7話 久禮=クリスタ=有希

大学卒業後、勢いで借りた2LDKのマンション。広めの部屋を借りたのは、いずれ自分に彼女が出来て、同棲なんていうハッピー展開を期待していたが、ここまでそんなことは一切なかった。


つまり、彼女も出来たことがない為に異性を家に入れたこともない友也は緊張していた。




「ほら、タオル。とりあえず拭いとけ」




濡れているクリスタから目を逸らしてタオルを渡す。




「ありがとう、ございます」




途切れ途切れにそう言うと、俺の手からタオルを取って髪や顔、体を拭いていく。

濡れた服がピッタリはりついてクリスタの本来のスタイルの良さを浮き上がらせていた。

...にしても意外に胸あるんだな。



(って見るなっ!バカか俺は、ただの子供だっつーの...子供子供子供子供子供子供子供)




「じー......」




「な、なんだよ?」




ジト目でこっち見んなよ...




「やっぱり変態ですねぇ〜」




そう言って胸元を隠しながらニヤニヤするクリスタ。

気付かれていた。モロバレである。ぬおおぉっ...




「ふ、風呂!風呂沸かしたから入れ!」




「は〜い、ありがとうございますっ」




クリスタはそう言うと、スタスタと浴室のほうへ入っていった。




「悪いが着替えは俺のやつしかない。我慢してくれ。あと、濡れた服とかは乾燥機に入れとけよ。使い方わかるか?」




ドア越しに話しかけると「大丈夫ですっ」と返事。

それから30分くらいした頃にドライヤーの音が聞こえてくる。


友也はその間に手早くカルボナーラを作っていた。料理は苦手ではないが、得意でもない。一人暮らしの最低限といったところか。




「お風呂、ありがとうございました」




カルボナーラもいよいよ出来上がりというタイミングでクリスタは出てきたようだった。

明らかにオーバーサイズの黒のスウェットでだぼだぼだ。




「カルボナーラ作ったんだけど食べるか?俺が腹減ったから勝手に作ったんだが」




横目でチラッと見ると、随分不思議そうにしている。




「料理、作れたんですね。意外です...」




「まあ、一人暮らし長いから。これくらいなら出来る。味は...それなりだが。で、どうする?」




「いただきますっ実はお腹ペコペコだったんです」




クリスタが嬉しそうに笑ったのを確認すると、テーブルに二人分のカルボナーラを並べる。

そして、行儀よく手を合わせたあとにフォークとスプーンで食べる。




「......」




「......」




互いに無言のまま食べ進める。

話すべきことはある。ここは社会人としてしっかりしないと。




「あの、池崎さんはお風呂入らなくていいんですか?冷えますよ」




意外にも先に口を開いたのはクリスタのほうだった。




「あ、ああ。後でちゃんと入る。それより先にちゃんと話さないといけないと思ってな」




クリスタはそう言うと、どこか居心地が悪そうに伏し目がちにしている。

話したくはない、ということなのだろうと流石に察する部分ではあるがきちんとしておかないといけないことはきちんとしなければいけない。

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