




「それにしても宮本が同じマンションに住んでたなんて知らなかったよ」




「わたしもですよぉ、ここはオートロックもあるし、姉と一緒なので安心なんですよねぇ」




さっきひと段落?したことでクリスタは席を離れてキッチンで料理をしている。昨日は俺が作ったから今日は私が、ということらしい。

せっかくだから、と宮本を食事に誘ったのは意外にもクリスタだった。




「宮本はお姉さんがいるのか。姉妹で仲が良いのはいいことだな。」




「あれぇ?池崎先輩はまだ姉と面識なかったですかぁ?」




面識?と言うことは同じ会社なのだろうが、なにぶん人数の多い会社だ。宮本といっても沢山いるだろう。ん〜っと考えていると、




「......総務部の宮本ミヤモト 礼羽ライハっていうんですけど」




......え?宮本 礼羽?ま、まさか




「もしかして、あの癖のある社長を躾けたと云われている総務部の鬼!宮本ミヤモト礼羽ライハ?!」




勿論、知っている。俺も何度書類の再提出したことか。3度目の再提出時には直接出向いてゴミを見るような目で書き方を指示するということで、あの川口も総務部に提出する書類には神経を割いている。


その性格は潔癖症で神経質。相手の役職が上だろうが臆さず物を言う性格は敵も多いが同時に彼女の仕事スタイルに憧れる社員も多いらしい。あと一部の男性社員にも人気だ。無論、ドMである。


もし、もしもだ。今の状況があの宮本 礼羽に知られたら......

なんかされそう!なんかはわからないがなんかだ!!




「そうですよぉ、でも、鬼の〜とかいうとお姉ちゃん無茶苦茶キレるんで気を付けたほうがいいですよぉ?」




「あ、あぁそうだね。失礼だものね。承知したよ。...それで相談なんだけれども出来ればこのことは誰にも言わないでもらえると助かるんだが」




宮本の言葉に肯定したあと、相談を持ちかけると「うーん、どうしよっかなぁ〜」と歯切れが悪い。

なんなの?俺の周りにはSしかいないの?

クリスタ然り、目の前の宮本然り。




「やましいことがあるわけじゃないが、世間体はあまり良くないだろ?俺はまだいいけど...クリスタに変な噂とか流れたら傷つけることになるし」




これは本音でもあるが自己保身でもある。チキン友也発動である。




「なるほどですねぇ」




そう呟くと少し考えるそぶりをした後、僅かに頬を赤らめながら、




「じゃあ!れ、連絡先交換してくださいっ」




そんなことを照れながら言うのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る