『間違い電話』

やましん(テンパー)

『間違い電話』

 

《*これは、一部、事実にもとずく、創作である。》



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 『ちりりりり~~~~ん』


 『はい、やましんです。』


 『あら、え、しんやまさんじゃないの?』


 『はい、やましんですけど。』


 『あっら~~~~。すみません。間違えたみたい。ところで、あなたはお元気?』


 『え? ああ、まあ、ぼつぼつです。』


 『そうですかあ。いえねぇ、なんでも孫娘が熱出したとかっていうから、あ、うちの子供がしんやまだから、なんですけども、びっくりして・・・間違えたんですねぇ。おたくは、お子様は?』


 『いやあ、それがいなくって。』


 『まあ、じゃあ、おさびしくないですか?』


 『まあ、そうかもですが、でも、まあ、静かですし。これも、悪くないです。』


 『ふうん・・・そうなんだ。でも、今日はお天気が良かったでしょう。うちも、おじいちゃんが、いなくなって、・・・ここはひとりなあんですよ。寂しいです。』


 『ああ、じゃあ、それはもう、お寂しいですね。』


 『そうなんです。突然いなくなっちゃって・・・・・だから、電話でお話するのが楽しみなの。』


 『それは、もう。ぼくは、いいんですが。でも、お孫さん、お熱が出たなら、心配でしょう?』


 『そうなんです。そうなんですの。でも、まあ、大したことないとは、昼間に、言ってたんですよ。でも、そうは言われても、やはり、心配でしょう? やはり、声も聞きたいじゃあないですか。』


 『そうですねえ。電話は便利ですね。』


 『そうそう。おたく、庭木とか、今年やられませんでした? 今年は、害虫さんがおおくて。』


 『いやあ、ぼく、腕とか背中とか、いっぱい腫れ上がってます。草刈りしたとき、やられたみたいですよ。』


 『まあ、たいへん。そうなんですかあ。今年、この間の雨の後、あっちもこっちも害虫さんだらけみたい。あなたも、気を付けてくださいね。体が一番。悩みは二番。』


 『いやあ、おそれいります。』


 『それがね・・・・・・』



    ~~~~~~~~~~~~~~~~ ☎  ~~~~~~~~~~~~



  

 たぶん、間違い電話だったようでしたが・・・30分くらい、お話のお相手していただきました。


 悩み事も、少し聞いてもらいました。


 慰めていただきました。



 終わった後、カッターナイフは、そっと、引き出しに、しまいました。



   

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 『間違い電話』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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