12話 普通にショック

–––なぜ、こんなことになってしまったのか。


思えば誰かに怒られることなど新入社員で入社したときに色々失敗したとき以来だ。


そもそも、悪いことはしていないのでは?昨日の対応は割と紳士的であったと思うし、下心なんてなかった...なかったはずであると友也は心の中で自己弁護する。


もっともそれを口にしたところで目の前でむっつりした表情を浮かべている後輩には届かないのであろうと諦める。


なぜこんなことになったのか、それはほんの数分前に遡る。







ぐるぐるとリビングを回っていたがそれにも疲れて、淹れたコーヒーに何度か口をつけて、最後の一口を飲み干したそのときだった。



–––––ピンポーン

インターホンの音。




「良かった。帰ってきた!」




このとき、インターホンモニターをちゃんと見ておけばとつくづく後悔することになるのだが、そのときの俺には知る由もなかったのだ。



––––––ガチャ




「良かった、クリ...スタ...?」




「え?池崎...せんぱい?」




ドアを開けた先、見知った後輩の宮本とちょっと距離をあけてクリスタ。


友也の中ではまさかの登場人物を追加して、話しは冒頭へと遡る。







「池崎先輩、わたしは普通にショックですぅ!まさか...まさかロリコンだったなんて聞いてないですぅ!不潔!変態!強姦魔ぁあああ!!」




「すげぇひどい言われようだ?!誤解、誤解だから落ち着け宮本!」



テーブルには友也とクリスタが隣り合って座り、友也の正面に宮本が座っているという状況だ。


––––––宮本ミヤモト 茉由花マユカ

株式会社next。友也が働いてる会社に今年入社してきた大学新卒で経理へ配属された子...だったはずだ。


部署も違うし関わりもそんなにないのだが、宮本はちょくちょく差し入れをくれるものだから覚えが良かったのだが...




「会社史上最速で係長まで出世して、皆の信頼も厚くて、誠実な池崎先輩が...まさか未成年の女の子と同棲だなんて!」




「ど、どどどど同棲とか!変な言い方をするんじゃない!これは、その、成り行きというか、決していやらしい話ではなくて!宮本が考えているようなことじゃない!」




「へー、私のことは成り行きでしかなかったんですね」




「お前はどっちの味方なの?!」




わたわたと友也を糾弾をする宮本とまるで感情を感じさせない平坦な喋りをするツーンとしているクリスタで若干カオスである。


その後、あーでもない、こーでもないと話して夕陽が沈む頃ようやく宮本は納得してくれたようだった。




「––––わかりましたぁ。さっき有希ちゃんから聞いていたこととも一致しますしぃ、それに池崎先輩がそんなに軽率な行動するタイプではないですしぃ」




若干ギャルっぽさが抜けない口調でそんなこと言われても...いつのまにか有希ちゃん呼びになってるし。

さっきまで全然信じてなかったじゃん!と言ってやりたい!!




「あ、あぁとりあえず信じてくれて良かったよ」




内心ほっとしているところだったが、横目でクリスタを見るとなぜか無表情のままツーンとしている。




「お、おーいどうかしたか?」




「別に」




っぅおおおおおい!あっちが納まったかと思えば今度はこっちかぁあああああい!!


そんな様子を観察するように見ていた宮本が不意に口を開く。




「あのぉ、もしかして二人は付き合ってるんですかぁ?」




「「付き合ってないっ!!!」」




突然、宮本からの爆弾投下に友也もクリスタも必死の形相で即否定する。息ピッタリである。




「あ、はい、すいません。」




勢いに飲まれて謝る宮本も内心で仲良しかよっ!と思っていたのだが、なんだかメンドくさそうと追及しようとはしなかった。

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